353 真偽

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



3/6 15:30


音が響く



ビギギィイィィィィイイイン



ビビィイイィイイ キィィィン



耳を塞ぎたくなる金属系の高い音


トンネル内だ、尚更煩い歯にも響く様な爆音


そんな機械音が轟いた後に



ギャギャギャギャァン!



バリバリバリ ジャジャッ ガリガリグジャチャ



と嫌な音が続き


「ケッ!あんなチビガキの玩具にされてこいつ等も報われねぇなぁ」

どこぞの巫女の様な汚い言葉がトンネルに響く


いや、比較するにはあまりにも  彼女とは正反対な行動


片手に持つソレから勢いよく飛び散るのは真っ赤な鮮血、それと様々な、、、


「しょうがないっス、供養だと思って割り切って下さいな」


途轍(とてつ)も無く残酷な光景


まずは牛の首、それから蟷螂(かまきり)の付け根部分へと躊躇(ちゅうちょ)無く振り下ろし、切り離した

そういった職業では無い筈だ、さっきまでは踊っていた、つい先程まで、、


繋いでいた手が震える


分かってる そんな場合でも無い  すぐにでも此処から離れなくては


慣れなのか表情を変えず

一つ一つの個体を順番に解体し終わると一息吐き

次は念の為にという事なのか、異形の左胸辺りに押し当てながらゆっくりと最初の位置に戻った




相手はどうであれ

目の前で行われた作業に吐き気と恐怖で立ちすくみ、、いや、違う

行為そのものなんかよりも、明らかに『正気の沙汰では無い様に見える』少女の方に狂気を覚えた


「う  あ」

まともな言葉が出て来ないままに視線が重なった


勿論、三十路の気持ちなど考慮される筈も無く


「そんな顔しないで下さいよ~お兄さんっ」

得物を別方向へと一振りしながら無邪気に微笑んだ


その笑みに恐ろしいと思う気持ちが一層増し、自分の瞳孔が目一杯(めいっぱい)に開くのを感じる


「ど、え?  はぁ はぁ  なん、どういう  事?」

詰まる呼吸の中やっと口から出た台詞はたどたどしく

ギリギリに伝わりそうな発言なのだが


「ハハッ、なんて?訳分かんね~っつの 大の大人がビビッてんじゃねえよ」


「わっ、ちょっやめたげて、きっとあの子ら戻って来るんでこっちも時間無いんスから」


「けっ! わ~ったわ~った、おっさん しっかり喋れや?」


血塗れの手が肩に軽く触れ

それだけで情けないくらいビクンと跳ね、心臓が口から飛び出しそうだ


「大丈夫っスか? あ~お兄さんの事を殺せって言われて無いので安心して下さい」


「  へ?」


「今回のお仕事は視察なので、、あ、コレやっちゃったのは気にしないで欲しいっス」

間の抜けた声にニコっとしてからバラバラの残骸を指差し

「ちょっとイラっとしただけなんで」

分かり易く頬を膨らませる




訳が  分からない




「あ、え? あっち側の人間、なんだよね?」


「そうっスよ」


「鳥達の所に連行、する?」


「連れて来いとかも言われて無いんでセーフっスね、やったじゃないっスか」


頭の可笑しい猟奇的な肉屋

または

対話のキャッチボールがろくに出来なかったどこぞのドールとも違う

何を考えているのかが分からないタイプでは無く



意図が見えない



そして

「おい、馬の音すんぞ どうすんだ?やっちまうか?」


「いあいあ増員して来てるんでしょうし「無理しない様に~」って言われたじゃないっスか  ん~あ、そうだ!コレ自分の連絡先っス」


やはり『正気の沙汰では無い様に見える』タイプといった所


「ぇ、連絡先って  え?」


「とりま見られちゃったのはしょうがない、けど自分はお兄さんの事気に入ったんでヤバくない程度には教えたげるっス んでは」


「ケケケ、なんかあったら呼び出せるしな!」

そう言い残し

少女はトンネルの入口方面へと消えた




「ふはぁ  な、なんだったんだ」


今も震える膝、それとギャルの連絡先が書かれた紙切れを握り


「ジイイイイン」


仲間達の元へと無事帰還出来た



何があったのかは落ち着いたら話すと伝え暫くはバードマンの奇襲に備えた、、のだが次にトンネル内へ響いた声は



「待てと言っとろうがぁ! 小娘らぁぁ」



巫女と赤鬼が合流した








「ほらぁ、危うく挟み撃ち状態になるとこだったぁ」


「最悪ヤツを人質にでもすりゃ良かったじゃねえか」


「そんな事しちゃったら『視察』って言い張れないじゃないっスか、、てかあのお爺ちゃんに何かしたんスかね」


「知らねぇが  思ったよりも分かりやしぃなぁ?」



「あれが」











「レッドナイトか」


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