229 秘事

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



2/20 20:35


グラスを片手に芋を齧(かじ)る、だが表情は機嫌が悪そうに見えなくもない

騒がしい周りを特に気にしている訳では無く

目の前に置かれた一枚の手紙を何度も読み返し

一つ一つを結び付ける様に少女?は思考を巡らせる




グングニル、、あのクソ兵器を先に回収していたのはジジィと水面下で動いていた王都の幹部や隊長格

その筈だったがいつの間にかディーン王国に移った、と

少し懸念(けねん)していたが赤鬼が天狗と擦り合わせた情報からしても天狗はこの話にそれ程絡んでいない、知っていたとしたら二度手間で遺跡に向かった理由が無い、ジジィと絡んだのは依頼や別案件か?


だとすると確定か

初期の編成や人員配置の件だけで怪しいんだ、裏切者ってのは恐らくアイツ

違ってたとしても関りはあるだろう、後は明日リッツから証拠を聞ければ良いだけだ


だがあの町に魔族が派遣されていた段階で何故ジジイは疑わなかった?兵器を先に回収出来たから別物として考えたか、、人が良過ぎるのも大概だな



もう一つしっくりいかないのが浄化済みの吸血鬼だ

ジジィが残した通りに事が運ばれているのなら

もしそうだったとして、あの吸血鬼が使役していた目的はなんだ?恨みか何かか?、、いやそれだとあの台詞に繋がらない



【この首飾り   貴様 巫女か?  早々に切り刻まれたと思っていたが】


【まさかこんなに若いとはな  ふむ、惜しいがこれは良い土産が出来たぞ】


【ちっ、人間の分際で私に怪我をさせるなど   土産など 死体で十分だ!!】



私が来る事は分かっていた、がもう殺されたと思っていた

そして首飾りで判別、元々暗殺担当だったのなら姿を知らないのは不自然だ


情報共有がされてない


死体でも欲しいってのは、死亡確認か?  依頼?身体と引き換えに何かを得られたとしたなら別か?






その答えを






巫女を見守る従者だけが感づいていた






いや、確信していた






憧れの人物の為に生き






三枚目の手紙に目を通していた従者だけが知る事






(シエル様は知らなくても良い)



(少なくとも今は、、敵だけが分かれば良い)



記載されていたのは


『魔法を使える者について』


そして混血種では無い神父自身が何故治癒能力を使えていたのかと言う事




それと




シエルの出生について



・・・・・・



「一つ、良いですか?」

ふとバルが巫女に、いやシフでも良かったのだろう

少し言いにくそうに話を振る


「神父様はあの状況の巫女様を『蘇らせた』、、様に見えたのですが、自らの力を越えて使ったから出来た事?なのでしょうか」


「あ~確かにのぉ、あっしもちと不思議に思っとったよ」

赤鬼は以前シエルがももを助けた時の事を思い出す

「神父の魔力は多少の、微々たるものの筈じゃあなかったんか?」


「ぁ?あぁ、、コレ、らしい」

巫女は油の付いた指を舐めてから一枚の布を取り出す


「それは確か、神父様の」


「遺品だな」


「形見って言いましょう!?」


「お~?なんじゃろ、帯、かの?」


それは神父ゼブラが駆けつけて来た時に肩、首から掛けていた長めの帯『ストラ』である


「魔宝具ってもんらしい、書いてある」

巫女はまだ油の残る指を宝具で拭き、手紙をひらひらと振る


「扱い雑!」


「ひっでぇ」


「シエル様~」


男連中がリアクションを取っている中、赤鬼が手紙を受け取り音読を始める


「魔力を増幅させる力帯じゃって、なるほどのぉ、名前は、、あ~なんじゃ読みにくいのうイントネーション分からんが」











「メギン?ギョルズ?」










首を傾げる赤鬼を見ている側の族長と幼女も


揃って小首を傾げる


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る