230 映像
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
2/20 20:40
「メギン?ミョン?え、ギニョン? え、ねぇ、なんって?」
小首を傾げた幼女は分からないながらも何か刺さった物があったらしい
赤鬼の足元へと寄って来る、、のだが再び読み上げてくれる訳も無く
「ふむ、って~事は当たり前じゃが反動がデカいって事か」
「恐らくは、そういう事だと思います」
従者は自分のハンカチを代償とし巫女の手から宝具を取り上げる
「あ~、制御?とかは出来るもんなんかの~?ん~む、あっしも学んでおくべきじゃったのぉ」
赤鬼は巫女へと手紙を返し、保冷庫の方へと足を向ける
「名前何てどうでも良いが使いようによっちゃ今後強力な武器になる、ジジイが一人生き返せたんだ最悪、私なら」
「シエル様は」「だめぇ」「シエル」
「巫女ど」「駄目にきまっとろぉが」
一斉に声が響いた
それはそうだ
誰がその後・・・
いやそうじゃない
そういう事じゃない
「ラフィが使ったら津波でも起こしそうだしな~」
空気を変えるかの様にバルが少し大きな声で辺りを見回す
「ん?あ、あぁそういえば俺もやられた事あったっけな~」
「魔法使えるのは羨ましいけどね」
「姫様は剣だけ振ってりゃ良いんだよ」
空気を読んだエルフ達が遠慮無く自らの上司?を虚仮(こけ)にし始めた
「へ?ぅぇ?」
「ぅぇ?じゃないですよ、弓だって私達も結構やるもんなのにね」
「姫様が出過ぎるから俺ら影薄いんですよ?」
「いや違っ、私はそんなつもりなんて」
「確かに私らなんかじゃ足元にも及ばないですもんね?自慢ですか、そうですか、そうなんですね」
「承認欲求モンスターめ」
「ぁ、ぇぅ、承認? ふぇ」
エルフ達のおかげで巫女が無粋に深追いされる事は無かった
、、が代わりに族長の姫様はフルボッコである、涙目である
「可哀想に、意外にあの子らめっちゃ言うやん」
三十路は今も尚、怒涛の勢いでラフィをからかう双子を眺めつつ従者の持つ宝具を覗く
「ふふ、でも好かれてる上司って感じはしますね、、ジンさん試しに掛けてみます?」
「いやぁ~どうすんの口からグングニっちゃったら」
「はははは『グングニる』良いじゃないですか流行るかもですよ?」
「それ絶対引かれる宴会芸じゃん、、あ!そうだ、みんないるし今かな、ちょっとこの辺を~失礼」
ジンはポケットから薄い板を取り出すと中央くらいの位置へと寄り、空間を陣取る
「ちっさいけどとりあえず見える様に~ こんな感じか?」
テーブルの上に箱を置き簡易的に台座を作ると傾け、出来るだけ皆の見える角度に調整する
「電池、あ~えっと、ずっと見てられる訳じゃないから意見はまとめて最後にな」
・・・
急な上映会が始まった
最初のうちは何が何だか分からないソレの物珍しさにざわつきもあったがジンの立てる人差し指ですぐに治まった
一番に映し出されたのはくせ毛の少女の後ろ姿
その後を追う様な目線から始まり何かを話しているのが分かる
次に映ったのは全員が見知った蟷螂(かまきり)の形をした異形だ
それの隣の檻には『這うもの』と言う名の蜘蛛型までいる
撮影主の声は聞き取りやすく対峙している少女の声は聞き取りづらい
いや、コレは隠し撮りと言う様なものなのだろう
知った者からすればあえて聞きやすく喋っていると言うのも分かる
内容も内容な為イマイチ何を言っているのかは分からず
ある者はメモを殴り書きし、ある者はキーワードの様に呟く
グングニル
賢者の石
そして
「うお!出た」
スティルがつい声を出した
少女が手招きする先には化物が蠢(うごめ)いている
「まだ蛇もいるって事、か?」
「事、か?じゃないようっさい」
「まとめて最後って言われたろ、喋るな」
「お、おん、ごめんちゃい」
・・・・・・
キメラにキマイラ
キドナに、、アイラ?
その後も何度か引っ掛かりのある場面が映し出されてから一通りが見終わり
ジンが「一個目の映像」と呼ぶ物が終盤を迎える
するとタイミングを見計らったかの様に皆の手元へとドリンクのおかわりが運ばれて来た
「ぉ~しょし、今度は溢さなかったな」
三十路が幼女の後ろから覗き込む
「クックック、にんげ、、ジンよ!そう何度も同じミスをするとでも思っていたのか?」
おっかなびっくりトレイを持つ手は少し震えている
「それは心強いこったな、、んでさ、コイツ、この男なんだよ」
「俺を殺そうとした、ももを危ない目に合わせたヤツ」
ジンは最後に映った男を指差し
眉間に深い皺(しわ)を入れる
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