407 至言

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



思っていたよりずっと長い年月が掛かった

この国、この場所には随分と滞在したものだ


本当は別の手法から入るつもりだったのだけれど


賢人から信頼を得ると言う事、それ自体が難解であり、困難であり、、実に




魅力的な日々だった




3/8 3:45



【お待ちしておりました、、室長の意思により、貴方達をサポートします】



なんて


咄嗟に繕(つくろ)った私の目的は


「キーロ君を連れ出して欲しいと言う事だけです」

(キーロと言う青年を無事に『保護し通す』と言う事だけ)


「正直、貴方達が来た時はチャンスだと思いました」

(バイオリズムがこちらに傾くのをずっと待っていたんだ、お待ちしていたに変わりはない)


それはプロの様な集団的行動とやり口


「昼までに少なくとも7名がラボの外、時には店内を入れ替わり立ち代わりして情報を集めていましたよね  素人の見極め、判断であれば注意もいかない程に自然でした」

(私からすると容易な事でしたが)

「ですが未知な物への耐性が足りないでしょうから早々にサポートが必要だと考えました」


落ち着いた様子で語る女性を前に


「んー待って待って、えっと、未知な物ってのはアレか?さっき言ってたドローンだとか魔法の事だよね?」


理解しきれない者が付いて来れる様にとリーダーの男が明らかな一呼吸を置いた


「えぇ、接触する機会がもう少しあったのなら詳しく落とし込めたのでしょうけど」


「あぁいや、タイミング的なのはしょうがね~んだけど、ハルちゃんさ?一応はこっち側からも聞きたいんだけど良いかい?」


「どうぞ構いません」



「君自身の持ってる情報ってどこまでがホンモンなんだ?」



それくらいは想定内


動揺なんてしなかった


この人は優秀な連中をまとめてる人物だ

もう少しくらいは曝(さら)け出さないと信用するには足らないでしょう


とりあえずは


「成程、精度の確認は大事ですからね、では貴方達の素性に関して少しだけ語ってみせましょうか」

(こちら側にデメリットの無い事から並べましょうか)


周囲を囲む団体を流し見終えると


ターゲットを絞り


「調査班の中で特に注目すべきは二人、一人は裏路地でバー?を構えているシーマと言う男、若い見た目の  貴方です、手先が器用で重火器の手入れは全て貴方がこなしていますよね?無事に事が終わればお勧めのハンドクリームを差し上げましょうか」

メモを読む様に淡々と続ける

「もう一人は痩せ型の、本名かどうかは分かりませんが通称マルと呼ばれている貴方、、そもそもの性格上が秘密主義なので仲間内にも基本情報を漏らさずに活動出来ている数少ない仕事人、数字に強いが文体はあまり好きでは無い様子  とまぁ、これ以上お話すると今後に弊害を生むかもしれませんのでこれくらいにしましょうか」


これには途中得物を握った手を緩め


「名前バレとかあんまねぇんだけどな  っつか潜伏時に目も合って無ぇんだが」

「アンタ何者だ? 仕事中に噂すら聞いた事ねぇぞ」

当人らは出来るだけ柔らかい言葉を使いながらも睨みを利かせる


「一遍に応答しろと言われたら困りますが、そうですね、私はただの受付ですがソコソコ出来る女なので、、、、、いえ、何でもありませんん˝、と言う具合にですね!?彼等お二人がキーマンになっていて~続くぅ別隊の方々へと上手ひ感じにぃ 引き継いでいるのでしょう?そうでしょう!?」



・・・



ガヤつき出す場を抑える様に



パンパン!



と音が響いた


「後半については聞かなかった事にするけどお見事過ぎて怖いっつの!逆に半信半疑になっちまってんじゃん、全員にすまねぇごめんねだよ」

戯(おど)けてはいるものの


真っ直ぐ射る様な眼差しは警戒から来る心情に違いない


「コホン、どうでしょうか  信頼には達しましたか?」


「あぁ敵だった場合は既に俺らゲームセットなんだろうなぁってトコまでは分かったよ、、時間無いんだろ?生きて帰ったら種明かし宜しく願いたいね」


「はい、聞きたい事があるのなら全て答えますよ?」

(貴方達が聞ける事に関してだけですけどね)

「では続き、良いですか?」

眉間、目頭周りを軽く揉み


一度しっかりと整えた表情を


「俺もだけどコイツ等も今は真剣に聞いてるからさ、変な気ぃ使わせない様な説明を頼むわぁ」



「  ふぁい」



再びぶち壊された

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