349 禁酒

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



3/6 15:25


「それでね~今日作った野菜炒めも美味しい美味しいってお箸止まらなくてさ~」


「アナタからの情報だけだと不確かではあるのだけれど? その話が本当なのだとしたら私の知らない短期間の間に料理の腕が大分向上した事になるわね」


「えっへへへ、そうなの!凄くない? 実はあたし料理のセンスあるのかな~なんて」


「芋一つ剥くのに四苦八苦していたのが嘘みたいね」


「ふふ~んだ! 芋剥きと卵割りは慣れたもんだよ~、炒めてる時ちょっとだけ溢しちゃったけど」


「そう、良かったわね やっと材料を食せる形に出来ただけでもおめでた、、素晴らしいと思うわ?次はお鍋の振り方にも気を付けるのよ?」


「くっついちゃうんだよね~って!?今おめでたいって言った! おめでたいって言ったよねぇ?」


「あら、敢(あ)えて言い直した発言を自ら深掘りしてしまうのね?」


「うっ、いやこれはリアクション的な事であって~」

「その味を賞賛したのは具体的にどなたなのかしら? そこだけが気になるのだけれど」


「、、シエルとラフィだけど」


「つまりはそういう事、やはりおめでたいで間違っていなかった様ね」


饒舌(じょうぜつ)


いや、それを言ったら初対面から饒舌だ


切れ味の鋭さは多少そのままではあるのだが、しっかりとした聞き役

そちら側に回りながらも小粋なジョークまで混ぜ込んでくるもんだから、、随分と達者になったと改めて思う



ジンが出て行ってからは兎に角ずーっとメモ取り

正直何言ってるのか分かんないし意味不明な単語満載だったけどエバの制限時間を考慮して言われた通りに延々と書き記した


単純にダンクおじさんがパパっと直せる訳も無く、代替品を組み立てる所から始めるらしい



「よっと、ふぅ とりあえず言われた鉱石や部品、有り物だけだが持って来たから確認してくれるかい?エバちゃんよ」


大きめの木箱が床に置かれるよりも先にドールの瞳がカシャカシャと音を鳴らす


「透(とお)せるのでそのまま作業台に置いてもらっても構わないわ、、足りない素材は多々あれど片腕までを繋げるのには十分ね  欲を言えば首周りから背中にかけての強度がもう少し欲しいのだけれど工具自体が足りないもの」


「はははは!そうかい、参った ここらじゃちったぁ名の知れた工房なんだけどなぁ そっちの技術からすると自慢の道具達も子供の玩具みたいなもんなのかねぇ」


「ご、ごごごごごめんなさい! エバに悪気がある訳じゃなくて~」

流石のツインテールも今度は保護者側である


「あ~良いって良いって、貴重な体験させてもらえんだ!むしろ勉強代だと思うさ」


「そうね、悪気があって言った訳では無いのだけれど何処が癇(かん)に障(さわ)ったのかしら  ごめんなさいね?」

心中で褒めたと思ったらコレである

しかも、畳みかける様に

「それと勉強だと思うのなら修理時の情報は記録に残しておいてもらえるとより良いのだけれどそうもいかないでしょうから出来る限り記憶してもらえるかしら?その方が直った後に改めて説明する手間も減ると思うの」


やはりと言うかなんと言うか


「お、おう」


「偉そ~」


まだまだって事で少し安心もしたけど


「ふふ、本当に助かるわ」


!!?


わざとなのか!?とも取れるあざとさがある様な気もする!!

















「おじさん、あ、あの~ジンが借りて来てくれてたさぁ その~、キーロの読んでた本 とか 読んでも良いですか?」


数人分の洗い物を片付け終わり

鍜治場へと顔を覗かせる


「良いけど夕飯食って早々そんなの読んでたら寝ちまうだろうから寝室持ってくと良い、男臭いだろうが個室用意してあるからよ 自由に使いなさい」


「あ、ありがとうございます おじさんも無理しないでね?明日エバが目ぇ覚ましたのに眠い~とか駄目だからね」


「はっはっはっ違いねぇ! 今日の分だけでも細かく記載出来たら俺も寝るから火の始末だけ気を付けてな」


「は~い おやすみ~、、じゃ~なく、おやすみなさい!」


「ふっ、あぁ ゆっくりおやすみ」






「おう!ダンクの旦那ぁ、やたら機嫌良いじゃねえか 良い事でもあったのかい?」


「まぁな  ん~だがすまねぇ今日からはしばらく禁酒だ」

見知った来客に手を止め肩を鳴らす


「マジかよ! カー、まぁ喜ばしい事なんだろうから無理にとは言わねぇが、、ってそもそも今日は行けね~んだよ、城方面大変だったらしくてなぁ」


「今日は俺も大変だったんだがな  何かあったのかい?」


「騎士様達が大量にあちらこちら居てよ?魔物が出たっぽいんだよ」


「魔物?王都内にかい?」


「そうそう、だから戸締りして外出しない方が良いって教えに来たんだよ ダンクさん缶詰状態多いからよぉ」


「悪いね、気ぃ使わせてばかりだ」


「良いって良いって、アンタんトコには世話になった職人ばかりなんだ 困った時にこそ義理人情使ってやってくれよ  しっかし何処から入って来ちまったのかねぇ、死者も出たんだとか」


「、、気の毒に」


「あっ、あぁすまねぇ だが知らせといた方が良いと思ってな、明日には号外あるだろうが一切何も無く無事だったのはこの辺」




「西区だけらしいんだよ」


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