348 旗手

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



3/6 15:25


そう何十分もおちてないし それこそ


泣いてなんか無い


「急がないと  ね?」


勝手に、面倒見の良い魔女がおっさん相手に口走っただけ

流れ出てるとしたら汗か謎汁の残りだ


「ジン! おんぶ! おんぶするのよ」


もし本物のロリコンならそれは望まないと思うのだが、ロリコン万歳だこの野郎

三十路のおっさんがこんな事で



泣いてなんかいられるか!!



一度だけヌタヌタした袖(そで)部分で目元を拭い

引かれた手をギュっと握り返した


「ロゼ!チエさんを、、んん˝ぅ  大事に、ちゃんと抱えてやって」

ガンガン、ビリビリとする頭やら腕、、様々な箇所の痛みを

「頼むね」

噛み潰す


「ジン!?」


「え、いや、え? ジン君?」


「あ˝ぁ~ぜんっぜん   大丈夫なんで」


そんな訳無い


正直吐きそうだ



けど



そんなん





しらねええええよ





何が出来るでも無いこの状態

いや、健康体であっても変わりは無いのだが


止血されかけていた部分、肩から二の腕付近に垂れた布を噛み


左胸を強く叩く


「全力前進!」


勢いよく言った筈だがフガフガと「ずぇぃんりょくじぇぇん」とかになってたと思う

でもそんなのも  関係無い


「ぅぉらあぁぁぁ」


一番に走った


残り二十分そこらを全力で走るだけ

一昔前のデパートとかゲーセンにあった様なヤツと一緒だろ?

後ろからの何かを懸念して 避ける そんだけだ

大丈夫、きっとピンチになったらロゼが






ってならない様に






「っぷぁ ヌォ、ロゼェ」



幼女が加速してから



「走れぇええ!」


叫び



一人









トンネルの元へと反転した









声量には少しだけ自信があったし


なんでかちゃんとロゼも汲んでくれるかなぁと思った


だから、まぁ  急いでほしいんだけど


「はぁ はぁ」


蟷螂も牛もロゼがやってくれたのか?

ってかこいつ等、目の前にワープして来たよな  多分、以前の蟷螂祭りと同じ現象か?

じゃあなんで翼人らはそれを使わないんだ? それに、巫女の暗殺だって直接出来たんじゃないのか?


呑んだ薬のせいなのか未だに頭だけがバッチリ回る


(鳥頭達は俺『狙い』の筈  折り返すのが確認されてたらこっちに来るだろ?)

って思ったからこう動いたのに



・・じゃあなんで   牛男は俺を『殺そう』とした?



目を凝らし、念の為ヨタヨタと端を進む


ゲームみたいに蒸発したりあの時みたいに灰となってもいない、、って事はやっぱりアレは死神がやったんだろう

多分今回は幼い吸血鬼が引っぱたいただけ

生きてるかも知れないから尚更


確認する勇気も無い



(くっそ、やっぱ怖さも出ると思考が止まる  でも何となく、なんとな~くだけ予想着いた、、ぞ!?)



決して忘れてた!  って訳では無い



魔法でトンネルを作った際に別方向へ逃がした筈だ



止めておけば良いのに


「よぉ、何でこっち来ちゃったよ?」


偉そうに





板に向かって喋るアイドルに声を掛けた





「え?あ、あ~マジかぁ さーせんッス、まさかの本人ご登場なんで折り返しますね?  はーい はいはーい」

少女はテンポ良く端末をタップしてから

「最初から言ってるじゃないっスかぁ 自分は大丈夫、余裕だって」



ゆっくりと微笑む



もちろん察した


手に持つスマホを確認した時点であっち側なんだと


「け、怪我は無い?」

一気に思考する中での精一杯の返答

恐らく口元は震えていた


考えてみればそうだよ


この世界に電気と言う概念は無い筈なのに、、




【、、何なら機材のが心配ってゆ~ね】




どうする?


一気に額、首の裏辺りから脂汗が噴き出すのを感じる

囮にでもなったつもりが、、


どうする!


ドツボでしかない


どうする!? 俺一人で どうする!!? 何が出来る?




高速での自問自答


思考出来るだけのソレでは、、何の意味も成せず





「怪我なんて無いッスよぉ」



少女の言葉だけが能を巡る




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