57 魔剣

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



8/20 16:20


三人の立て籠っている部屋も最初の部屋と同じく体育館程の大きさで入り口は1つ

機械などは少なく倉庫の様に良く分からない物が多数置かれている


「なんか使えそうな物無いのかな~」

アルは箱やらなんやらを開けては扉の方へ投げゴミ山のバリケードを作っている

「あ、この辺はなんかお土産になるかも!」


「おいおい、あまり雑に積むなよ? 剣が取れなくなる」

エルフはクネクネと不思議な体操で身体をほぐし始める


「よし、こっちはオッケーだからアルも登っておいで」

バルは簡易的に段差を作って天井へと飛び、金具を引っ掛けている所だ



「あ~、んと~  ねぇラフィ?」


「む?」


「あの、気をつけてね」


「ん?あぁ 任せておけ!」


少し照れ臭そうに、アルはバルのいる方へと向かう

身軽に段差を登り天井の引っ掛かりにぶら下る


これは「出来るだけ離れて欲しい」 と言うラフィからの忠告だ


入り口の扉を叩く音はもう煩いくらいに大きい


ラフィはゆっくりと扉に近寄り、閂(かんぬき)の代わりにしていた大剣を手に取ると同時に


後ろへ飛ぶ



ゴアアアアアアアア



雪崩(なだれ)の様に部屋へと入って来るのは様々なサイズの機械人形

バリケードを吹き飛ばしながらラフィ目掛けて襲い掛かる


「さてと やるか」


エルフは一呼吸し



剣を鞘から引き抜く




ガッジャャアアアア




初撃の横なぎで5、6体の人形がまとめて砕け飛ぶ


立て続けに入って来た人形がラフィを掴もうとする

剣の重さを利用し振り子の様に身体は横へ飛ぶ


先の一体を強く蹴るとそのまま車輪の様に回り、塊の中へと飛び込む

飛び込んだかと思えば爆発した様に人形がまとめて宙に弾ける



ヒュン  ヒュン  ヒュン  ヒュン



団子状態の中でも人形達に掴まれる事は無く器用に隙間を掻い潜り


破壊して行く




「え、何 アレ」


「うん、俺も二度目だけど  何と言うべきか」



似つかわしくない剣を振り回すその姿は別の生き物に見える程荒々しく

這う様な動きでさえも舞っているかの様に美しい





ほんの数分が経った





アルとバルがぶら下る天井まで破片が飛んで来る事も多々あった

部屋中が破壊され尽くしており、頑丈な扉さえも斬撃で横に割れている

割れて落ちた扉の向こうからは新しい人形が入って来る様子も無く


ラフィの周りに動くモノは何も無い




「ふぅ、頑張った頑張った」

エルフはマイペースな台詞で剣を振る


「この数、、嘘でしょ? ラフィあんた  何なの」

ツインテールの少女が足元に転がる鞘を拾う


「相変わらず凄まじいなぁ」

バルも地に戻り 残骸を眺めている


「そっちには飛んでいかなかったか?」


「飛んで来たよ! 飛んで来たわよ~ ラフィは?怪我無いの?」


アルはラフィの手を取り腕、背中、足 と観察する


「あぁ、大丈夫だ 一撃ももらってない」

ニパっと笑う微笑みが眩しい


「ねぇ、あれだけ強いなら最初から剣使えば良かったんじゃないの!?」


「う~ん、剣を抜くと中々止まら無くてな」


「、、どゆこと?」


ラフィは膝下の汚れを軽く払いアルから鞘を受け取る


「まぁ、色々と制限があるん、、」



「二人共 準備して まだ追加が来そうな音?   ラフィ?」

バルは外壁に耳を当て様子を伺っていたのだが、、




ガラン  ガラガラン




ラフィの手から鞘が落ちる




「ラフィ? どうし」

「来るな!!」



ドン!  バシャアア



アルが思い切り突き飛ばされ、おまけに水魔法までお見舞いされる



「あっぷ   ちょ!いったぁ 何す!?」


文句を言ってやろうと表情を変えた所に


目と鼻の先に



ラフィの斬撃が通過する



「、、え?」


「はぁ、はぁ、、うぅ 逃げ はぁ  ぐっ あぁ     血が、、  欲しい」


「アル こっちだ!」

咄嗟にバルが手を引き部屋から出る



「う、、うぅ ああ   ああああああああああああああああああああ」


エルフの悲鳴ともとれる声


共に何かを破壊する音が響く



「ちょちょっちょっと! ラフィ置いてっちゃうの!?」


「明らかに様子がおかしい、距離を置かない、、と」


二人は勢いよく部屋を出た








の  だが




部屋の前には一匹の虫 


いや、巨大な  蛙の様な怪物が通路を塞ぎ


血塗れの口元を舌舐めずりしている














「みぃいつけたああぁぁぁあああああああ」




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