285 狐雨

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



3/5 12:00


「ふむふむ~へ~凄いね~、それでユニフォームを切り替える感じなんだ~? お!良い匂~い楽しみ~  制服か~魔法学校の子らこの辺にはいないし良いかもね!? あ~でもこのサンタ服も可愛いのに勿体無いね~、あ!でね?瘴気の方なんだけどぉ」


昼前に帰って来たシャーマンがカウンターへ向かい一遍に言葉を並べている


「ははっ、他にも擦り合わせたい事あるけどチエさんとりあえず一旦落ち着いて?」

亭主が昨日作ったチキンカレーを食器へと盛る


食欲をそそるその香り

残念な事にお供として共に向かったチャラ男は体躯の良いエルフに囚われ、作業へと連行されたので一人前だけだ


「あ!じゃあほら! ホラーを取り入れたカフェとかもどうかな? 面白くない?」


「それほらとホラーかけたんですか?」


「あっはっは! 違うってばぁ、要素だけでも取り入れたら面白いと思うんだけどな~」


「それだとなんか学園祭みたいになっちゃいません? コンセプトカフェでも結構アレなのに肝試しも取り入れて、、最終的に風呂出来んでしょ!? ゴール何処っすか」


「え~良いじゃん良いじゃん!凄いじゃん! ふふふ、夢が広がるね~」


「いやいやいや、ただ単にお金の為なんスけどね」


「言い方! まぁあね~合ってるんだけど言い方良くないぞ?」



明るい常識人!

少しふわふわしてる所はあるのだが今までの女子陣がみんなキツかったからか、不思議な感覚だ

(母性か? これが母性と言うやつなのか!?)


会話も弾む


そんな中、何か軽い引っかかり、いや小さな巫女や大きな神?達みたいな狙った感じでは無い

それこそただの、ふとした疑問


美味(うま)そうに頬張る魔女に問いてみた



「こんな面子(めんつ)らといるんスよ? 思った事ばっかり言う様にもなりますよ~、、あ、ところでチエさんはさ」


「むぐぅ、んん? むぐむぐ  うん!美味しい!! 美味しいよ? どうした~?」





「サンタ知ってるんだ?」





魔法を学ぶ所があるのは聞いていた


だからイメージ上だが学校、制服みたいなのはあるのかな~と思ってた


だがこの世界に『クリスマス』なんてものは無い


、、だから



『サンタ』もいない訳で



投げかけた言葉に


帽子を深く被り直す






とかそんなのは無く


「え~?サンタぁ? 白髭のお爺さんだよね?こう、なんか大きい感じの!  女の子が着るとこんなに可愛いとわ! あっぱれだよ~」


普通だ!


何かがバレたとかそういう反応が一切無い



至って普通



だから




亭主はその引っ掛かりに気づかなかった




それこそ思考などする間も無く


「腹減った、飯よこせ」

「ただいま戻りました~今日は変な天気ですね~」


「あはははは、腹減った~飯よこせ~」

「そうだそうだ飯よこせ~」

「早めに片付け無いとって言われたからこの時間に来れたんだ、飯よこせ」

「まぁまぁ姉さん、むしろ早めに片付けたから濡れなくて済んだって考えましょう あ!美味しいやつお願いします~」

「ってか人いるせいか随分狭くなったね、ここ」

「あ~確かにそうだな~商人の兄ちゃんにもっと増築する様に行った方が良いんじゃないの~」

「あ、えっと  お邪魔します」


巫女らと天狗様御一行の到着だ



「あ~あ、折角の平和なひと時がよぉ、ったく はいはいはいみんなおかえりね~ アル~まずドリンクやってやって~」

軽い憎まれ口と独り言を混ぜ溢し、三十路はカレーとは別の調理に取り掛かる


まぁ、それでもこのカオスな空間は自らが望み、求めていた形になりつつあるので嬉しい限りでもあったりするのだ






わいわいがやがや

と言うよりは黙々と? いや、音はあるのでガツガツと

遠慮の無い速度でカレーが減っていく


念の為ネギ抜きで作った方にも巫女が手を出し始めたくらいで狩りに向かっていた二日酔い知らずの長が肉を抱えながら帰って来た


「皆もう帰っていたのだな! じゃ、じゃあ私も、その~ 少し早いけど、の、飲むとするかな?」


(いや、なんでだよ!)

って思うけど、まぁ無料でやる事やってくれてるし増員も助かってますし何も言えませんしおすし


、、あれ?ってか コレ、もしや と感づいた

さっきの猫忍の台詞だ



【早めに片付け無いとって言われたからこの時間に来れたんだ、飯よこせ】



こいつらもうこのまま夜まで飲んで食って、今後の話し合いする気だ


(言えよ!)


夕飯に使おうと大量に茹でていたマカロニを笊(ざる)で掬(すく)い、湯切りしてから熱々のままチーズの塊に乗せる


(でも、良かった  アルの件も、そのまま)


、、ズルいなんて思うなよ?


しっかりと、丸く収まる方が良いに決まってんだ


賢い連中が居るんだからそっちに任せるのが至極当然


「あいよ、調味料系と一緒に持ってって~ 勝手に混ぜながら味付けして食って」



俺は、出来る事をやるんだ





・・・・・・





ドールが目を覚ましたのは夕方過ぎ



そしてそのまま






二度目の上映会が始まる

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