208 健闘

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



2/13 15:25


「何をしているの?しっかりと考えてから行動するべきでは無いのかし」

「も~!うるさいうるさいうるさ~い」

少女は自分のウエスト部分、腰元から服を大胆に捲(めく)りエバの顔を囲うとそのままグルグルと強く結び固定する


そして


(どっかに)


「当たれぇ!」


ツインテールが揺れ、勢い良く身体を捻る



バヂィイン!



横向きに倒れた化物

ライオン、では無い山羊の顔

目の部分にアルの後ろ回し蹴りが綺麗に入った


「ブゥゴォオオオ!」


運良くクリーンヒットしたその強烈な踵(かかと)で恐らく眼球が潰れたのだろう

遠吠えの様な声を上げ、バタバタと血を撒き散らしながら足掻く


(やった!よっしよっし、今だ!)

右足を上げ、一、二とステップを踏み

そのまま逃走


しようとしたツインテールの頑丈な足が何かに絡めとられる


「えっ、あ!ちょっ  うっ   あっ」


自分の加速した速度、トップスピードでは無かったがそれは交通事故の様なものだ


少女は咄嗟に胸元を抑え、エバの頭を大事に抱き抱えたままゴロゴロと大きく転がる


「むまむむむ もごもごも」


「うぅぅ、あぁ うぅ   痛ぅ~」


受け身が取れずに勢い良く頭部と額を打ち、両肩周辺を深めに切った

破れた肩からはジクジクと生暖かい血液が流れ、頭部の痛みで自然と涙が流れる


でも


「いったいなぁ!」

即座に裾で顔を拭い、絡みつく鞭の先を睨み付ける


「、、逃がさない」


「むぅむぅ もご、もごご」


「へんっだ!鞭なんか持ってライオンと、、何あれ山羊?  あんなの従えて猛獣使いのつもり?」

胸元でもごもご言っているドールを無視し、もう一方の足で鞭を踏みつける


「、、別に」


「あのねぇ、言っておくけど此処の、うちの店長の方がよっぽど猛獣使いなんだからね!」


目の前の少女は眉一つピクリとも動かさず

ゆっくりと

啖呵を切るアルの元へと向かって来る


鞭の持ち手を放り

腰元から短剣を引き抜き

切れ味の良さそうな鋭い刃先がギラギラと反射している


「アンタねぇ、、ねぇ、なんで?こんな、なんなのよぉ!」


「むむむぐ、むぁル!      」



!?



駆けて来る








同じ顔をした少女の短剣が胸部へと刺さる








のだが






屈(かが)み






スパン!






足を払う






「な!?」


「うっ、あぁああ」


払った足を



踏みつけ



パン!



と折れた音がした



「うっぐあああああ」


「ご、ごごごごめんね!」


「ギチチカチカチ、ぷっ! 感傷に浸る時間は無いのよ?急ぎなさい、アル?アナタはそもそも考え方が幼稚なの、もとはと言えば私が初撃、、むがもももも」

アルの胸元に突き刺さった短剣を口で受け止め、吐き出したエバから容赦の無い説法が始まったので再びグルグルと固定した



(よし)


偶々だ


(後はこのまま走れば)


偶々だが上手くいった


(キビちゃん達を)


筈だった


(連れて、逃げない、、と?)


「あ、あ、、れ」


胸辺りまで捲(まく)った服


固定した筈のエバの頭がゆっくりと地に落ちる


「アル、アル? 落とした事を攻めるつもりは無いのよ?」

コロコロと転がり、状況が見えずにドールは名前を連呼する

「アル、どうしたの?  ア、、ル?」


丁度、少女の方角


倒れた少女の背後が見えた






蛇だ






蛇がアルの胸から下、横腹から腰付近を噛みついている


エバはカシャカシャと目の色を変え、珍しく声をあげる


「急いで!」





「尾を切り離して!」



二匹の猫が飛ぶ様に


喫茶店から飛び出す

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