207 奮闘
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
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「え、、ぇ?」
両足が太陽の光を反射する少女が二つ結びの髪を揺らす
喫茶店の従業員は目の前の惨劇にしばらく瞬きを忘れ、間抜けな声を上げている
それもそのはずだろう
頑丈な自分の足と同じ物
鉄でも鋼でも無い、もっと強い強度のあるソレを両腕両足に持つ機械人形
ドール・エバの右腕がライオン、、それと山羊の頭を持つ化物に食い千切られたのはつい先程の事だ
喫茶店『ギルド』に向かって来た化物
エバは前に出ると文字通り、力ずくで入店を拒否した
化物の鼻部分へと飛び、その拳でカウンターを一撃入れると前へ進行する事を止めた
地鳴りの如く響く悲鳴
ライオンが雄叫びを上げる様な音では無かった
甲高い、豚が鳴くかの様な奇声を鳴らしながら後方へと下がる
そんな不快音もなんのその
エバはそのまま激しく揺れていた荷台へと軽快に乗り込み運転席にいた者と対峙した
即座に鞭の様な物で攻撃をされたがビクともしない
距離を詰め、首元を掴むと元いた場所へと早々に戻って来た
(凄い!なんだ、エバが居たらこんなの何でも無いんじゃん)
と思った矢先だ
エバの持って来た『運転席にいた人間』と目が合った
「え、、」
と同時に
嫌な金属音と共に何かが通り過ぎた
「ぇ?」
アルの横で土塗れになっているのは片腕の無いドール
受け身も取れなかったのだろう、何処を守るでも無い様な無造作な形で雑に転がっている
「え、エ」
「姉ちゃん来い!」
小さな猫忍がドールに近づこうとしたアルの手首を強く引く
「あず、そのまま建物の裏へ! ったぁ!!」
流石の忍者、キジ柄は腰元の袋から小さな鉄の塊の様な物を大量に取り出し力一杯に化物へと放る
のだが
ゴォアアアアア
まるで火炎放射器
ライオンの口からは何かが爆発したかの様な音がすると凄まじい勢いで炎が噴射し暗器を飲み込む
「あああ危ない、コレはダメです倒せそうに無いです」
キビは屋根から逆口側へと飛び二人と合流する
「追いつかれたらさっきの馬みたいに食べられちゃいます、けど素早かったですしどうしましょう」
「絶対ヤダ~猫も鉄も美味しくないのに」
策が無い割には能天気に聞こえてしまう
「あ、あたあたあたしが、お、囮になるから?!キビちゃん達はその隙に森の方へ逃げて!」
恐怖で明らかに動揺が隠せていない、がそれよりも
『運転席にいた人間』の存在
それと
エバの安否が気になってしょうがない
「姉ちゃんの足も食べられちゃうよ!?」
「話してる時間もありません」
キビは再度屋根に飛び、静かに様子を伺う
「、、ぁ」
「どうしたの!?」
「エバちゃんが」
!?
判断としては最悪だろう
次の言葉を聞くよりも先に、何も考え無しにアルが飛び出した
「姉ちゃん!」
「あず!援護、、出来るか分からないですけどお店の中の刃物を拝借しましょう」
再び屋根から降りると裏口の扉を開け、あずの手を引く
はぁ はぁ
(怯えるな!怯えるなあたし!!)
「何してるの、逃亡の準備をしなさいと言ったわよね?」
はぁ はぁ
「危険だと言ったでしょう?逃げなさ」
「逃げられるわけ無いでしょ!」
少女は一気に加速するとそのスピードのまま飛び込み化物の前足を蹴りつける
大きな体は体勢を崩し滑るかの様に横向きに倒れた
その隙を突き
玩具の様に遊ばれていた
頭だけになった人形を奪い、両手で抱える
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