4 目覚

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



4/10 9:30  一方 少し前からの主役視点


「い、、お~い  こらぁ」

スパン!

と良い音がしたのだが体は動かない

少し飛び飛びに、すぐ近くで喋る言葉が耳に入ってくる


(何 えっと 毒? ん、、でも助けてくれる、のか)


何が出来る訳でも無い為、意識半分に全てを任せる


(なんだっけ、のどかな道に転生されて 確か 正面側の位置に村なのか民家みたいな?何かがあった気がする)


そのまま後ろを向くと何キロ先か分からんが、デカデカと栄えてますよ~アピールしている城壁みたいなものが見える

いや、実際は自力では無く、小脇に抱えられ、視野が変わっただけなのだが、、

ぼんやりとした頭で目線を動かし左右を確認した



のどかだ



裏返った視野で見えたのは単純にただただ広い風景

緑色が多めで土の香りが漂う、、のはきっと思い切りに倒れたから顔に付いてるんだろう


随分先と言う程でも無い距離に森や山なんかも見える

まるで牧場にでもいる様な清々しい気持ちだ



「変わった格好じゃろ? そこそこ金銭も持ってるようじゃから恩を売っておこうと思ってのぉ!」


(ん、金銭?)

恩人達の会話が気になった

(やっぱり、アレはこっち側の通貨なのか?  って事は?)


『転生したら金持ちになった俺は・・・』とかってやつなのだろうか

通常の物語であるのならこのままお城の方面に行ってあ~だこ~だ活躍をする筈なのだが


(良かった~)


この物語の主人公


(少なくともいきなり衣食住に困るとかは無いか~)


もし意識がしっかりとしていたとしても


(大金持ってごったがえしてる所に行きたくないし、村に連れて行ってくれるのは情報収集にありがたいかもしれない)


主役の脳では無いのかもしれない




ガラガラガラガラ




(馬車?)


ガラガラガラガラ


(ヤバイ  これは)


ガラガラガラガラ


(二日酔いと毒がまわって、、)


ガラガラガラガラ


意識が 











4/10 11:10


「うああああああ」


勢いよく起きたは良いのだが


「わああああ」


「ええええええええ」


明らかにキモ!こわ!!の様な目線が目の前に2つ

黄緑色の髪をした高校生くらいのショートカット

それと小学生サイズのロング、、少女が二人


・・・


そのまま起き上がる気にもなれず、自分でも目をぱちくりさせ



とりあえず



「すいません、ごめんなさい!」

再びシーツの中へ逃げる様に潜り込む


自分の寝言で起きる事はたまにはある、だが知らない娘さん達の前で恥ずかしいやらなんやら


でも


(さっきまでの事も夢ではなさそう か?)


そんな心情いざ知らず


「え? 何  この人、大丈夫なのかな」


「こわい~」

コソコソ喋る声


いや、そもそも隠す気なんて無いのだろう

黄緑少女達の台詞は駄々洩れでクリアに聞こえて来る から



聞こえないフリをした




ってか

その前に!!




(俺はなんでベットの中にいるんだっけ?)


覚醒しきっておらず、頭は半分モヤモヤと

痛いのか気持ち悪いのかも分からない程フワフワな状態


( ぁ ええと どうなってどうなったんだっけ? ってか今、目の前にいた子達も髪の色カラフルだったよな?)

なんてあれこれ考えているうちに



コトン



頭の近くで音がした


続けて


「あの  これ~、飲んでおいて下さいね」

幼過ぎない声が聞こえる


勿論反応なんて出来ず、息を殺した



しばらくすると周囲から音は消え



静まり返った

だから、タイミングを計り

ゆっくりとシーツから目をやり、周りを確認した途端


「お ぉおう」

なんて声が出た


コレが目を疑うって事なのだろう


各所から丁度良い按排(あんばい)に木漏れ日が差し

通る風が心地良いせいで二度寝したくなる気持ち良さがある


どうやら木材で出来たロフトみたいな所か、下からは物音がするので二階か三階建てなのか?

自らの上に乗せられた?シーツと思っていたモノはスベスベの真っ白な物ではなく、麻袋の様な質感だ


先程聞こえたコトンの音に期待をしていた事もあり、近くに置かれたソレを手に取ると一気に飲み干した


(まっず!)


痺れる感覚は無い、ので痛んだ物では無さそうだ

だがコレはなんと言うか、泥水でもないし、カビ臭い訳でも無い  のだが、、口内に酷く残る


(ナニコレ 苔? 自然の中で綺麗にだけ見える部分の水、とでも言えば良いか?)


それでもまだ喉が渇いているのも事実、ちょっとくらいの臭いがあっても出来ればもう一杯貰いたいってもんだ

こちとら軽いオール飲み会明けである


(でも、えっと、、とにかく俺は転生したって事で良いのかな?)


少し落ち着いた

頭の中で都合の良い事は多々あるのだが危機感の方が半端無い

起きて早々に見た事の無いスライム?に襲われたのもそうなのだが


何の為に、、ここに来たんだ?


呼ばれた?


死んだ?


転生って大抵そんなんじゃなかったっけ?



モンスターがいたって事は戦うの? 魔王とかと? 武道の心得なんてないよ?

ってか連休明け会社どうしよう  とか考えだしてしまう


(良くもまぁ「なろう系」はすぐさま適用出来るな!? ハーレム化?出来るのか? 普通に怖いんだが!?)


水?の入っていた容器を片手にしばらくぼーっと木漏れ日を眺めた



・・・・・・



(今のところ、ここまで運んでくれて水?の用意もしてくれてるし、、悪い人達ではないんだろうな)


「お礼くらい言わないと」

誰に聞かせる訳でも無い自然と出た言葉

そんな事など気にならないくらい、先に、、主人公補正を早く見つけたいものだ


本当に転生なら、何かしらの能力があるのだろうから


(でもそもそも俺、死んでなくない?  召喚されたパターンかな?)

言葉はご都合主義の様に通じていたのであとは通貨の単位とか覚えた方が良いのかな ? 世界の情勢やらも確認しないとか


徐々にではあるが冷静になって一つ一つ考えていく



あれ





リュックは!!?





ガタガタン



勢いよく起き上がろうとして足がもつれる


「あっ!いって」

(あ、そうだ、毒? なんだっけ)

まだ体が痺れて上手く動かない

腕立て伏せの様な状態からゆっくりと足をひく


トットットットッ


足早に誰かが近づいて来てくれるのが分かる


「大丈夫ですか!?」

黄緑ショートの子が階段から顔を出す


「あああ、ごめんなさい、まだ体、あっ足がうまい事動かなくて」

みっともないのだが変な体勢で悶える事しか出来ない


「えっと、スライムの毒らしいですよ? 先ほどの薬ですぐ治りますからもう少しだけ横になっていて下さい」


高校生くらいの女の子に肩を貸され情けないやら恥ずかしいやら、、嬉しいやら


「あの、ありがとう  それよりなんだけど~俺のリュック知らないかな? 背負う鞄みたいなやつ? 赤いやつなんだけど」

この世界にリュックがあるか分からないので少し意味の分からない説明になった


「え~と? あ!カセンさんが持ってた様な」


「カセンって あ、あれ? かな俺を運んで来た人?」

仰向けに寝かされ シーツ(布)を直される


「そうですそうです、お知り合いじゃないんです?」


(マズイ持って行かれたか)

「あ、ああああの!どこ行ったか分かるかな?」

少し食い気味になってしまう


「え た、多分すぐそこのご飯処にいると思いますけど?」


焦っていたのが一気に恥ずかしくなった


「え、あ、、そ、そっか」


「本当に、すぐ良くなると思うので後で行ってみると良いですよ えっと、あ~私はリィンと言います」

いい大人が自己紹介すら先にされてしまう



「あ~、ごめん ひとs、、じゃなくて ジン、ジンと言います」

ニックネームダ(転生なんだろ、良いだろう?  ひとしもじんも変わんないだろう!?)


「ジンさんですね、よろしくお願いします、母が下にいますので動ける様になったら一声下さい」


「あ、ありがとう」


(最近見ないぞ、なんて良い娘さんなんだ)



幸いにも良い人達と巡り会い、やっと自分の名前を名乗れた主人公

彼女はいない





(そろそろ足の痺れも良さそうだな)

20分もしないうちに薬が効いてきたようだ


(足よりも、、喉が乾いてるんだよな)

上体を起こし、階段をゆっくりと降りて行く


(あ~なんか懐かしい感じのする建物だな~〇ブリの中に入ったようだわ)

下を見ると例の母親と目が合った


「あ!お世話になりました、すいません色々とありがとうございました」

自然と何度も頭を下げた

営業的ではなく、感謝が先に出て来る


「いえいえ、もう平気そうですか? ゆっくりしてても良いんですよ?」


「えぇ、ありがとうございます、とりあえず散歩がてらご飯食べに行こうかと」

居場所は分かっていても大金を見ず知らずの者に預かられているのでソワソワが収まらない


「それなら二つ隣の建物で食べられますよ」


「あ、軽く上から見ました  それと支払いなんですけど~、後で、、でも 大丈夫ですか?」

感謝はしているのだが現在無一文である  気まずいのだが伝えない訳にもいかない


「え?」

不思議そうな顔をされた


「あ~えっと、解毒薬とかいくらするのかも分からないんですが、、本当にすいません」

喋りながら気づいた、、高級品なのだろうか、単価が分からないのだが再びしっかり深々と頭を下げ直す


「いえいえそんなに良い薬じゃないので」


「休憩もさせて貰っていたのにすいませんが」



「あ~いや!そうではなくて」







「カセンさんから頂いてますよ?」

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