157 凶変

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



12/14 11:50


「な、なんだ? 何が起こっている」


目の前で今もぎゃあぎゃあと煩(うるさ)い蟷螂(かまきり)を見てエルフ達の足も止まる

貫かれたソレ達はバタバタと足掻いている者、刺さったまま突き進んで来る者、ぐったりとして動かない者と様々な動きを見せるのだが、、徐々に


「化物が 萎(しぼ)んでいく」


良く見ると刺さった木の根がまるで生きている、呼吸しているかの様に



ゆっくりと



ゆっくりと



血液を循環させている



「ルイ、どう? 大丈夫」

小声で喋るキーロの声は距離的にもエルフ達には届かないだろう


遠隔操作中なのか当の本人はまだ動かない

恐らくまだ後方の異形を退治している所なのだ、悲鳴の様な声が鳴り止まない


(エルフもきっとルイがやっているとは分からない筈だ、早く終われ、、ば?)

そう願うキーロの目の前にはいつの間にか一人のエルフが立っている

最初の異形の処理を頼まれ、スティルと呼ばれていたエルフだ


「これ、その子がやってんの?」


(バ、バレた! どうする どうする!?)

冷汗が出る中、頭をフル回転させる


のだが


「すっげぇじゃん、何? ひょっとして姫様みたいな魔法?」


あっけらかんとした表情でこちらを見る


(姫? 例の戦姫?  そうか、魔法を見た事があるのなら不思議では無いのか)

「そうで」

「って事はさっきの異形やったのは兄ちゃんの方かい?」


「ぇ」


「強そうには見えないけどな~、えげつない死に方してたぜ? まぁお陰で埋めるだけで済んだけどよ」


「あ、あはは お手数お掛けして」

精一杯の苦笑いだ


「獲物はなんだ? それともあんたも魔法使い?」

徐々にその目は鋭さを増していく


「ウウウゥ!」

その空気を察したのか下敷きになっていた狼が威嚇の為、牙を出す

「フェリス、たんま! 待って、ダメだよ?」

即座にキーロはフェリスの前に自らの腕を出す


・・・


「あ~、はいはいわ~かったわ~かった そんな怒るなって賢いわんころだな~、お~いオルカ~運良かったじゃね~か~」

スティルは腕を頭に組み他のエルフ達の方へと向かう


(大丈夫、かな)

キーロは狼の鼻、額周辺をかしかしと擦る
















「な、なんだ? 何が起こっている」


オルカらエルフ達のいるその逆側、200体目の異形がいる方向と言うべきか、今ラフィの隊が到着した所だ


「これは、異形?」

モーズが萎(しぼ)んでカラカラに枯れてしまった異形を長い枝で突く


反応は無い


「新種の異形とかでは無さそうですね? どれも地中からの木の根が突き刺さってる、トラップとかでは無いですよね?」

後ろにいるバル王子の方を向き小首を傾げる


「あぁ、こんなトラップ、王国の書庫を探しても乗っていないだろう」

王子もまた辺りを見渡し、その異様な光景からヒントを探す


「怖いので切り倒して行った方が良いですかね?」

前を進むエルフ達から声がする


「そうだな、動かないとは思うが注意して進んでくれ」



エルフの何人かを先頭にラフィ、またエルフを数人挟んでモーズとバル、その後ろにもエルフ達が付いている

隊は少し足早に前方向と身の周り付近のミイラを破壊しながら進むのだが

「わっ」

切り倒したミイラ、、違う、ソレを突き刺していた根から赤い液体が吹き出す

「、、なんだ? 気持ち悪い」


「何をしている? 急ぐぞ?」

流石の族長が先頭まで来てエルフ達に声をかける


「あ、はい すいません」


ラフィはデコられた大きな剣を鞘のまま振り回し




血を拭い先へと進む




少しすると知った声が聞こえる




「おぉ!?その声はオルカか!」


「え?まさか 姫様!?」


「マジで?    おお、姫様だ! 姫様~」

スティルが先に前の草木を掻き分けラフィに向かって走る


「スティルも、無事だったか」



バゴン



鈍い音がした


「あ」

悪気は無い、前方向の道を拓く為に振り回していた大剣が脇腹に当たった様だ


「ちょっ! 久々に会っていきなりぃぃい」


「す、すまん! 皆、無事か?」


「無事じゃないのが目の前にいるでしょ~」


「えぇ、全員無事です、怪我人もいません」


「あっ、あぁ そそそ、そうか うむ?そうか」


タイミング的にも周りのエルフがいつもの絵面にどっと笑い出す



「それと旅人を保護しました、もう大丈夫だこっちに」


オルカが後方声を上げたその時


























「うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」












悲痛的な声が




叫びが聞こえた

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