19 黒猫

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



8/13 12:30


「では、行ってきます  何もなければ1週間もしないで戻れると思います」


「いやいやフラグみたいだからやめてくれい  あ!それとコレ、干し肉と今日の分だけ軽く弁当作ったから持っていってよ」


主人公キャラの様なバルが言うのでどちらかと言えば弁当を渡す俺の方にフラグが立ったような気もするのだが、、


午前中にキーロは王都へ帰り

バルが今出発した



「んじゃあっしもこの前受けちゃった依頼だけやってくるかの」


「いや!まて、だとしたらこっちの倉庫の解体も一緒にやれって 同じ方面だろ」

すかさずもう一枚依頼書を押し付ける


「お~?     あ~コレ この前壊したのう?」


「だから~ そういうとこだよ~」


「なんじゃ? ジンの良く言う効率的じゃろう?」


「報告! 連絡! 相談!!」

結果的に言えば効率は良いのだろうが そう、この子達はホウレンソウがないのだ

実際こっちの解体の方は後払いなので報告をしないと一切金銭が発生しない



「おい、半裸の相手は良いからこっちにも弁当よこせ」

ロリ巫女が偉そうに手を出す


「いや!ねぇよ? なんであると思ったよ」


「あ?」

可愛い顔の眉間にしわが寄る


「怖! 何このロリ」

(え?なんで あ?なの  俺 朝食サービスしたのに?)


「ジンさん 言ってる事と思ってる事が多分逆ですよ   いで なんで俺なんですか!?」

きっと残り物のスープの恩恵だろう俺の代わりに従者が脛を蹴られる


「ちっ、くそが     はぁ、とりあえず今日は港の方に行くぞ」


「直接食糧確保ですか!?  港に行っても買うお金ないですよ?」


「いやいや、まってまって  え~っと港行くなら~  ほら依頼!  いっぱいあるから!」

バサバサと大量の依頼書から何枚かを抜き取ると巫女の目の前へ並べる


「あ~うるせ~うるせ~ 巫女様は忙しくてそんなんやってらんね~んだよ、シチューでも作ってろ」

そう吐き捨てる巫女は不機嫌そうに店を出て行ってしまう



「え~何~? シチュー? 何、、食べたいの?」

この巫女は能力も高く地位もあるのに常に金は無いし何故か意欲的に働かない

いくらでもやりようはあると思うのだが不思議だ







「シエル様、良かったんです? ついでに何か受注しても良かったのでは?」


「調べ物だ」


「、、、バル君ですか?」


「ちっ お前の脳も大概だな」

珍しく手を出さないでシフを睨み付ける


「まぁ、一応巫女様の従者ですから」

いつもと変わらない爽やかな笑顔を主に返す








8/13 15:30


(客来ね~)

誰も居なくなった喫茶店で亭主が一人時間を持て余す


(もはや喫茶店の方がおまけなんじゃない?これ)

依頼把握や書類の整理、経理関係などなど

やる事は多少あるのだがジン一人でやっているので覚えてしまっている

その為時間を取られる事も無くすぐに暇になってしまう



(キーロがテストで作った『携帯ゲーム機』でもやるか)

と思い席を立つと窓の外からカリカリ音がする


「にゃ~」


「お?今日も来たのか クロ」


この黒猫は店を出して一週間もしないくらいにどこからかやって来た野良猫だ、勝手にクロと呼んでいる


「今日の残り物は全滅しちゃったからな~、しょうがない」

鶏むね肉をささっと茹で、割いて皿に盛る


(茹で汁と残りは夕飯で使えるしな)


俺は動物が大好きである

マンガやアニメのケモミミも勿論なので王都に行くとまず獣族を探してしまう癖さえある

だがリアル動物はやはり良いものだ


とくにネッコはたまらん




「ほれ 冷めた   食え食え  美味いか~」


ハッグハグ ハグハグハグ


しばらく黒猫の食事を眺め幸せ空間を味わったので早速ゲームを始めてみるとする


(懐かしい感じの単調なゲームかな?  まぁ技術的にもしょうがないか  きっと専門のそういった道具?やら施設?に行けば大活躍できる人種なんだろなキーロは)



この世界にも技術が発展している国はあるらしい  いや『あった』らしい  王都にもある機械系の元祖はソコからの派生なんだとか

その国は何百年も前に大爆発があり今は古代遺跡と呼ばれている と言うかここからそこそこ近いしなんなら今日カセンが向かった町は遺跡のすぐ近くの村だ


冒険者 研究員 遺跡荒らし等々 彼らはいまだに知識や宝の山を貪るように調査している

しかし何百年も経つのに調査し切れていないのには訳がある

なんと完全自立式機械人形 要するにロボットが徘徊しているそうだ

その話を聞いた時はSFの様でワクワクしたが遺跡内で見つかると警告され出なければ躊躇なく殺されるとかなんとか


(昔の転生者が作った国とかなのかね~)

と思いながらボーっとゲームのスコアを延々と更新していく





「ん?」

肩の後ろから目線を感じ振り向くとクロがゲームを凝視している


「うお、なんだ?  やりたい  の?」

実際の猫あるあるでもある


「にゃあ」


「良いタイミングでの返事だな じゃあここ置いとくからやったらええがな」

謎の関西弁でゲームを置いて夕飯の仕込みに入るとする





(あれ、せっかく転生したのに夕飯の準備しながら猫と喋る三十路とか  どうなんだ)



出番すら薄い主役の背中には哀愁が漂う

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