18 樹海

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



8/13 9:30


「え?」


周りからの視線を一斉に感じた


「え、いやいやいや、なんでもかんでも受注してる訳じゃないんだけどさ? 現場を見ておかないと本来みんなに何も言えないでしょ」


どの仕事でもそうだろう?

俺自身、特別要領が良い訳でも頭が良い訳でもないので尚更必要な事だ


「俺は構いませんけど う~ん、戦闘になった時が心配ですよね?森には魔物もいるだろうし」

バルは言葉とは裏腹に少し難しい顔をする


「しっかり邪魔だから来るなって言っておけ」

食後のコーヒーを飲みながら相変わずの巫女がこちらを見ずに吐き捨てる


「そんなに!?」


「あ~、ジンがおらんと酒が飲めんのも困るしのぉ?」

もはや何杯目か分からない赤鬼様は無駄に保存庫を行ったり来たりしている


「もう保存庫で飲めば?」


「場所は大事なんじゃよ  それにジンはスライム相手にもやられる程じゃからのぉ」

ケラケラ笑いながら保存庫の方へ消えて行く


「ここ数か月でその辺のは慣れたっつの」

幼い頃のおねしょが~の様な空気はいまだに払拭出来ないでいる



「現場体験は凄く良い事だと思いますけど、自分もエルフの森はやめた方が良いと思いますよ?」

珍しく巫女の従者が話に入ってくる


「シフに言われるとなんか反論しにくいな~、う~ん   そんなヤバイ所?」


「まぁ、今は ですが」




エルフ自体元々温厚で賢く争いを好まない種族  だったらしいのだが半年程前から戦争を始めている

しかし王都やどこかの町で被害が出ている訳ではない、全て森の中での話だ

エルフ同士の小競り合いなのか その他の種族を敵対視しているのかも分かっていない

『戦争中』と言う情報も森から出て来た者達の話であり要は噂である


それとシエルの調べでは森でも『見た事の無い魔物』の目撃情報が出ていると言う

当初討伐隊での潜入は予定に入っていたらしいのだが今は先に吸血鬼絡みを優先して調べているそうだ




「ですので本物の情報が実質ゼロなんですよ」


「あ~、全てが噂なんだもんな~」

(ネット情報みたいなものだな  モノによっては8割以上が嘘だったりもするし)



「なんせ森がでっかいからのぉ 火の国なんか5、6個は入っちゃうんじゃないかのぉ?」

ひょっこり出て来ては自分の指定席に座る


カセンは火の国出身者だ 細かく知っている分冗談には聞こえない

地図上でも森はまぁでかい!

外周を囲い何キロか近場の情報は記載があるのだが

これは以前エルフ達が把握している部分を追加したものでしばらく更新されていないそうだ

その為実際に無くなっている集落や新しい住処もあるのだとか それだけ未開の地と言う事だ




「う~ん、俺が行くどころか  この依頼辞めておこうか?」

聞けば聞く程に不安の方が勝って来た


「いや、やりますよ森の状況も知っておきたかったですし     危機管理に関しても自信はあります それにこの辺の調査なら比較的すぐに森から出れますよ」


「マジで?」


「まぁ冒険者やってたらそれほど変わらないですって     では、準備して昼には出ますね」

そう言って主人公の様な青年は席を立つ



「あ~まてまて       おい、これ持っていけ」

ロリ巫女も立ち上がると手紙の様な物を突き出す


「ラブレターですか?  ぐふ」

最近この従者はただのドエムなんじゃないかと思う程自ら『そっち側』へ向かっている様に見える


「もしエルフの連中に遭遇したら渡せ 命までは取られないだろう」

巫女様の一筆にどれほどの効果があるのか俺には分からないが一応このなりで王都の代表である、通行手形代わりにはなるのであろうか



「わざわざありがとうございます」


「なんだかんだでちびっこは優しいんじゃのう」

赤鬼がま~たいらん事を言う


「あ?運良く族長連中に渡れば一石二鳥だと思っただけだ 露出鬼は黙ってろ」


「お~?肌の出てる面積は言う程変わらんと思うんじゃがのぉ!?」




おっきいのとちっさいのがじゃれてるので

「いいね!薄着!!」とか発言して仲間に入りたかったが味方がいなそうだったので黙っておこう

(性格がアレだけど見た目は良いからなこいつ等  何か商売 看板代わりに使えないものだろうか)

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