223 乾物
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
2/20 9:00
ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン
ンックンックンックンック
ガツガツガツガツ
モグモグモグモグ
ガツガツガツガツ
モグモグモグモグ
ここは遺跡町の食事処
では無い!
しがない喫茶店である
「ん!」
おかわりをよこせとばかりに皿をジンの目の前に置く
「ん! じゃないでしょう、おかわりってちゃんと言いなさい」
「 おかわり」
少し間が空いたがやっといつも通り、心のこもっていない返答が返って来た
「あいててて、ってか食うのは構わないけどさ、急にそんな食って大丈夫なのかよ、胃とか腸とか?」
バキバキと背中や腰を鳴らしながら空になった皿にポテトサラダを乗っける
「ん、美味い美味い」
「良かったですね~シエル様」
ひたすらもぐつく少女?と本当に嬉しそうな従者にこちらまでにやけて来る
「ふふっ、さいですか」
(まっ、いっか今日くらい)
ビリビリとする全身の痛みに耐え、ジンは引き続き老人の様に調理を進める
「さてっとそろそろ乾物ちゃん達も使い切っちゃいたいよな~」
「とりあえず言われていた物は大量に戻しておきましたよ?」
バルが桶に張った水から材料を笊(ざる)に移す
「サンキュー、キッチン周りもありがとね あだだだ」
「本当に大丈夫ですか?」
「あ~うん大丈夫、かな? 巫女があんななのに寝てるのもね あ、バルも飯食っちゃう?」
受け取った材料をざっくりとぶつ切りにしていく
「いえ、なら俺は薪と水やって来ちゃいますよ」
「働き者だな~何から何までマジでサンキューね」
裏口から出て行く好青年に軽く手を振り見送る、と足元の幼女に気付く
「うおお、なんだどうした! ロゼも腹ペコか?」
「、、それ、何?」
幼女は水で戻された乾物を物珍しそうな表情で指差している
「あぁコレ?見た事無いか、乾瓢(かんぴょう)って言って~、、その~え~冬瓜みたいな~ウリ科の~そういう~や~つだよ」
幼女から気まずそうに目を逸らしさらっと作業に戻る
(あれ?そうだよな?たしか、そういえば詳しく知らない様な)
「ふ~ん?」
ジンの手元でぶつ切りになっていく大量のソレを一摘まみし口へと入れる
「あ!こら、ってまだ味しないだろ」
二度三度噛むと幼女は何とも言えない珍妙な表情でジンを見上げる
「いや、なんで騙されたみたいな顔してんの!? った~く」
煮詰めている小鍋の中身を軽く掬(すく)い幼女の口へと運ぶ
「こっちはもう良い感じだから、ほれ味見 飯に乗っけるとうんまいぞ~」
・・・
「ん~!」
「うん、その顔なら大丈夫っぽいな」
ロゼの口に入れたのは、少し古くなり湿気ってしまった海苔と調味料をぶち込み水分を飛ばしたものだ
そう、所謂(いわゆる)海苔の佃煮、、『ごは〇ですよ』である
お嬢のお口にも合った様で何よりだ
ぶつ切りにした乾瓢(かんぴょう)は寸胴に入れグツグツと茹でる
次は昆布の下準備、と思っていた辺りで赤鬼が巫女に酒を注ぎ始めた
「え、いやおい!流石に飲酒はどうなの!?」
「カカカ快気祝いってやつじゃよ」
「むぐむぐ、、んっく うん、んで?ガーデンマスターはやっぱりいねぇのか」
「誰それ!なんか強そうってかシカトゥ!」
恐らくはジルバさんの事なんだろうが、もう少し違う言い回しがあったとは思う
「ぷふっ!あっはっは なんじゃ トゥて」
からからと笑う赤鬼
その声を聞き付け自然と近くの席に座り始めたエルフもプギャーとばかりに笑い転げている
「シカトヨクナイヨ!ワタシアナタシンパイシタダケ、チョットココミテルヨロシ、タネモシカケモチョトダケアルヨ」
調子にのって雑な手法を使いエルフの方を笑わせに掛かるが
「む、ん?む? ど、どうしたジン殿!?」
通じなかった様だ
それどころか完全にスベッたらしい
「いや! 何でもない、何でも無いから」(なんでよ、今まで爆笑だったじゃんか)
と話を逸らせど心配しキッチンにまで入って来る始末
こういう時本当にアルがいてくれたら、、と
切に思う
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