185 狙撃

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



2/13 10:35


「うっうがぁ˝ぐあああああああああああああああああ」


廊下に敷かれた真っ赤な絨毯が撒き散らかる血液で赤黒く染まっていく


「シフ!」

バルがシフに駆け寄る



当人は手を上げ、無事である事を知らせ制止する


「いつつ、頭に当たってたら危なかったですよ?」

従者は少し赤くなった左手首を振っている


咄嗟の判断だ


シフは向けられた銃口を左手の平打ちで弾き、腰元のファルシオンをそのまま抜刀


短筒を握ったままの肘から先が宙を舞ってから無造作に転がり、今も床を汚している


「ひ、ひぃ」


「なっ!?」


周りの男達もすぐには理解が追い付かずに狼狽(うろた)え、まごついている


「元上司でも恨みしかありませんので、、それに」



ドン!



右腕の無い男に強めの前蹴り

勢い良く後ろに飛ぶと渋滞していた何人かにぶつかり周囲がよろめく


その隙を突き



ガッ!



ズダン!



従者は一気に距離を詰めると他の軽装備の男から順に



右の手を撥(は)ねる



「あ、ああ˝ぁあがああ」


「ぐ、、あああああああああああああああああああああ」



噴水の様な飛沫が辺りを染める



「そんな道具では此処の吸血鬼は殺せませんよ?」


「こ、こいつ がっあっ!」

重装備の一人が剣を抜く、その動きよりも先にシフが左足、関節の隙間部分を刺突

すぐさま引き抜くと右回転を加え、怯(ひる)んだ相手の右手甲部分を柄で殴りつける



ガジャンッガララン



重たい音を鳴らし、持っていた剣は痛みと振動で叩き落とされた



「この剣も鉄ですか、来た意味を疑いますね」


「っ、強い」


ちらりと見た、最後の一人は反応出来ずに固まっている


「抵抗しないでもらえるのなら殺しはしません、止血と拘束、手伝ってもらえます?」


右手の無い軽装者達の胸元を探り、短筒を没収

邪気と言う様なものは無く、従者はニコリと微笑む







のだが









ダァン!









「え?」



見ていたバルは驚いた



いや、訳が分からなかったが逆に、距離のあったバルにしか分からなかった



「ぐっ、くふ」

シフは穴の開いた腹部を抑えながら力無くその場に倒れ込む




(まだ、いる!?)




バルは背後から聞こえた微かな音に気付き、振り返る


「動くな」

振り向いた額に何かが押し付けられる


ピタリと動きを止め、目の前、左右と瞳を動かし様子を伺う


(これは、人 か? 何人いる? 3、いや4人か)


目の前のソレが何なのかがイマイチ把握出来ない

言葉を喋った事もあり人であるのだと言う事は理解が出来た


「動くな」とは言われたが正確な人数、状況把握が出来ない為どっちみち下手には動けずにいる

(なんだ?魔法とかそういう類のものか? 目が悪くなった?  いや背景と同化してる様な、感覚が麻痺しているかの様だ)



「ちっ、おとりにもならなかったな」


「どうせ銃声上げちまったんだ、出直すしかない」


目の前と少し後ろから声がする


「だが良い土産が出来た、やはり偽物だったがあの人なら上手く利用出来るんじゃないか?」


「あぁ、そっちのも王殺しだとか言われてたな? 詳しくはソイツが知ってそうだし死体でも持ち帰った方が良いだろう」


(偽物、俺達の事か?  王殺しってまさか、いや今はそれどころじゃない)

バルは周囲のぼやけたソレらを認識しきれないと諦め、目を瞑り神経を耳に集中させる

(土産にされるって事は少なくとも今は撃たれない、集中しろ、どの位置だ)


「いや、まて!」

(左上? 上の階にもいるのか)


「ソイツが例の偽物だとす」



・・・



上にいた者からの台詞が途中で止まった


いや


止まったのでは無い



ドゴン! 



鈍い大きな音がすると


「うがぁあああ」

奇声?が音量を増しながらこちらに向かって来る



(な? これは!)


バルは目を見開き


落ちて来る何かから自分の身を守る為に大きく後ろに飛ぶ

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