184 幼女
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
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「あ~どうしたもんかのぉ」
先頭を走る赤鬼が十字路に辿り着き、立ち止まる
「魔力反応があったのは西だが、、割れた方が良いかもな」
巫女は後方を確認し判断する
「まっ、まだっ、はぁ 走れるよ?」
「ぁ?」
お前じゃないと言う事だろう軽く睨まれ一言であしらわれる
「天然エルフお前は私とこっちだ」
「むぅ?天然?」
まだ自分の足首を気にしながら目を丸くしている
「なんだ、足でも捻ったか?」
「んぁあ!?いや、あ!あぁ大丈夫だ、捻ってもいないし痛くはない、急ごう」
何故か照れた様な仕草をしてから先に走り出す
「、、やっぱりアイツだけは分からん」
相変わらずの意味不明な動きと返答に巫女は不思議そうな表情を浮かべながらその後を追う
「お~、んじゃあジンはあっしとこっちって事じゃな」
左手で亭主の右手を握る
きっと性別が逆で少女漫画だったら胸キュンなのだろう
「腕、抜けないくらいのスピードでオネシャス」
「頑張って足動かせぇい」
抱えてもらった方が良かったと後悔しながら西側へと向かう
2、3分が経った
体感的には10分は全力疾走した様な感覚だ
本当に途中からは走ってるのか浮いていたのか分からない程に脳が勘違いを起こしている
「はっ、はき ふっ はっはっ」
「なっさけないのぉ」
息一つ切らしていない赤鬼がだらしなく倒れこんでいる三十路の背中を擦る
「む、はぁ はぁ むり ふ」
正直吐きそうだ
その前に足がツリソウダ、いやってか今俺の足は付いてるのかどうかが問題だ
せめて移動シーンくらいは世の転生物並みにスルーして欲しかったのだが、もうこれは運動不足だ年齢だの話では無い ただの事故だ
(きっとウサ〇ン・ボルト追い抜いたわ)
「はっ、はぁホント はぁ 駄目だ、う˝ん! 回復までに時間 かかっちゃうから はぁ」
「しゃあないのぉ~」
急ぎなので置いて行ってほしかったのだが
「一番楽な体制ってこれかの?」
砲台を床に置くとジンの背中から腕を回し軽々と抱き抱え、そのまま背中と膝の裏に手を回す
「さ!行くぞぃ」
(待って!? マジでコレはホント待って)
逆お姫様抱っこを決められるもろくに動けず喋れずに
ドガン!
そんな事はお構いなしと、赤鬼は突き当りの部屋の扉を蹴り倒す
・・・
「お、お~?なんじゃ~こりゃまた」
赤鬼は周りを見回しながらゆっくりとジンを床へと下ろす
「ぜっ、ぜは ぜぇ こ、子供?」
部屋の広さは25メートルプール一つ分といった所
天井はガラス張りになっており、晴天の為か中はまるで植物園に迷い込んだかの様に暖かい
様々な花、植物があちらこちらに犇(ひし)めいている中、中央に子供が一人気持ち良さそうに眠っている
肩までの長さの緑髪、小学生中学年くらいだろうか、どこぞの巫女よりも一回り小さい幼女だ
綺麗な服を土塗れにしながら大口を開け、よだれ全開である
「お~お~お~可愛いのぉ」
幼女を見つけた赤鬼がゆっくりと近づく
(あ、そうだったねちっちゃい子好きだもんね)
「、、ってか前にも似た様な事があった様な気がしないでもないのぉ?」
旧王都でのワンコが赤鬼の脳裏に浮かぶ
「ま、魔力持ち、が はぁ はぁこの子 なのかな」
「ジン、、はぁはぁ言いながら幼女に近づくのはちょっとどうかと思うぞ?」
「今そういうんじゃなくね!?」
反応でツッコんだがその後しばらく咽込(むせこ)みました
その賑やかなやり取りで目を覚ましたらしく、幼女は寝ぼけた顔でカセンを見上げている
「あ~おはよう?で良いんかの」
見つめ合い、沈黙が流れた
(この子が吸血鬼って可能性もあるんだよな 確かに八重歯は見えた、けど羽とか生えてなくね? 急に襲い掛かって来るとかあるのか?)
やっと整った息を殺しながらカセンと幼女の様子を伺う
半目の幼女はカセンから目を外し、ゆっくりとジンの方を見る
(く、くるか)
のだが
何事も無かったかの様に再びうつ伏せになり、瞳を閉じる
「って寝んのかああああい!」
大きめな声で叫んだのだが、数秒もしないうちに可愛らしい寝息が聞こえ始める
「くはは、なんじゃあ 完全に二度寝しおったぞ」
赤鬼も赤鬼で緊張感の欠片も無い空間
その後も少し様子を見たのだが何も変わらない時間が流れた
なので二人は一段この部屋を出て東側へと向かう事とした
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