359 森人

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



3/6 20:10



カランカランカラン



「姫様は~ いい加減飲んじゃった?」

黒い方のエルフがドアベルを鳴らし外から顔を出す


「む、何かあったのか?」


「姫様なら「目、覚まして来る」とか言ってお風呂行ったよ? 見張りやるって聞かないんだよね」


「むぐむぐ  湯冷めするっつぅのになー」


座敷で武具の手入れをするマッチョと白い方

カウンターで皿とフォークを持ったギャル男


それと


「お金節約しないとだから~ってお酒飲んで無いんですよ? ジンさんが居ないと依頼の方は分からないですし」

厨房で鍋とフライパンを火にかけ温め直しているのはツインテール、、では無い、姉の方だ


順に聞こえた返答を頭で組み立て直し

カエデは一周見回してから自らの後ろへと首を振る


「王都方面から馬  結構高そうな鎧着た騎士がこっちに向かって来てるんだけど」


「こんな時間に? 一人か?」


「そう、護衛も居なきゃ荷馬車も無し」


「むっぐ、、王都で何かあったってか? 巫女様達からの伝達とかなんじゃね?」


「相変わらず単純過ぎ、それなら良い身形の者である必要が無いでしょ?」


「お、おん そっか、確かに」


「なるほどな、それで念の為に代表である姫様から指示を仰ごうとしたのか」


「そういう事、俺が対応しても良いんだけどお偉いさんならそういうのにも拘(こだわ)るかもだし  モミジならどうする?」


「私も同意見かな、手間だけど緊急だった場合に変な時間取られたく無いし」


警戒心の高いエルフだからというだけでは無い

男性陣と違い諜報員の様な動きをしていたからこその目利き

ディーン国で養った双子の危機回避能力は伊達では無い


「へ~、そんなもんかねぇ」


「はぁ、本当にスティルは  街とかに出ないで欲しい」

「ずっと森の中に居れば良かったのに」


「うおい悪口!」


「違うよ、これは」

「陰口」


「居るよ目の前に! ってか返答してんじゃん、本人居ない所で言ってこその陰口でしょうが」


「じゃあ願望」

「切なる願いだね」


「ヤメテ? 俺も傷付かない訳じゃないからね?」


「じゃれ合ってる所すまないがモミジは姫様を呼んで来てくれないか? カエデは外から帰ったばかりなんだ少し温まると良い」


「流石オルカ」

「気遣いの出来る男は違うね!」


「お前達もそういうのは良いから早く行け、俺は外で様子を見ておくとしよう」


大男は念の為にと

腰元へ手斧と短剣を携(たずさ)え、外套(がいとう)を羽織り扉に手を掛ける


「あ、待って?もう一つ!」


「む?」



「森が   騒がしいんだよね」



その一言、表情は今先程まで戯(たわ)けていたものとは打って変わり


鋭い眼光から緊張が伺(うかが)える


「、、分かった、注意しよう」


「気を付けて」


扉が閉まり

頃合いを見た厨房からカウンターに湯気の立ち昇るカップが置かれた


「暖かいうちにどうぞ」


「ん、ありがとう ケイちゃん」


「カエデさんもご飯食べちゃいますか?」


「姫様はもう食べてた?」


「いえ、ずっとお財布と睨めっこしてて  皆さんの分だけは一週間分程度の食費は頂きました、、けど、良かったんですか?」


「ぷ、ははは 良いの良いの、最悪姫様なら自分で何か獲って来るだろうし そのうち諦めて酒くれって言い出すよ」


「そうですか、ふふ それにしても皆さん仲良しなんですね」


「そう見える?」


「見えますよ~凄くチームワーク良さそうだなぁって  あ、スティルさんも一応『皆さん』に入ってますからね?」


「意外な所からの急な流れ弾!! ケイちゃんまで俺の事そんな弄り方しないで!?」


「愛されキャラってやつですよね?」


「コイツが?」


「コイツ言うな  あーでも愛されキャラってのはー」



ガタガタ バタンガタン  ドカン



「来たよ  ってかドカンって、、何したらそういう音出んの」


「モミジーちゃんと服着せた?」


「なんか一枚だけ落ちてるから多分」



「  はいてない  」



何処かの巫女が如く髪はびちゃびちゃ


だが衣類は着替え、終えた?エルフは後方からの声に顔を赤らめ


「お、おお おオー?」

自らの下半身に触れ確認する


「 あ え 」


「嘘嘘、ちゃんと全部着用してるの見てたんで大丈夫ですよ」


「 お おh」

「破れてたけど」


「え!?」

「嘘ですって  ほらっ、早く挨拶しないと」


「完全に遊ばれてんな」


「 お おえ お え、ら らら」

「横乳出てますよ?」


「らららら!?」



((( らららら )))



折角のシリアスな空気


緊張感はいつもの通り一瞬で崩壊した


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