358 迎合

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



3/6 20:05


「・・・で~そのまんまこんな感じなんでまだ王都にいるんスよ~ 外出て来たんで煩くしても大丈夫だとは思うんですけど~流石にさみぃっスね」


「ん、あ、あぁ そっかそっかー」


「あぁあ!その返事適当じゃないッスか? 聞いてます~?  ねぇ」


「聞いてる、聞いてるよ!? ふ、はは、ははは」


緊張の糸が切れ

ギルドの連中と何ら変わらない態度の声についつい笑いが込み上げて来る


「えー?なんスか? そっちでなんか面白い事でも起きましたー?」


「ん!あぁ、いやごめん 違くて、、」

(なんだかんだカセンなんかと変わらない、ちょっと変わった子ってだけなのかもしれない)


もしかしたら話し合いだって通じるとまで思えて来た


のだが


「えええまさかの一人笑いっスか!? ウケるんですけど~周りで誰か見てたらそれヒかれるヤーツですよ~? ってあああ!!そういえば夕ご飯食べて無かったわー、何か近くに売ってたりしないですかね~あ~でも今から食べると太っちゃうからプチ断するっきゃないっスね 逆の発想ってヤツ?凄くないっスか? でもマジでワンチャンありだと思うんスよ~」


それは間違いだと気付かされた


(つ、ついていけない)


若さか?若さなのか?

いや、違う だとしたらアルやラフィだって、、あ、いや、うん、確かにエルフの方はたまに話通じないけども

って!そうじゃなく、フレンドリーにグイグイ来るこの感覚は、、


ふと苦手な部類の人間、マッチョじゃない方の男エルフが脳裏に浮かんだ


(あっ!なるほど、そっち系って事になるのか)

合点がいった


盛られた髪


怖いもの知らずの様な立ち振る舞い


間違いない


この娘



ギャルだ



「っっておおおおっとぉ?やっば、もうこんな時間!」


「え?何?ここにきて使いたい放題とかじゃない系なの?」


「使いたい? ぷ、あはは、いあいあこっちの話っス、一応ミッションもあるんで」


「あ、ま、待って?あのさ」


「あーはいはいはい? あぁお話進まなかったっスね~」


あっけらかんとした声に被せる様


「なんで」






「こうなってんの?」






心中を突いた


バードマン達には追われた、なのにスマホまで充電して連絡を取れる状況にして来た

それにあっち側の筈が異形まで殺害した

、、考えれば考えるだけ聞きたい事があり過ぎる


とにかく 全体含めて

『そっち側』の事が少しでも聞ければと思ったから


そのままの言葉が出た


けど

「どうして、キミみたいのがさ 武器 とか 持ってんの?」


・・・


余計な疑問が先に零れたらしい

要らなかった言葉に少しだけらしからぬ間が生まれた


その後、冷たい、心無い声質で返って来たのは


「えーあーそういうのはちょっとーなんってぇかー  冷めるんスけど」

間の抜けた渇いた台詞



どうやら完全に機嫌を損ねたらしい



だが、今更質問なんて変えられず


「いや、だってさ!?何の為に キミらは何が目的なn」

「だああソコまでだ、うっぜぇし長ぇっつの! なぁおっさん アンタちょっとズレてやしねぇか?  コイツも若干ズレちゃいるがテメェの場合は甘ったれの綺麗事にしか聞こえやしねぇんだよ、交渉するならそっち側の情報から話すのが筋ってもんだろが?あぁ!?」




「敵同士なんだからよぉ」




若干震えた行き当たりばったりの質問は我(が)なる声に掻き消された


その通りだ


【あっち側の人間、なんだよね?】


【そうっスよ】


彼女の方もはっきりと返答していた筈だ


「敵 同士」

力無く、オウムの様に口が動く


「ハッ馬鹿か?流石におめでた過ぎんだろ、都合良く仲良しこよしでも出来るって思ったかぁ? 悪ぃがこっちにも色々あんだわ」


「お、お前らと キドナ?の狙いが違うって事か?  俺 の、賢者の石だけが狙いじゃないのか!?」


「カー、おいおいおいおい折角時間やってんのに疑問だけかよ? やっぱ馬鹿だなコイツ、、切るぞー」


「まっ、待って 情報って、俺からなn」

「あぁ!これだけは言っとくが頭の回る連中には言うんじゃねぇぞ? 接触し辛くなるからなぁ!?  良いか?これは警告であり、破ったとなっちゃあ」




「殺害予告になるって事を忘れんなよ?」




そして



通信が途切れた



脳裏に浮かぶのは

彼女が異形の止めを刺し、殺した風景


凶器


それは



レシプロソー  またの名を  セーバーソー



所謂、小型の電動鋸ってヤツだ


「、、はぁ、なんだよ、なんなんだよアイツー 折角のモテ期かと思ったのに」

何もかも分からないままの襲撃

それと事故の様な悪戯電話に歯を食いしばり


強がる様


「ジェーソ〇かよぉ」


管を巻き、冗談交じりにシケモクへと手を伸ばす






だが、分かった事が一つだけ






狙いは俺だけではなさそうだ


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