281 商法
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
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「も~いつまでやってんだか~」
ツインテールを揺らし小窓を開け、まだ素振りを続ける亭主に『聞こえる様』わざとらしく声を上げる
(そりゃあ? 反応しちゃったけど気にしてくれてんのとか知ってるし、そこまで 気にしてないっての)
困った様に眉を下げる
その顔を覗き込んで来た酔っ払いに気付き
「あ、あっいや!」
「アイヤー?」
「ちっがう!そうじゃない えっとあれほら、あれ、ジン! ジンの元気が無いんだよね」
自分の事を棚に上げつつも思ってた事半分が出た
少し顔を赤くしながら誤魔化そうと目線を逃がすのだが
「あ!にゃんにゃんだ~」
「嘘でしょ!?聞きなさいよ! ほんっとそういうとこさぁあああ!!」
気にする方が馬鹿みたいである
畳み掛けるかの様に
「むぁ? あぁすまぬぅ あっ!じゃあこれ、これを、、うっぷ 足しに してくれ」
エルフは胸元を大胆に開き、財布を丸ごと手渡す
すぅ
いつもの通りに
少女は大きく深呼吸をする
「現金じゃねえよ元気だよおおおおお いや!でもちょっとあってんだよなああああ」
小言を言う亭主の近くに居たのでお金稼ぎの件は耳にしていた
それだけに少し変わったツッコミにはなったが相変わらずのキレッキレである
「ちっがうの~! あ~なんだろ、違くはないんだけど~でも違くて~こういう直(ちょく)なのじゃなくてさ? ん~ んん!?」
ジタバタとする様に頭を掻き
少し飛んだ頭の友人に財布を返してからその後ろに自然と目がいった
閃いた
「アレだっ!」
声にエルフも振り向くのだが
そこにはいつも通りに従者が身嗜みを整え、少女?が髪を梳(と)かされているだけだ
「出来ました、うん、オッケーです 移動中寝ないで下さいよ?」
「ん、世界一可愛いシエル様の完成だな」
「 アァ、エェ ソウデスネ」
「あぁはいはい、可愛い可愛い じゃあ準備できたんならそろそろ行く?」
馬車の節約もあり、もう一人の亭主を含めた三人は今から王都へと向かう所だ
コウは自らの店へ
巫女らはここ一週間程の流れを王に直接報告する為である
準備を終え、店を後にしようとする三人の前にババンとツインテールが立ちはだかる
「待って待って! とくにシフ 待って!?」
・・・
「告白か?」
「何でよ! ちっがう!」
巫女の発言を即答するあたり言われる事は多少予期していた
柔軟なポジションにはなっているのだが
「あ、あのね? その えっとね その~」
「告白か?」
「だ~か~ら~」
自分もいけないのだがツッコミは欠かさない
「違うんだってば、あのね?さっきの さ? 櫛(くし)にね? ついた~髪の毛って~、、どうしてる?」
「 は?」
そりゃそうだ
それはそうなのだがそこは流石の従者
とりあえずに会話を汲み取ってみせる
「シエル様の髪の毛ですか? えっと、柔らかくて綺麗なので欲しいのも分かります、分かりますけどダメですよ?漁って拾ってでもしたら刺されかねえっふあ」
説明半分に、前方向からの肘鉄が腰骨辺りに入った
「なんだ?私は呪いでもかけられんのか?」
転がる従者を無視して少女?が無表情に問う
「違っ、ってか呪いかたなんて知らない」
「だろな 何狙いだ?」
望んでいた返答な訳も無いのでさっさと言え的な圧が凄い
「あ~、えっと~人形をね? 作りたいな~って」
「、、は? んなもん自分の毛ぇ使えよ、ってかそっちの金髪で十分映えるだろが」
後ろでふわふわと揺れているエルフを指差す
「む~ん?」
「待って!それだとあたしの毛は映えないみたいになってる!? あ~いやそうじゃなくて ね? シエルの人形を作りたいの」
「やっぱり呪うのか」
「違うってばぁ聞いて!シエルってさ、ほらお人形みたいじゃない?だから王都でも(聖堂エリアでは)人気なんだしさ」
「あ、ああっ、それはかわいいなぁ、ちょっとデフォったら」
「デコったら ね!? ちょっとラフィは黙ってて、そうシエルのお人形作ってデコったら人気出そうかな~って」
「売る気かよ」
「いや~ま~その~ね? お金の為に?」
「本人目の前にしてソレ言うか?」
「そっか、分かった! 抱っこして寝る為だから」
「何が分かったんだ、会話下手かよ もし本当だとしたら狂気の沙汰だろが 考えてもみろ、自分の人形抱えて寝てる奴見たらどうする」
「デスヨネー」
「、、はぁ、おいクソ亭主」
ツインテールを除(の)け入口の扉を勢い良く開ける
「へ? え、何 どした、、あ、出発の時間か」
木剣を納め、手を叩き汗を拭う
「てめぇんトコの若いのが金欲しさに怪しい商法始めようとしてんぞ、めんどくせぇさっさと話し合え」
少しじれったい兄妹の様な喧嘩
今回は珍しく気を使った巫女によって強引に幕開けとなりそうである
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