306 供養
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
2/26 15:00
「良かったのですか? 魔宝具の件」
従者は後ろを歩く王へは聞こえない程度の声量で問う
「ふぁ~ぁ? あんなの聞いたんじゃ作らせる訳にもいかねぇだろが」
自らの分を食べ終えた少女?が欠伸(あくび)をしながらも面倒そうに声を上げる
一行は一頻(ひとしき)りの情報をドワーフ王へと擦り合わせそのままの流れで再度ドラゴンの元へと向かっている所だ
前々日からの影響は然程(さほど)残っていなかったのだがバルだけは宿にて待機となっている
魔物の討伐は終わっている上規格外の赤鬼が念の為向かう訳だ、心配は無いだろうと思いながらも何処か面目なさもあったのだろう
「荷物持ちは多くいた方が良くないですか?」と伺いを入れた瞬間即座に睨まれ
「良いからお前はさっさとソレ(ドラウプニル)使える様になれっつの、手段の模索でも良いし暇なら練習でもしてろコラ」と吐き捨てられた
まぁコレは不器用な巫女の気配りといった感じだ
なのでメンバーはカセンを筆頭に包帯まみれのギン、シフとシエル、最後尾に王となっている
到着までの雑談、、と言う訳でも無いので従者は真剣な表情で話を続けた
「ですが王に伺いを立てたところ多少素材の在庫はある様です、今回の件も踏まえ褒美としてでも加工してもらう事を視野に入れてもぅぎゃあ」
目線を合わせる為に腰を屈(かが)めていた所、鎖骨部に巫女の親指が入った
「馬鹿か? 残りは次にドワーフらが必要になった時に深い考えの元使えば良い、ましてや二度と作るなっつっといて自分らには作ってくれとか虫が良過ぎんだろが」
巫女は従者に持たせている袋を奪い中身を取り出すと口の中へと勢い良く放る
「むっぐむっぐ 本来無い方が良い物ってのが分かったんだ、今ある必要最低限を注意して使えば十分だ」
「ふぃ~う~ん、シエル様の考えは分かります それでもお言葉なのですが今後どんな怪物やら魔族やらが出て来るのか分からないんですよ?」
「んな事分かってるわボケ!殺すぞ? そんときゃそん時だ、てめぇは殺る側じゃなく私を守る側 んな事考えなくて良い、それに、、」
先頭を歩きながら飲酒を始めている者に目線を移す
「何か気になる事でも? あ、乾燥わかめは大量に食べ過ぎないで下さいね?膨らみ過ぎて大変な事になっちゃいますよ?」
「いや、何でもねぇ 飯 てめぇの分が余ってんだろうからよこせ」
袋を乱暴に返しもう片方の手を広げる
「はぁ、なんでそうなるんですか~」
従者は困った表情を見せながらも
あまり美味そうでは無い王からの差し入れを小さな掌に乗せる
そのまま暫く進んだ一行は
衝撃的な光景に立ち会う
「あっ、あぁっはああああああ おぉおおお! んぐぁ」
驚き、たじろぎながらも歓喜の様にも聞こえる奇声をあげているのは包帯だらけの男だ
見かねた赤鬼が腹に足を入れ、そのまま軽く踏み込んだ
「こりゃひっどいのぉ どうじゃ?治せるか?」
「、、駄目だ、辛うじて意識はあんのかもだが治癒は間に合わねぇな、もって数秒って所だろうよ」
巫女は切り裂かれた傷部分を確認し声を上げる
「そうか、龍よ 逝く前に答えい」
赤鬼は開けてある方を呷りながら新しい瓶を幾つか開け、近くへと寄る
「やり残しは無いか?」
倒れ込んだドラゴンの大きな口元
そこから出た舌先へと酒を染み込ませる
「あぁ」
「ふむ 折角じゃったのにのぉ残念じゃ、もし黄金が消化しとらんかったら一緒に埋めてやるから心配はいらんぞ」
「ふっ ふふふ 流石に 懲(こ)りた、腹の中から出たのなら 適当に使って やってくれ」
「殺った奴は知ってる奴か?」
「知らぬ連中だ 狙い も分 か ら 」
・・・
「逝ったか」
手持ちの物を全て流し終え衣類を軽く叩いてから立ち上がる
「『連中』って事は複数人いたんですね、血液の乾き方からしてもう間に合わないでしょうが今からでも調べておきましょうか?」
従者は荷物を一度置き、外へと通じているであろう方向、龍の塞いでいた穴の方を見る
「あ~まてまて、とりあえずおっきい穴掘るか焼いてやるかの準備せんと、、大物じゃからシフは王と戻って人員確保してもらっても良いかのぉ」
「なるほど そう、ですね分かりました、、が彼はどうします?」
赤鬼の指示に頷(うなず)き、一度主の思考する表情を確認してから包帯男をちらりと見る
「なんか知ってそうな反応じゃったから残していって構わんよ、なぁに取って食ったりはせんから王も心配しなさんな」
眉を下げながらにししと笑う鬼を見て
王も悲しそうに
無言で首を縦に振った
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