54 魔族

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



8/20 4:35


「そうじゃの、港で襲って来た連中も顔見知りじゃと言うとったしの そこでじゃ」

赤鬼はにしししとたくらみ顔をする


「え、何ですか?」

バルはそれを苦笑いで返す


「カカカなぁ~に、簡単な事じゃよ あの町であっしは『名前』を名乗っとらん」


「え?」


「それにのぉ、その時一緒にいた行商の兄ちゃん、リッツとか言ったかの この前ここに食材を持って来たらしいんじゃが『もっかい来る』って言ってから王都に向かってまだ来てないんじゃよ」


「は、はぁ」


「遺跡の方に行くならもう一回ここを通るじゃろうしのぉ」


「そうです、けど?」


「あ~、後は『港で活躍した英雄達』はギルドの者ってだけで巫女も名乗っとらん」


「え、、、えっと?」

バルは目を瞑り頭の中で一度話を組み立てる












「話が飛び過ぎて、、もう少し分かりやすく説明してもらえませんか?」


「おおおお!?」


カセンはもう一度丁寧に説明を始める



暗殺部隊を送りましたか? と言われてもYesと言う者はいないだろう

要するに 白を切る 正体を明かさない場合は



名前を言わせてしまえば良い






8/20 9:50


「あああああ!くっそが!! もぉめんどくせえ!」

代理の男が急に発狂し始めた


その迫力に


「わわっ」

モニュメントで遊んでいたツインテールの少女が尻餅をつく


「何? 別に俺は知らないって言ってんだろ? なんだよ?なんなんだよ!! 巫女?いたんでしょ?港町に!!」

錯乱  と言うよりは激怒 周りの石柱を蹴りつけている

「あああああ! もうああああああああああ!!」



「うえぇ ねぇ、アレヤバイんじゃない?」

アルがバルのズボンを引く


「危ないかもしれないから少し下がってて」

バルは男から目を離さず身を構える



「あああ、いいや もう!いい! はい! ああああはい!!」

男は遺跡の奥へと走りだす


(、、どうする? 追うか  いや、町で待つか)


奇怪な動きを警戒すると足が前には進まない


様子を伺い



男が角まで走り終える と



「え」



壁に頭を打ち付け始めた



!?



「くっそが! めんどくさいめんどくさいめんどくさいめんどくさい あああああめんどくさい」

男の額からは血が噴き出し、口からは軽く泡の様なものが流れている

「あああああああああああああああああああ!  もおおおあああああああああああああああああああ」



「ちょちょちょちょ! アイツアタマオカシイでしょ 怖い怖い怖い」

アルがゆっくりと立ち上がり後退りをする






しばらくすると男の動きはピタリと止まった


「あ~、なんでだよ、うまくやってたそうだろ?なんだんだよ、あ~もう良いお前らさ~もう良いよ、殺すわ食べるわ」

ブツブツと独り言を繰り返す足元には血溜まりが出来ている


そして



男の首『だけ』がぐるりと回りこちらを見る




!!?



バルは腰元の剣に手を伸ばし


アルも咄嗟に身構える


ラフィは


「ひっく」


しゃっくりが止まらない













ビュン!






「あが」

男の頭部にラフィの放った矢が刺さる



ビュン! ビュン!! ビュン!!!


容赦無く連射された矢は

口、喉、心臓部へと突き刺さった



「ひっく」


「えーーーー、、涼しい顔して」

アルがラフィの横顔を覗き込む


「む?」

何の事は無いとばかりにエルフは軽く首を傾げる


「アレは異形、、とは違うのかな」

バルは念の為剣を抜きまだ身構えている


「私は前に  子供の頃に一度だけ、あんな感じの者に遭遇した事がある」

エルフのしゃっくりは止まった様だ

「あれは、恐らくだが『魔族』と呼ばれる種類だ」




魔族

高い知識と魔力を持ち、人になりすまし生活をしている

確認されている個体があまりにも少ない為情報が少ない

彼らは人を食う、と言われている








「ごご お!  おあおああああ!!」

急所を貫かれ壁に貼り付けられた男の手が口と喉の矢を引き抜く

「クソエルフゥウウウ!」


「えええ、アイツまだ生きてんの!?」



ビュン! ビュン!!  



ラフィが放つ矢が今度は両腕を貫通した


「ぐ! が」

男は再び壁へと貼り付けられ動けなくなる


「魔族用に持って来ておいて良かったよ」

ラフィは腰袋から小瓶を取り出すと矢じりに液体を垂らし

「早々に消えてもらう」



ビュン!



「ごがあ くそ、こんなものおおお」


液体を帯びた矢が男の腹部へと刺さると



ボゴン!!



勢いよく破裂した


破裂した衝撃で貼り付けられていた壁は砕け男は仰向け?に倒れんだ

と同時に様々な角度から臓物が巻き散らかる


「うえええ、何あれえええ」

ツインテールが苦い顔で悲鳴をあげる


「ふぅ、すまんもう少し情報が欲しかったとは思うのだが、、魔族相手では躊躇していられなくてな」

エルフの姫は長い髪をかき上げ、何処か悲し気な表情を浮かべた


「凄まじいな、今の液体は? 聖水とかそういう類の物?」

青年は剣を腰元へと納めエルフの方を見る


「いや、バァ様から頂いた薬品でなニトr!?」

ラフィが何かを確認する

「!!     まだ生きている!    二人共 外!」







叫ぶよりも前に


足元の床が崩れ始めた


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