386 処世
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
3/7 13:30
「わぁ~髪との色合いも丁度良い、お姉さんすっごい似合ってる!可愛い可愛い」
お世辞では無いからこそ
「こっちも良くないです?中々渋めの彩色なんですけどソレと合わせると ほら!しっくりしません? ね~ですよね~」
やたら口が回る
それもその筈
態々(わざわざ)コレを武器に生きているんだから使い時も分かって来る
「絶対他のも似合うから是非また来てね~新作も出てたら幾つか発注しておくから うん、うん、はーい、ありがとうございました~」
だって
生きる為に自分の武器を磨くのは普通の事でしょう
例えば此処
平均より安価な大人可愛い服だけを置いている服屋さん
場所的にメイン通りからは少し逸(そ)れてるし店舗幅も小さい
だからコンセプトは自然と絞ってる、品数量が乏しいのはしょうがないんだ
ソコソコ続けてるから通ってくれる顧客も安定して来た
良い人、いや、普通のお客さんくらいならこっちの入り方次第で印象なんかどうとでも変わる
言うなれば、何とでもなる
コミュニケーションが必要な仕事は『動き』だけで十分読めたりするから尚更
耳の良いあたしには向いている処世術なんだけど、、
「あ、ありがとうございました」
その声に少し遅れて店の外からも
「どうもありがとうございました」
深々と頭を下げているのだろう
徐々に小さくなる筈だった声
それは元気にしっかりと
「またのご利用をお待ちしております!」
店内にまで届いた
「ぉぉう、弟君、それって店長の教えかなんか?」
店の主はいつもと違う服装でゆっくり顔を出し
苦笑いを浮かべる
「す、すみません、多分いつもの癖で」
続けて申し訳無さそうに当人の姉が声を上げる
「え?駄目 でした?でも今出てったお客さん笑ってたけど」
勿論悪いって訳では無い
悪くは無いのだが
「此処ってカジュアルを売ってるからさ、ちょっとなんか似合わない言い回しかな~って」
良くも無い
まぁ
ソレだけじゃないんだけど、、
此処は王都の中心部から少し南東方面に位置する場所
兎耳店員が経営するアパレルショップだ
何故、どうしてこうなったか
事の顛末(てんまつ)はと言うと昨晩の事
避難した先、城前の野営場では軽い揉め事が発生していた
火の種は些細でありながらも重要でいて簡単な話
「逃げ遅れている者への救出活動が優先されていないのでは無いか」と
被害の大きかった者達が不安の声を上げ
把握来ていないにも関わらず貴族連中が適当な事を口にしたのが原因だ
今、誰がどう動いているのか
(生きる事に慣れていない者達に分かる筈も無く)
意味の無い堂々巡り、埒(らち)の明かない問答は数時間
疲労の溜まった銀髪少女?が城から出て来る深夜まで続いた
思考を止めた者は怒鳴り散らし
愛想を尽かせた者が悪戯に責任と言う言葉を擦る
挙句
負傷者の亡骸を連れ訴える者まで
(反吐が出る)
溜息交じりに姉弟の腕を引き
連れて来たのが昼の店って訳
(それにしても)
「昨日あんな事があったのに二組目、こんな日でもお客さんって来るんですね?」
「んーいや、正直私もそう思ってる、でも多分今来たお姉さんはちょっと特殊な気がする かな」
「それ俺も思った! 一緒に居た格好良い兄さんの口調とかでしょ」
「コラ!」
「え、あ、えっと 思い ました 口調とか ですよね」
素直に言い直し頭を下げた弟君だが
「言い方じゃなくて、、いや、マーヤさん相手だしそこもなんだけどさ?」
まだ偏見を理解するのには難しい年齢なのだろう
「でもデカかったし声も女じゃなかったよ?あの人」
ここでも話が進みそうに無い
・・・
「あ、でも良かったんですか? その前に来た小さい子」
「そうだよ、マーヤさん昼夜働いてるんだから金無いんでしょ?」
「ぉぅいコラ余計なお世話!」
「欲しがってたんだから売っちゃえば良かったんだよー」
「う~ん、うちさぁ、規模狭いから小っちゃい子の服取り扱いして無いんだよね」
「でもあの子、お土産だとかお見舞い?とか言ってましたよ?」
「ほら、サイズ分かんないって言ってたし 返品されるのも何だしね~」
何かをする時には必ず軋(きし)む骨の音
その『動き』だけでも種類がある
更に交わる微かな呼吸音、、
(自信はあったんだけどなぁ)
今回読み切れなかったからまだまだって所なんだろうけど
銀髪少女?の為に小さなサイズも発注すべきか迷う所だ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます