173 煙火
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
2/10 22:20
「お~なんじゃありゃ?」
先に勝手口から飛び出した赤鬼が空を見上げている
「な、なんだろう 火、かな?」
入口側から一番に出たバルも同じく空を見上げている
その位置、方角、明かりが灯っているのでディーン王国付近であろうか
「良かった、敵襲と言う訳では無さそうですね」
従者は一通り周囲を見回し警戒を怠(おこた)らない
「え~何!? すご~い、綺麗」
「おおおなんだ?みころの、あれは、魔法なのだろうか?」
「いや、あれは」
つい声が出た
ドン!
バーーン!!
鳥肌が立つ
空に撒き散らばったソレは良く知る色取り取りの物では無い
チラチラと眩しく発光しているだけだ
形も決して綺麗な円形でも無い歪(いびつ)なソレ
大輪が
夜空に咲いている
「距離があり過ぎるので正確な情報か不安なのだけれど破裂音と煙、火薬かしら?過塩素酸カリウム、マグネシウムやアルミニウム、成分としては金属それと、、、」
ドールは説明、する訳では無い
ブツブツと一人で喋りながら目の色をカシャカシャと変えている
「種類としては発煙筒、救難信号かもしれないわね」
「ぶふっ! ははっ違っ違うよエバ」
悪気は無いのだが聞こえた素っ頓狂(すっとんきょう)な言葉に吹き出した
いや、使い方としてはそう使う場合もあるかもしれない
だがこう何発も打ち上っているんだ
「た~まや~、あっはっは、た~まや~!」
「た、た~ま~や?」
「か~ぎや~」
「かぎ!?」
一人嬉しそうな亭主が不思議な呪文を叫んでいるのをエルフが真似し切れずにいる
コレはきっと、あの青年
俺と同じ、転生者からの
贈り物だ
無事で居てくれている、それだけでも今は・・・
季節外れの空に咲く花は何千、何万発なんて物では無く、直ぐに儚く消えた
そして
「ボリボリボリボリ」
不器用な思いも、小さな口の中へと消えた
店内に戻った一同
何やら機嫌の良い亭主の奢りで酒と料理が振舞われた(本当は明日用に仕込んでいた物だが)
「あれ?シエル様くれるって言ってたのに食べちゃったんですか?」
とか聞いた従者にはいつも通りの鉄拳が飛ぶ
「こ、この時間に食べちゃうのはなんか背徳感があるね」
目の前に置かれるご馳走にツインテールが喉を鳴らす
「ぁ?じゃあ分けたら良いじゃね~か二人で分ければカロリーは、、ほれ、むぐむぐ 十分の一くらいに」
「ならないから! それシエルがほぼ食べちゃってるから」
ナイフとフォークで切り取られた部分からは肉汁が流れる
「ね~なんでさ~シエルはそんなに食べて飲んでるのに太らないの?」
「むぐむぐむぐ、、はっ、ふとりて~もんだわ」
流石のゲス顔である
「カセン殿、私の正義はその、偽善なのだろうか」
「お~お~急になんじゃあ?」
こっちはこっちでなんかめんどくさそうな話をされている
「ダーインスレイヴ、この剣なのだが」
日々可愛らしさがグレードアップしている大剣を撫でる
「もはや呪われた物には見えんのぉ」
「アルがやってくれているんだ可愛いだろう?」
「お?おん」
(これは、軽くおちょくられとらんか?)
赤鬼は苦笑いを浮かべながら瓶ごと呷(あお)る
「『あの時』はコイツを抜いていなかった、、変な感覚はあれ以来無いのだが、もしもを考えると不安で」
「ん~む、そうじゃの~確かに急に襲い掛かって来られたら困るのぉ」
「依頼での戦闘でも仲間、バルと距離は取っているのだが」
「あ~それでか、最近全然別方面の魔物から相手してるのは」
隣の王子も話に参加する
「おいまて、『あの時』ってなんだ?」
銀髪少女?も自分の分を平らげフォークを片手に参戦だ
『あの時』
ブッチャーを殺害した時の事をラフィは言いにくそうにしていたのでカセンが代弁した
事細かに、詳しく
・・・・・・
「ちっ、なんですぐ言わねぇんだ」
「、、すまない」
「思い出させたくなかったんじゃろ?」
赤鬼自身も思い出したく無いのだろう、眉を下げ新しいモノを取りに向かう
「ちげぇそっちじゃねえ」
ラフィの膨(ふく)よかな胸に手を置く
!?
「な、ななnみ、巫女ど」
「こちとら専門家だぞ」
申し訳ない気持ちがあるのだろう
少し悲しそうな眼を閉じ、詠唱を始める
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