375 消音
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
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「ど、どうしよう?」
「駄目!駄目だよぉ死なないでっ」
「死んじゃ嫌ぁぁああ!!」
なんて
何処ぞのヒーローや勇者がピンチの時
ましてや死ぬ手前の感動ボイス
そんなものは一切聴こえる筈も無く
「あぁ~くっそヤロ、、痛ぇなぁちくしょうが」
ワンパクを極めた様な格好だ
葉だらけ且(か)つ泥塗れの
血だらけ
命、いや、中身が無事なだけでも贅沢過ぎるってなもんだ
天狗はマシンガンの様に飛び交う凶器を払いきれず 墜落した
そして今も
「相手を選ぶんだな!我らをたかが一人で相手出来ると思ったか」
頭上を如何にもな刃物が襲う
「あっぶ!」
間一髪転がり
尚更汚れた気がするのだが暇は無い
「バードマン風情が、舐めるなぁあ」
二撃目の蹴りを
事故らない様にと瞬時に集中
腕と肩で威力をいなし、反動を逃がす様そのまま反転
した所からの宙返り
続けて別の手が迫り来るであろう事を予想し感覚回避のバックステップ
そろそろ自分でも折り畳んだ翼が邪魔に思えて来る
「ちっ、ちょこまかと、、鳥野郎 森での戦いに慣れてやがるのか?」
「あ~? へへっ、あぁ、まぁエルフさんらや」
「何年も隠れ住んでた負け組吸血鬼なんかよりは慣れて無ぇよ」
「貴様ぁ!」
挑発した瞬間に声がした
が、そんな事よりも右方向からの投擲、後方からの刺突
それらを躱し転がる様に全力で距離を取る
「ふん、言わせておけばピーチクパーチクと、、」
「直撃は何一つしていない まだ飛ぶぞ!」
「いや問題無い、飛ばせてしまえ」
ギラギラの赤い目を輝かせ、連中は好き勝手言う
ので
「ははっ、それはそれは っ! へっ、ありがてぇ、そういうの気にしないんでね 遠慮無く」
「 上の方が目立つからな」
重い声、それとビュンビュン飛ぶ鉄板を刀で払い一度だけ周囲を警戒
確信を元に破れた羽を動かし
「自分らの事しか考えて無い様なテメェら、、へっ うちのジジィ連中とも被るがな」
見ろ!とばかりに
「未来に何の責任も持たない年配者共が 殺してやるからこっち見ろやぁ!!!」
再び月明かりを浴びる程に上昇した
「馬鹿がっ!そんな高さで良く吠える」
「貴様は吸血鬼と言う存在を良く知らない様だな」
「穴だらけにしてやるよ」
残り一人も何か言っていた気がするのだが
それよりも先に
行きつけている呑み屋の嬢ちゃんから出た台詞
ポロっと理を突いた言葉が頭をよぎった
白装束
【汚れも目立ちそうだし】
【なんか意味があるのかな~って】
・・・
「そりゃ~」
「目立つからでしょうが」
群がるコウモリ共
ソノ凶器が喉元に届く前
「夜型なのはさ」
「吸血鬼だけの特権じゃね~んだぜ?」
音も無く
影から少女達が姿を現す
「ふぇえいギリッギリ ギリッギリだぁ、もう音出して良いんだよね?」
「はい、大丈夫です、こっちも仕留めました~ のでおやつを頂きます」
そして一匹一匹が連中以上に好き勝手
「こっちも問題無いけど、、泥が跳ねてムカつく」
「木陰の奴だけ距離あり過ぎ 声上げんの早いよ!」
ニャーゴニャーゴと声を上げる
ごろんと転がった遺体は喉、脳、心臓部
全ては急所を一突きという必殺の一撃で沈んだ
その手に装着した毒手で
※猫手:指につけた形が猫の爪に似ている事から猫手と呼ばれる暗器
実際に存在する
「あいあい、ご苦労さん、流石ネコ科!羨ましいったらねぇよ いっつつ、だけどな~もうちょい早く来てくれてたらな~」
傷だらけで降りて来た天狗
「間に合わなかったら一生バカ猫呼ばわりしてやろうかと思ってたんだぞ?」
その冗談に
「はっ?!」
鉄拳からの
「ナニソレ」
手刀
しょうがない
「ぬううおおヤメロぉ マジで せめてその爪だけは外して、すいませんでした」
「むぐむぐむぐ 隊長も肉球付けたら着地音とかもっと消せるかもですよ」
「そうだよ、気配とかはー静かにーってやったら大丈夫だから!」
そんないつも通り
「お~い、終わった~? 持って来たよ~」
「あ、じゃんけんで勝ったお気楽さんだ」
「そう言わない、油って重いんだよ? この量だし」
「処置がコレであってるか分からないけどな、一晩経ったら捥(も)いだ腕でもくっつくって聞くし」
いつも通りの表情で
孤高のヴァンパイア達を火で炙る
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