324 苦渋
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
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「あーあーあー あぁ~あ」
黒髪黒眼の純日本人 亭主の新島 仁 (にいじまひとし)三十路
通称ジン
、、では無く
ツインテールの少女がキッチンで眉を下げている
ここはしがない喫茶店
店名は「ギルド」
カウンターの端には可愛らしいクマと兎のぬいぐるみが仲良く並んでおり、その隣には誰かが端材で作ったらしい小さな棚が設置されている
ファンタジーな本が一冊、それに続いてグリモワールやらネクロノミコンと書かれた日記帳が数冊
季節はまだまだ冬
と言うか
森から帰って数日、七章の始めから数えても三日目だ
なんてメタってる暇も無く
三十路は忙しく手を動かしつつ原因を見る
「いやいやいや「あぁ~あ」は俺の台詞だわ! もったいね~な~」
昼食用にと握っていた物を一旦皿へと置き
「あ~あ~こんなに溢しちまって~」
少女の足元にしゃがみ込む
そこにはまだ火の通りきっていない適当なサイズに切られた野菜達が盛大に撒き散らかっている
「ジ、ジンだって昨日焦がしたじゃん!」
咄嗟にスカートを押さえ、厨房内の地べたに手を付ける亭主から目線を逃がす
その先には
「ん!」
おかわり、、では無くソレをよこせとばかりに皿をカウンターに置くのはロリ巫女だ
「ん!じゃないでしょ」
「 おかわり」
「なんでいつも通りやればオッケーみたいになってんの? 駄目だって、落ちたの使うとジンが怒るもん」
「まだ食える」
断固引かず
亭主が見える位置へとに乗り出し手を広げる
「え!?いやマジで飲食店としては失格なんだけど、、ん~あ~じゃあロゼーこれも水洗いお願い」
(せめて素揚げにでもしてやるか)と亭主は手早く笊(ざる)に移してから洗い場の方へ声を上げる
「コレやったら行くのよ~ 全くもう!朝から人使いが荒いのだわ! あ~忙しい忙しい」
次の料理用に芋を水洗いしているだけ
正直それ程の労働では無いのだが一丁前(いっちょまえ)にやってますアピールを醸(かも)し出している
「お、おん ありがとな~ ってかアルお前さ、無理に鍋振りなんかしないでも良いだろに」
「だって~」
「あっはっは、でもそういうのが出来ない系女子も可愛くない?」
余計な事を言いながらも二つ目の生地をこね終わったらしく
休ませておいた方を整えてから焼きに入ろうとしているのは魔女
いや、シャーマンだ
「可愛い ね~? いや、でもこの状況とは違くないっスか? まぁ言いたい事は分からなくも無いですけど」
「えええ!それはそれでヤダよぉ、なんかラフィみたいじゃん」
(オイおまっ!一応その人育ての親だかんな)
「え~駄目か~? でもラフィ可愛いでしょ~」
「、、ま、まぁ 可愛いとは思いますけどぉ」
(あ、そんな感じ? 両者そんな感じだ!?)
「もしかして私を呼んだか?」
今しがた換気庫(かんきこ)から戻った族長が勝手口から入って来た
「ははっ!噂をすれば~ ってぇ!!?」
「え」
「うわぁあ、ラフィ!あんた何したの!?」
「む?」
「む? じゃないよ!なんで分かんないんだよぉ! あ~ケイっ タオル、タオル持って来て!!」
ツインテールが手招きをする
のだが
「うわっ、、いや、タオルって言うより お風呂~沸かします ね?」
苦笑いを浮かべた姉は手隙そうな青年を突いてから防寒具を羽織り
正式な入口から外へと向かう
「えー、なんで朝からそんな事になっちゃってるの? ってぇ!!入って来ちゃ駄目だって!なんか垂れてるじゃん」
上手い事パスされた青年は嫌々ながらに駆け寄るとエルフに触れ、扉の外へと追い出す
「むぁぬっなんだバル!? コレはオルカ達が水汲み時に見つけたらしくてな?食べれ、美味しいんだぞ? 次のは今スティルに分けてもらってるから まずは コレをだなぁ~」
エルフの声が遠退いて行く、、
(バル、本っ当助かるわぁ)
ジンは裏口付近に零れた粘液の様な物を雑巾で拭き取ってから窓の外を見る
「みんなタフだよな~」
本日は動くのに最適な感じの健やかな天気だ
いや、まだまだ暗いので良い天気になりそうと伝えた方が正しいだろうか
決まったのは昨日の晩
今後の方針、話が固まってから早々に編成が組まれた
確定させたのは勿論ロリ巫女、、それと
「カカカカ、なんじゃ朝からぁ んっくんっく、くぁああ 元気じゃのぉ」
「オマエモナ」
お酒の神様である
だけど、正直
凡人の意見なんざ役立たないだろうし、しょうがないんだろうけど
ましてや駄々をこねるとかってつもりも無い
うん、、そう言うんじゃないんだけど
しっくりこないんだ
友人が
キーロが生きてるかもしれないって言うのに
理解が追い付かないからなのか
利口な脳の優先順位に今も納得がいかないでいる
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