141 叙説
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
12/13 23:50
「お~しかし、なんでこんな文章思いついたんじゃ? あの頃にゃ破滅だかの話やらキドナを警戒するもなんも知らんじゃろ?」
「あ、確かに」
インパクトのある最終文章で流してしまう所だったが赤鬼の言葉にハッとした
ディーン王国にキドナと言う人物がいる事も知らない時期
ましてや
今ここにいるメンバーはエルフの森に身を潜めているバル王子の存在を知らない
「あぁ何も知らなかったさ」
そう
彼女は知っていて記載した訳では無い
「速攻で族長のラフィにぶち当たったのはラッキーだったみたいだがな 言ったろ? そもそもこの手紙で重要視してたのはアイツ(バル)がエルフ達と出会った時に殺されない事だ」
「ほ~なるほど? 前半の方があてずっぽって事かの」
「ん? ちょっと何言ってるか分からない、シフいつもの頼んます」
考えを放棄したり茶々を入れたい訳では無いのだが、この子達の脳に付いて行ける気がしないので早々に先生を呼ぶ
前に
「下っ端除けって事?」
アルが早押し問題を解くかの様に前に出る
(あれ、うそ!?分かって無いの俺だけ?)
「お~凄い、まぁそういう事ですね 偉い人達であればすぐに手は出さないでしょうし」
従者が苦笑いで俺を見る
「え、どゆ事?」
それでも分からない三十路に対し、未成年が得意げに説明を始める
「だってさぁ~、バルが森に入ってエルフに会ったら戦闘になっちゃうかもしれなかったんでしょ? じゃあまず誰かしら下っ端の人にバッタリ会うじゃん、怪しくないよ~って手紙を渡すじゃん? そしたら中身確認するでしょ? こんな文章書いてあったら持って来た人をそんなに簡単に殺さないでしょ?」
(その「え~、ジン分からないの~」みたいな顔ヤメロ)
「異形と第一線張ってるのも下っ端連中だ、もしかしたら救世主なんじゃね~かと勘違いもするだろうしな 一つでも当てはまってればまずは上に渡す、前も言ったが森にも異形が出ているから本来私達は森に向かう途中だった訳で、沸く頻度が増している事なんてのは知ってたんだよ」
巫女も得意げにハハン?と言う表情を見せつけて来る
「あっはっは、頭働かせるのにジンも酒飲んだら良いんじゃないかの」
(確かに飲み過ぎなきゃ集中力上がるけども!)
「いや!けどさ? こっちは?」
【ディーン大国との間、もしくはその地域で何か揉め事があったりしてないか それと、、バルと言う者が関与していないか】
こっちの文章の説明もお願いしたい所だ
「、、はぁ、本当に何も考えない頭だな? 教えてやるから肉でも焼けよ」
「え~、こんな時間から肉~? でもこっちはアルも分かってないよな! え~っと~、、コレデカンベンシテクダサイ」
グサっと来たのでアルを盾に使いつつ、渋々と棚から干し肉を出す
「ちっ、この文章はなぁ下っ端エルフ達が見ようが関係無い、アイツ(バル)へのメッセージになる様に書いたんだよ、、まぁ取って付けた様な文句だが」
奪うかの様に掴むと早速齧り出し、少し上機嫌に話を続ける
「私は『バル』って名前を聞いた時から怪しんでたからな」
「なんで?バル第一印象良いじゃん」
(よしよし、アル その調子だ)
「『バル』って名はディーン王国の王族 王子その者の名だ、この辺の一般人が名乗る事なんて普通しない、、特に、この王子の名前はな」
「え~なんで~」
(妖怪なんでなんでかな?)
「あそこの国は10年前【王は暗殺され 王子は誘拐された】って噂が出た事がある」
これはシエルが港で読み漁った過去記事の事である
「、、この意味は分かるか?」
(あれれ、アルには疑問形で聞くんですね? はい、そうですね)
「う~?何となく、不謹慎と言うか~不安材料? 疑われちゃうとかそういう う~ん、、あ!」
何かを閃いたと同時に巫女が話を続ける
「だからもしアイツ(バル)が手紙の封を開け読んだ場合【バルと言う者が関与していないか】と言う文、それと最後の脅しの様な文、コレはセットになっているって訳だ」
「そっか、噂じゃなくて本当の事だったら、、なるほどね? バルが関係してるかもだけど 読んじゃった、けど怪しまれてるって解釈するかもだ?」
「そんなトコだ、結果そこまでの意味は成さなかったがな」
「すっご!やっぱりシエルって頭良いんだね~」
展開早く、会話をバッツリと切った様にキャッキャと燥(はしゃ)ぐと自分より幼く見える巫女の頭を撫でまわす
「はっ、誰だと思ってやがる」
シエルも恐らくもう慣れてしまっているのだろう、嫌がる素振はおろか抵抗すらしない
それを眺めながら従者も手酌でお酒を飲んでいる
平和だ
赤鬼も長い髪が良い感じに渇いたのかバスタオルを座敷へと放り投げ、新しい酒樽を物色しに保存庫へと向かう
自由だ
ソレらを眺め
しばらく経ったのだが
「俺だけおいてけぼりじゃね?」
本来質問したハズの亭主だけが置き去りになっている
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