419 不易

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



3/6 1:20


日を跨いでしまったからこそ判りづらくはあるものの・・・


「むぐ ズズズ むぐ むぐむぐ  なるほど」


「んっくんっく  あ~確かにそれが出来るんであればエバも多少は動ける様になるかもしれんのぉ」


それはギルドを出発する前に確認を取った


「でっしょお~?二人からオッケーもらえればジンも良いよって言ってたからさ! うっしうし、じゃあそういう事だから!責任を持ってエバを完治させてあげるね~」



あたしが眠る間際の話だ



巫女は亭主が用意した夜食?のホワイトソースに乾いたパンを漬け

飲み干すと同時

「 まぁ修理すんのは勝手なんだが、あまり人前には出すんじゃねぇぞ」

袖で口を拭ってから睨み付けてきた


「だ、大丈夫だって  そんなの」 (分かってる)

許可をもらった後だ

圧が掛かるのを余所に今は部品一つ一つへ印を書き込む


「お~?遺跡での話は後を絶えんらしいがそんなもん自業自得の様なもんとは違うんか?」

赤鬼様は空気を読んでくれた


のか!?


「ちょ ま、ぐぇ 分˝かったって、分かったからぁ」

雑に子猫を掴む様にするとそのまま座敷へと放り投げられた


爆睡しているエルフ、、は良いとして

吸血鬼の幼女を起こさぬ様、上手く衝撃を逃がしながら着地すると再びカセンに詰め寄った


「もぉ~心配しなくてもエバを仕舞ったらちゃんと寝るからさ! 止めてよね ってかシャツも伸びちゃうじゃんかぁ」


まぁ、二人からしたらあたしが好き勝手言ってるだけであって



邪魔でしかないって事くらい分かってる



最後に残ったホワイトソース味の皿を指で綺麗にし、舐め終えた巫女は次に赤鬼の酒を奪った


「これは軽い話じゃねぇんだ、遺跡の噂だけじゃあない、一昔前の話もあってな、、ドールなんてどう転んでも殺人人形と重ねて見られるのはしょうがねぇんだよ」

少女?は一気に呷り


「それが例え王都だとしてもな」



私の心を突き刺す



・・・



コポコポと酒の音を立て

二人が慎重に物事を思考する中


「わ、分かってるよ   そんなの」

やっとの思いで小さく言葉が漏れ


また


邪魔をした


「ぁ?まだなんかあんのかよ」


「明日一気に動くんじゃから寝ときぃ」



「分かってるってばぁ!」



大きな声が出た


が表に出ているエルフさん達は飛んで来ないしジンなんかも寝たフリをしてくれているんだろう


、、なのに

これだけ面倒臭い状況を作ったのに


次の言葉が出て来ない



「 はぁ 」



先に見かねたシエルが溜息を吐いた


怒られるとか、それくらいなら覚悟も出来ていたんだけど



「また夜泣きされても困るから先に言っておくぞ?」


「様々な種族が出入りしてるからって全員が全員受け入れてるって訳じゃねぇし探索者からしたら『仇か恐い存在』だ、科学系統を追及してる奴らなんかからしちゃ『研究対象』になっちまう」


それこそあたしだって 未だに


「分かんだろ?  この世なんてのは殆どが都合良く出来てねぇんだ」



「だからよ」






「そうなる様に自分で選ばねぇとどうにもなんねぇぞ?」






3/8 12:30


「エバ、エバぁ!」

少女は一歩踏み込んだと同時、反転し、瞬時に正確な位置へと回り

「大丈夫?」

肩、、の代わりをしている器具を支え状況を確認した


突き刺さっている物は鉄筋の先に鏃(やじり)が付いた程度の鉄の槍

単純な話だ

腰から上、背中から上向きに一突きされたのだろう

細かな破片や歯車が散乱し、喉元付近へと貫通している


ソレを彼女は簡易的に動くだけの手で押し返そうとしているのだが上手くいかないらしい

鏃の返しが引っ掛かる度に自らの体を確認し、先端を握ってみたりと、、懸命に藻掻く姿に目を離したくなる


いや、それだけじゃない


明らかに先程よりもぎこちない様子だ

こちらを向こうとする動作でさえもゆっくりに感じる


なのに



「  大丈夫だから  」



なんて言うもんだから




涙が零れる




「ああ!くっそ、どうなってんだよ」

「あんな動きするんだ、ソイツも仲間なんじゃねぇのか?」

倒れていた男と支えていた男が二、三歩程下がり

体勢を立て直しつつ腰元の刃物に触れた


「いや、待て待て、嬢ちゃんは知らないのかもしれないけどよ?機械人形ってのは危ない存在なんだ!」

「そうだぜ? 親父も殺されちまったんだ、それを庇っても良い事ねぇって」

手前側の連中だ

ポジション的にも制止してくれているのは明確だが、視線を外さない


各々(おのおの)が得意とする武器を手に取り




エバを殺そうとしているのが分かる




ほんの一瞬、一息程度の隙さえあれば槍を圧し折り、無理やりにでも背負って走り抜けてやるのに


無ければ、、







無ければ?




どうするとでもいうのか




自然と連中の得物を目で確認し

長い順に距離


それと


自らの踏み込む速度を計算した

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