218 成行

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい




「ぷっは、なんだよまだまだ作れたじゃんか~まぁ成果はあったしこれくらいならいっか」


爛(ただ)れた顔の少女がガラガラと音を立て、瓦礫の中から顔を出す


「見くびっちゃったな~それより急がないと、何時間くらい経ってるんだ?、、ぁ?  あれ」


掻き分け、やっとの事で這い出たのだが下半身、腰から下が潰れている

、、それだけでは無い

自らの身体をよく見ると背中から胸にかけて鉄骨の様な物が貫通し突き刺さっており、割れた床のタイルを真っ赤に染めている


「参ったなこれじゃどっちみち追い付けそうに無いや」


深層過ぎたせいなのか救助は未だに現れていない


「どうしようかな、まずは  消火、か?」



巨大な部屋は今も炎があちらこちらで燃えている


破壊され吹き飛んだ部分は別として、緊急用の防護装置が作動し防火シャッターが所々で稼動した、、らしいのだが何故か散水機能、スプリンクラーが動いていない

連動式の排煙装置も滞(とどこお)っており換気口だけではもちろん間に合っていない

密室となった地下の部屋、煙と熱気が充満しもはや生物が生きられない温度にまで上昇している



煤(すす)まみれで焼け焦げた皮膚や溶ける髪を気に留めず


潰れた足、流れ出る臓物よりも大事そうに球体を四つ程抱え這いずる



「あ~、そっかこのままじゃ届かないか」

高さ的に手動用の排煙口を開口出来ずに見上げる


「困った、、みんなが心配だけど先に治療するしかないか」


あ~でもないこ~でもない長々と一人喋りを繰り返し


悪魔は地獄の様な環境の中、作業を開始する





















2/13 6:00


「あぁ、無事でしたか」


「酷いなぁ、それちゃんと心配してないでしょう?」


「していますよ?  作品は無事ですか?」


「あははは!やっぱりそっちじゃんははははは、何体か死んだけど大丈夫  そんな事よりこれ見てよ!」

無邪気な顔で嬉しそうに球体を一つ取り出す、、が

「あっ!いや違うダメダメ」


慢心、高ぶった表情と見せびらかせたソレを急いでポケットに納める


「別に力ずくで取り上げたりなどしませんよ、それが賢者の石なのですか?」


「そう、かな?」


「疑問形ですか、まぁ確かにテストするにはもったいないですね」


「う~ん、うん」

分かり易い表情と煮え切らない返事で球体を眺め見る


「何か含みがありますね」


「あのさ~、グングニルさ~今日のやつはテストって事で良い?」


「どういう意味ですか」


「君達の最終目的は天使の作成と製造、今回の目的は種子の破壊でしょ?だからグングニルなんて使わなくても良いかな~って」


「回りくどい、本日の予定で動いていますが、、変更って事で?」

顔色を伺う様な煩(わずら)わしい態度に顔を顰(しか)める


「ヤダな~そんなに怒らないでよ違う違う、今回のも契約の範囲内だ破棄なんかしないって」


悪戯顔をした後に眼を見開き


「百パーセント、必ず壊してあげるよ」


悪魔が笑う














同時刻



「行かない、此処で待ってる」


「あたしもパス~」


「はぁ?」


公園の前で猫が三匹騒いでいる


「報告聞くだけじゃん」


「りん、服好きでしょ行って来なよ」


「はぁ~、、隊長、長くなるかもだしまぁ良いや」


長髪の猫は櫛(くし)を取り出しながら目の前にある大人びた服屋に足を向ける






「んで?そのグングニルってのがどこ行っちゃったか検討付くの?」


大柄の男が人の良さそうなお年寄りに絡んでいる、、訳では無い


「恐らくはディーン側だろう、こっち側に裏切者など、、いやまさか?だとしたらいつから」


「ちっ、爺さんらめ 全部裏に裏に回って、、覚束無(おぼつかな)ぇ~な~」


「すまないね、君にも世話を掛けるよ」

申し訳無さそうに表情を崩す


「あ~あ~身内の爺さんらの話よ、別にあんたらの事じゃないんだ愚痴っちまって申し訳無い」

大男はしっかりと頭を下げる

「一応あんたと伯爵さんらは正しいと思ってっからさ」


「本当に、世話を掛ける  さて時間も無い、そろそろ最後の仕事に急ぐとしよう」


「、、坊さんが最後とか言うもんじゃないよ、縁起でも無い」


「坊さんとは違うのだけどね、ありがとう、どっちみち長くはないんだ使える時に使うべきなんだよ  それじゃあその子と、、」

「はいはい分~かってるよ、あの人に治せない毒はないだろうからこの犬っこ預けたら久々に様子見に行くって  った~くついこの間やり合ったってのに展開が早い事」

大男は間髪入れずに面を被り直すと子供を担ぐ


ぐったりとした子供は犬耳と大きな尾を持ち、応急手当にしては雑に手首を木の皮や蔓(つる)で固定されている


「あ!それと通り道っしょ?部下らには伝えといて」


そう言い残すと翼を羽搏かせ


エルフの森方面へと飛ぶ







最後の言葉は聞かずに















五章  完



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