297 魔除

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



2/25 14:30


「随分奥まで来ましたけど武器を扱う類の魔物はいなそうですね?」

青年は辺りに散らかった、、肉食の虫や通常の三倍近くある蝙蝠の残骸を避けつつ元々設置されていた篝(かがり)を立て直していく


鉄製の皿を乗せ、樹脂や油を固めた物を置いてから手に持っている松明(たいまつ)で火を灯す


これらの物資は案内役のギンから持たされた支給品だ

ロープやハーネス、カラビナの様な固定具までしっかりと入っている

他にも何に使うんだか分からない特殊な金具等もあったので「いや、魔物討伐にこんないらないですよね?」と聞いたのだが「あ~えっと、その~整備はされているけど念の為」と少し意味不明な事を言っていた


知った者なら必要な装備のみに軽量化するのは当たり前の話なのできっと『現場には出ない口だけタイプ』なのだろうと思い、通りの途中にまとめて置いて来た

それでも十分重量のある荷物だ、バルは肩と首を擦る


「んっくんっく ぬぁ~確かにのぉ、ドワーフ連中が使ってたもんはそのまんまんなっとるからゴブリンみたいなのはおらんのかもしれんのぉ」

赤鬼は興味無さそうに床に転がる工具を拾う


「だがこんだけの量がいるんだ、知性持ちはヤツ(ギン)の言ってた通り居るだろな」

そう言いながらも銀髪少女?は気楽なもので灯された火を使い暖を取っている


「旧王都で見たあの子みたいな感じでしょうかね?」


「いや、魔物の種類がバラバラだ  なのに食い合っている様子も無けりゃ仕掛けて来る時の動きに統一性も見えない、単純に力を持ったのがいるって可能性があるな」

巫女はバルの方を見る訳でも無く手を擦り、独り言の様に呟く


「魔力反応はあるんか?」


「、、良く分からん感じだ、私の感知も万能って訳じゃねえからな 感や気配、感覚を増幅している様なもんだ、っつかてめぇが近くにいるとそっちに気が散って尚更鈍るんだよ」


「んな事言われてものぉ  あ~磁石みたいなもんなんか?」


「まぁなんだ、クソハゲ(フォメット)の様にあっちの姿に成れば分かるってやつもいるから気は抜くなとでも言っておく」


「それって、魔族が居るかも知れないって事です?」


「ちっ、ソコが分かんね~っつってんだ 今までの『魔族』ってのは言うなら隠れ住んでる訳で、、今回のは明らかに魔物と共存してる上にドワーフ連中には存在の有無がバレてんだ  やり方が違う」


確認、警戒の為に聞いただけだったのだが「物分かり悪ぃな」とばかりに舌打ちをされた

面倒そうな顔をしながらも説明をくれているので勝手に頭が下がる


「あ、なんか、すいません、、巫女様といるとついアレコレ見え過ぎるモノで、もう少し考えてから発言しないとですよね」

バルは荷を置き、身軽そうに先の様子を確認しに向かう


「カカカ不っ器用じゃのぉ~、シエルはもうちょいその辺なんとかならんのか? どうにも生き辛そうに」


「別に、んな事   っつか良いからてめぇもさっさと先行けやうっとうしぃ」


「へ~いへい、まったく可愛いやっちゃなぁ」

置かれた荷を片手に担ぎ、にしし顔で青年の後に続く


「、、けっ、何様だっつの         ボケが」




一行は次の階層へ進むと安全だと判断、巫女の提案で休憩を挟む事にした




その後も危なげ無く    二時間程奥へと進んだ
















同時刻


「あぁはい、そうです、王都側も王国側もその様な感じでしょうと思います、、はい、はい」

どこぞの従者はイラつく様な素振りも見せず、まだまだ終わらなそうな問答を続けている

「いえ、まだこちらも全体像が見えている訳では無いので、、はい、、えぇ、そうですね」


「そう、そういう事です、いずれにせよ他国からも後々動きがあると思います、、あっと! 大分時間、お手を煩わせてしまいました、申し訳ありません、私(わたくし)も一度巫女の元へと向かいます   明日にでも多少の成果があればと思うのですが」

やっと解放されたシフは思う







あの人が居れば大丈夫でしょうが







でも 何か  ドワーフ王が妙な事を言っていた様な







【どうもドワーフは魔に対する感覚が疎(うと)くてな、自分でも分かる、悪く思わないでくれ、、コレは当たり前の事なのだよ    地下は空気が薄い、ソレに対応出来る様にと身体が進化している 言うなれば摂理といった所だ】



・・・



従者は王に頭を下げ


案内役の元へと急ぐ




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