195 混乱

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



2/13 14:30


「ゼブラ、さん?それって」


神父の右手に握られたこの世界に似つかわしくない機械

いや、かつて自分がこの世界に持ち込んで来た物にジンがいち早く気付いた


「あ、あぁジン君、コレは君宛に頼まれた物だ」


「え、え? いやコレは、なんで」

動揺しながらも神父から軽い板を受け取る


「私にはそれが何なのかも分からないし本人から受け取った訳では無いんだ、だが今はとにかく皆で此処から離れよう!」


「ゼブラ殿?どういう事でしょうか」

ジルバ、館の執事はどうやら神父と知り合いの様だ

持っていたティーカップをテーブルへと置き、神父の元へと足早に動く


「ジルバ殿!確保した筈のグングニルが宝物庫から消えたと連絡がありました、恐らく王都側に裏切り者が、、いやそれよりも狙うのなら」

「此処、ですね」


「そういう事です、急ぎましょう」


「いえお嬢様と私(わたくし)は覚悟の上で御座います、しかしタイミング悪く巫女様もいらっしゃいますのに、、彼らも割れているのでしょうか、それとも」

老紳士はシエルを見た後に軽く腕をまくる



ダァン!



突如部屋中を響く音に全員の注目が集まる


「おいこら、ボケてんのか?ぁ?」

不機嫌な巫女が椅子を蹴り飛ばすと腕を組み、従者のベットにドカッと座る

「訳が分からね~事言ってねぇで耄碌(もうろく)共、説明しろ」


「シエル!説明は後だ、時間が無いんd」

「だからソレは何から逃げるっつってんだ!?そもそも何処に? てめぇらな、何が来るかしらねぇがどっちみちディーン王国から一本道だろが!逃げ切るとかあんのか?あぁ!?少しは脳味噌動かせボケが!」


「お~お~待て待て待て、親子喧嘩は後で良いじゃろ」

赤鬼が巫女の蹴り飛ばした椅子を掴み元の位置へと戻す


「シエル様?」

従者もいつもより気性の荒い巫女の肩を抱くが

「触んな!クソが!」

シフの手を強く振り払い立ち上がる



・・・



「なんじゃあ?らしくないのぉ」


「巫女殿?」

エルフも自分の顔をパチパチと叩き心配そうな顔をする


「シエル、、」

神父が巫女に近寄り、ゆっくりと背中を擦る



「悪い予感が、するんだね?」



酒を飲んで酔っ払っている訳では無い

ましてやいつもの、そんな量でも無い


巫女の勘は当たる


その事はもう此処に居る半分以上の者が知っている



「シエル、とりあえず準備して外向かおうぜ?シフは俺と、、いやカセンが持つから」

マスターが口を開く


「うるせぇボケ、少し考える」(ひ~ん、ごめんなさい)

シエルは瞳を右下から左下へと忙しく動かすと眉間に拳を置き、瞼を強く瞑る

(ジジイ共の言葉から推測するにココと私を飛ばしたい何かなんだろう? いや、この動悸、予感はそんな事だけか?)、

「おい、そのグングニルってのはなんなんだ?魔物か?魔法の類か?  一応聞くがなんだ?逃げるとしてもジジィ、なんか手はあんのか?」

巫女は目を閉じたままに、模索しながらも耳を向ける


「グングニルは、、悪い、兵器だよ   出来るだけ北に進んで浅瀬を見つけて海に飛ぶか王国に直接向かおうと考えているが」

「あぁ?直談判だ?馬鹿か三時間はかかるだろが、ちっ結局無策かよクソが!  魔法の壁張って何とかなるか?」

畳みかける様に悪態を吐くが提案が入る辺り流石と言う所か


「シエルと私の障壁なんかでは無駄死にだろうね、、とにかく知らせる事が頭に浮かんでしまったから、さぁもう動こうシエル」


「くそ、あぁ!くそが! いい、私の浄化で何とかする!」

巫女は苛立ちを見せながら両手を擦り、グーパーグーパーと準備運動?を始め扉の方へと足を向ける


「シエル様!」

「駄目だ!一人でどうにかなる様な物じゃないんだよ!」


「分かんねぇだろ、がっ! くそ、離せ半裸!ボケが」


咄嗟に、掬う様に赤鬼が巫女を抱える


「お~お~焦り過ぎじゃろ、聞いてるだけじゃ良く分からんがシエル一人でどうにかなるとは到底思えん」


「巫女殿、私の魔法も何かに使えたりしないだろうか?」


「ラフィの魔法って水、、う~ん逃げる方で考えた方が使えそうではあるけど、全員を海水の中で息が出来る様に、とかそういうのは出来ないもんね?」

バルも思考を重ね口に出すのだが自分でも現実的では無い様に思えた様だ


「ジルバ? 私の力で何とかなったりしないの?」

幼女が小さい声を出しながら執事のズボンを引くが

「残念ですがグングニルはそういう代物では御座いませんので」


容赦の無い言葉に幼女は自らの、土埃の付いたスカートをぎゅっと握る



そんな中



日頃から浮いたポジションのせいなのか


はたまた逆に色々な事が起こり過ぎているせい、いや違う


単純に皆よりも想像力が乏しいせいだろう


先に目の前の事から整理している男がいた



(なんだよロゼ結構普通の子なんじゃね~、、「の!?」


気付くのが遅れた

と言うか変な声が出た


「の」しか言えなかったが



だが、その間の抜けた奇声は辺りをしんとさせた





そして





「グングニルってさ?  ソレ、だよね?」




喫茶店のマスターは一度生唾を飲み込んでから部屋の隅に置かれた砲台を指差す



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