301 拷問
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
2/25 18:00
「はい、では幾つかお聞きしたい事があるので一つ一つ質問していきますね」
ニコニコと爽やかな青年がいつもの口調で問いかける
「ひぃ、違˝っ!違うんだ はぁはぁ 依頼は、討伐の件は本当なんだって」
岩場へと腰を掛け、、させられている男は目線を逸らし唇を震わせている
確かに冷える場所と時間帯だが服装も服装で本人は特別寒いと言う訳では無い筈だ
それどころか準備は万端、寧(むし)ろ重装備過ぎるくらい、、代謝が良い者であれば少し動いただけでも汗をかく程の厚着
だからこそ身なりだけで場慣れしていない事が見て分かる
そのせいで襟(えり)やら脇部分は色濃く確認出来る程に衣類は湿り
整った髪からも滴(したた)る脂汗は後ろ髪から滝の様に流れると首筋から喉元を伝う
まぁ鼻、口、頬から流れ、混ざる雫は別のものなのだが
二人は今、金髪の青年バルが途中に置いて来た余分な荷物付近に居る
おかっぱのドワーフは火薬庫から出ると大急ぎで再び自分の鍛冶場に戻った
自宅であるにも関わらず人目を気にし、、隠し扉を開けると奥から一本の剣を持って外へと出た
その一太刀を抱え、背には大荷物とダイナマイトを携え、いざ! 魔物の巣へ!!
という辺りで従者に捕らえられた
剣を抜く間も無く蟀谷(こめかみ)付近に掌底(しょうてい)で一撃
これは意識を飛ばさない程度の軽いものだ
体勢を崩し、ふらついた後ろ髪を掴むと今度は勢いよく岩場に叩き付けた
それでも情報収集を優先したので加減はした方だ、外傷としても重症とまでいかない程度
前歯は折れなかったし鼻も無事、、だが口の中は切れたし衝撃で鼻孔(びこう)からは血液が流れている
バタバタと情けない声で騒ぐ男
愚か者に救いは無く
従者はリズム良く脇腹に拳を入れ、太股から膝にかけてを下方向へと蹴りつける
大荷物も原因だ、重心を支えきれずに肩から転倒
そのまま片手で無事な方の腕を捻(ひね)り、もう片手で男の持参していたロープを頂戴して何重にも巻き付けた
「まずその一 『ドラゴンを討伐して欲しい』と初めに伝えなかった理由は何ですか?」
従者は顔色を変えず問いかける
「待って、違うんだって、伝えたと思ってたんだ、伝え忘れてたんだよ 殺さないで」
上記の様なしっかりとした言葉では無く
あうあう、ぜはぜはと血を流しながら懇願(こんがん)する様に壁に額を付ける
「あ、いえいえそういうのは良いんでしっかりとした返答をもらっても良いですか?」
柔らかなトーンで注意する様な台詞を吐き
男の抱えていた剣を抜く
「ドラゴン相手じゃダメだと思ったからっ! 単純にぃ! はぁ はぁ アレは上級の魔物だから、普通に考えたら受けてくれないって思ったから!!」
掌返しが早過ぎる
だがその鼻先は既にミリ単位で削がれた後である
「ふふ、ドラゴン程度に臆する人達じゃないので言ってくれれば良かったんですよ~ じゃあ次いきますね?あ、ふざけたら容赦無く撥(は)ねますのであまり考えない方が良いですよ?」
楽しそうには見えない微笑みと淡々とした応答
完全に相手が悪かった
どうする事も出来ず
少しずつ
ほんの少しずつ
無くなってゆく先端
恐怖だけで揺らす指が深く飛びそうで
ビリビリとした口元、それと胃、内部が丸ごとどうにかなりそうだ
「その二 この板の使い方、あぁ詳しくはジンさんに聞こうと思いますが連絡していた先はどなたですか? 狙いは? 今後どう動くんでしょう?」
「え、ぁ違う、俺はあのドラゴンの黄金が欲しかっただけで、、何m」
「王国の軍師 レイ ですか?」
音も無く
左の耳が飛んだ
「あああ˝あ˝あぁぁぁ˝あ˝っぐう˝ぅう˝ぁ˝ぁあああああ」
「質問に答えないから~じゃあ次です、その三 どうします? このまま」
「逝きますか?」
首元に置かれた重りに耐え切れず
吐瀉物(としゃぶつ)と共に大半の情報を吐き出した
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