239 異端

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



2/21 20:10


正直焦った

本当に一瞬呆気に取られた

確かにこれまでの事もあり信頼し過ぎていたのかもしれない

流石にこの人が敵に回っていたら守る事はおろかシエル様を逃がす事さえも出来なかっただろう

今回は結果論に過ぎない、まだまだ情報を集めないと

もっと力を、強くならないと


巫女の従者は同じ事を感じたであろうバルの方に目配(めくば)せを送り後方を確認する


集中しろ、動きがあるとしたら隙を突ける今だろう

怪しい動きをしている者はいないか

暗がりに潜み、大臣からの動きで何かしらの合図が送られていないか

いるとしても顔がバレているあの魔法使い連中では無い筈だ、魔法を使える、混血の、射程圏内に別、、の!!?



驚愕した



巫女はそんな従者の考え、気持ちなどは軽々と裏切り

大勢の騎士達の元へと歩み出し「狙ってみろ」とばかりに背を向け、啖呵を切った


(も~~~~~ほんっとにこの人は~~~)

いつも通りに従者の苦労は続く




一方バルも思う所、引っ掛かる所があった


この大臣はあちら側の人間だった、しかし巫女様の口八丁、、策に引っかかったとしても

何故この腕輪の『名前』を知っている?

王子はコレをどうする為に?狙われた理由はコレ?この腕輪に何か仕掛けや効力が?

何にしても首謀者共々聞き出すチャンスだ逃がす訳にはいかない

、、だが、何故逃げない?この状況下で、、いや、今は目の前に集中しないと


バルはシフに続き巫女の元へと急ぎながらとりあえずの違和感を払拭する





この違和感は的中する




「あ~本来なら魔物やら異形以外に手は出したくはないんじゃがな、相手をせにゃならんのなら容赦はせんぞ?どうするんじゃ?」

赤鬼が周囲の騎士をぐるりと見るその顔はニコニコとしている

「もしなんなら隊長クラス?のを呼んで来ても構わんがどう考えても悪いのはあっちのハゲじゃぞ」


差す指の示す方角なんかよりもその手に持っている端材、では無いソレの方に注目が集まってしまうのは仕方が無い事だ

武器としては騎士達の持つ剣や槍の様に凶悪な物には決して見えないだろう

なんせ言うなれば武器では無く


建物だ


本来の用途?の様に「此処は通さん」と仁王立ちしている訳でも無く、雑に引きずりながら歩いている




「どうする?」


「どうするって馬鹿、敵う訳無いだろう」


「それに、巫女様やカセン殿の方が、、」


「確かにな」


「そうだよな、フォメット殿の方が何かをやらかしたのか?」


「一旦とりあえず隊長連中の判断を仰ぐか?」


ざわざわと周りからは悪くない声が聞こえ始める


(数的にも、このままなら潜んでいる者も無暗に出て来れないだろう、、いや、駄目だ侮れない、『だからこそ』がある)

「シエル様、もう十分ですからちょっと距離置きましょう」

従者は小声で巫女を囲う様にすると騎士達から少し距離を置く



だが



注意すべきはそちらでは無い



「シフ!避」


バルの声よりも先に




ゴオオオウ




ゴジャアアァン!   ボッ!  ジュヴヴウゥ




ブスブスブス・・・




ギリギリだ

間一髪

カセンの投げた建物がシエルとシフの目の前で燃え、、いや





溶けだしている





「お~流石にソレは反則ってもんじゃないかの?きっとシフでも助からんぞ」

呑気そうな台詞とは別に赤鬼の表情は険しい


「すいません、助かりました」

従者は巫女を後ろへと回し構え直す


「惜しかった、、本当に色々と惜しかった、しかしもう駄目ですね非常にバットです」


やっと降ろした右人差し指を再び天へと向ける大臣フォメット





であった筈の



翼を持った怪物が不気味に笑う

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る