240 焚火

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



2/21 20:10


気温が随分と下がった

だが森林内は外よりも較差が少ない為か思っていた程では無い


既に辺りは暗く、松明(たいまつ)を灯しながらの進行


凡人の俺だけが肩で息をしている


「大丈夫かジン殿」


美人のエルフは侵入時とは打って変わり、こまめに振り向きながら様子を伺ってくれる


「はぁ まだ はぁ ギリ」


「、、無理は良くないぞ?明日に響きかねない、よし、じゃあ今日はこの辺りで野営としよう」


「はぁ、ごめん」

(正直マジでありがたい)


「うむ、では私は何かしらを取って来るので火の準備を始めてくれ」


「はぁ ふぅ 分かった」

と言うよりも先に

ラフィは大剣を地へと突き刺し、足早に暗がりへと消えて行った


(はえ~な~やっぱりゆっくり進んでくれてたんだな~)


「か~しんど、首いて~」

三十路が大きなリュックを地に置き、肩と背中を鳴らす


このリュックは通常の世界の登山用ザックなどでは無く、麻袋を加工した様な物だ

チャックやらポケットも無ければ多少重さもあるし背負い辛いので旅用としては向いていない

単純に採取やら作業用にと大きな物を購入しておいたやつなのだ


(此処ではポリエチレン?みたいな材質とか無いのかね~)


そう、そういうずっと謎な、気になる事がいくつかあるんだ



ジンは薪(たきぎ)になりそうな枝を集めながら思考する



遺跡にあったスーパーコンピューターの残骸といい警備用のロボ、そしてエバの様な存在

素材で言ったらアルの足だってそうだ

鉱石やら機械に詳しい訳では無いがあんなの漫画の中でしか見た事が無い


それにコレだ、電源の切れていた筈のスマホが充電されて手元に戻って来た、、、


電気と言う物はあるし化学は発達している訳だ


なのにポリエチレンの様な化学物質や合成素材を王都でも見かけない



それなのに・・・



「この鞄、凄く便利なのだわ」


疲れのせいか余裕が無かったのか、完全にもう一人の存在を忘れていた


「え?あ、あぁリュック?、、でもソレお前には背負いにくくないか?」

考え事をしていたので少しキョドった、のを誤魔化す様にフォローを入れる


「リュック、ふ~んリュックって言うのね」


子供用の物など持っていなかったのでロゼに背負わせているのは転生時に置かれていた例の赤いリュックだ

幼女には似合わないサイズのリュックをご機嫌な顔で振り回している


「リュック知らない?えっとリュックサック、、かバックパックとかって呼ぶんだけど」


「し、知ってるわよ?リュックシャ、、リュックパック」


「残念リュックシャックなら分かるけど混ざっちゃったから、リュックとバックならまだしもパの方混ざっちゃったから」


「リュック、リュックシャック」


「もう無理だって、なんなら違う方で覚えちゃったじゃん、サックな?別に知ったかぶる事じゃないだろ~に」


「でも、だって、、あ、ほら!荷物なんて私は持たないもの、お菓子が入る小さな鞄程度で十分なのよ」


「おん、さようでございますかお嬢様」

(お菓子は持ち歩くんだな)

「まぁ良いや、早く火~付けたいからほれロゼも細い枝集めて」


「枝?薪(まき)じゃないの?」

幼女は小さな手をいっぱいに開き、掴めるくらいの幹(みき)部分を鷲掴みにしている


「え、何?折るの?いや待て待て待て、どうせそれだと直ぐに燃やせないって」


「何を言ってるの?木は燃えるわよ」

無知なお嬢様の首は曲がり、口はへの字だ


「生木(なまき)はなんつ~かな~燃えにくいんだよ」


「なんで?」


「なんで?なんでと来たか、え~っとあれだ、まだ水分があるだろ?そうだな~これも、土に付いちゃってる部分湿ってるだろ?」

転がってる枝を触らせ、確認させながら続ける

「カラカラに乾燥したやつのが燃えんだよ、あと最初は焚き付けないとだから枝からで、、焚きつけは~火種!火種作りをしないと、順番があるんだよ、だから~細いちっちゃい順に付けてかないと上手く燃えないんだよ」


長ったらしく説明したつもりは無かったのだが


「ふ~ん」


そこまでは聞いていないとばかりに、興味を無くしたお嬢様からは上辺だけの返事が返って来た


「お、お前が聞いたんだろ!?」



考えてた事がぶち飛んだ


子供が居るともしやこんな感じなのか?

と少し面倒に思いながらもやり取り的には




嫌では無いと感じた




(ロリコンじゃない、ロリコンじゃあないからな?)

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