253 謁見

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



2/22 9:00


「ではすみませんが、引き続き宜しくお願いしますね」

跳ねた髪の従者が老婆へと鍵を手渡す


「えぇ、此処は儂らの聖域だからね、シエルちゃん!頑張るんだよ?そうだコレ、、沢山持って来たから食べて元気出してね」

鍵を大事に仕舞い込むと少女?に大きめの袋を渡す


「ん」


「健康にも気を付けるんだよ?」


「はいはいてめぇらも、、まぁ適当に、くたばらね~程度にな」

少女?は馬車に足を向けながら雑に手を挙げる


「お~意外と言うか何と言うか、凄い人気じゃの」

荷台で飲酒を始めているのは和装姿の鬼だ

外に並ぶ者達を横目で見てから巫女の頭を二度程ポンポンと撫でる



神父のいない大聖堂には今日も朝から行列が並ぶ

最近では巫女もいないこの場所だが聖堂内部からはステンドグラスが反射し、庭先、、いや、それどころか門、井戸、ましてや倉庫の使わない祭事道具ですら管理が徹底されピカピカと輝いている


誰が頼んだ訳でも無いのだが、それだけ人望があったと言う事だ


見知った者に鍵を預け終えると巫女らは城へ向け馬車を走らせた



・・・・・・



元関所周辺から城外付近が慌ただしい

恐らくは昨日の晩からなのだろう、改修作業が行われている


「巫女様御一行が魔族と戦った跡」

早くも王都を守った『聖戦』なんて聞こえの良い名前で噂されている


引っ剥がされ、破壊された門

強固である城の外壁には今も突き刺さっている武器の類

城内へと続く筈の石畳は所々が欠け、酷く荒れた形跡が残っている

、、誰がそれらを見てそのほとんどが投擲に使われたと思うだろうか


確かに間違ってはいない「魔族と戦った跡」だ、その副産物ではあるのだが、、


当の本人は停めた馬車の荷台から工事現場を眺め

「お~じゃああっしは此処で待っとるから頼んだぞぉ」

一興とばかりにしてやった顔で飲酒を続けている


それに伴い「一口だけでも」と持った巫女の手からは従者がすかさず奪い、馬車を降りた




シエルとシフ、それとバルの三人は入口にて王宮騎士と合流した

内部へと入りまず最初に案内されたのは特殊な仕掛けが施(ほどこ)された地下牢

薄暗くひんやりとした空気が漂う中、奥へと通される

そこで確認させられたのは両腕が再生されていない状態の魔族、、厳重に拘束されている元大臣フォメットだ


死んではいない、が動かない


反響のおかげで微かに薄い呼吸音だけは確認出来た

腕は無いのだが特に昨日から変わった箇所は無く、目や耳もあるので拷問等をされた訳では無さそうである

幾つかの情報は拾えたらしく「詳しくはルク王とお話下さい」との事だ


その後すぐに大広間の方へと通されたが王直属の者から「王の部屋へお通しする様にとの事だ」と声が掛かった


それ程の数を携帯していた訳では無いのだがその場で武具類を預け、複数人の者達と煌びやかな廊下を渡る

城内の長い長い道のりに愛想笑いと他愛の無い話で場を和ませる従者

、、とは打って変わりこの辺りでもはや面倒くさそうな表情を浮かべ出す巫女


皺を寄せ、仏頂面だが舌打ちだけはせずに無事?装飾された扉の前に到着した


広く豪華な部屋へと入り


席へと座り




その後




一時間程時間が流れてからルク王が現れた


「少し待たせてしまったな、大変申し訳ない!」

王は一度頭を深々と下げてから両手を高く上げ

「巫女ら諸君よ私の部屋へようこそ、歓迎する」



起伏の激しい挨拶をした



銀髪の少女?を苛立たせたまま

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