254 奇人

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



2/22 17:40


「カカカカカ」

城の外、復興中の入口付近から声高らかにかんらかんらと愉快そうな声が聞こえる


「ま~たカセンさんわ」


「おい!追加持って来い、もう夕飯分全部持ってきちまえ」


「あっはっは、なんなら踊り子の一人や二人連れて来るか?」


冬の空は早いもので、既に日は暮れ辺りは真っ暗である

周囲の温度は一桁程、そんな中松明(たいまつ)の火が複数灯され祭りの様にやんわりとした灯りの中で赤毛の酒豪が手を招く


「ん~?お~お~帰って来たか!こっちじゃこっち、えっらい長かったのぉ」


何処から拝借して来たのか手持ちの酒に続き、様々な肴(さかな)が地に直接並んでいる

豪傑(ごうけつ)の周りではそこそこの地位を持つ兵達が共に酒を交わし、一般の者達も混ざり始めている


「ちっ、なんだこのどこぞの居酒屋状態」


「、、でも良いんじゃないです?俺も疲れちゃいましたし、もう一緒に飲もうかな」

珍しく巫女と従者よりも先にバルが賑やかな方へと駆け寄る


「ははは、まぁシエル様もお疲れ様でしょうし、良いですよ?  っていっっ」


「何が良いですよ?だ、ったりめぇだボケ」

銀髪の少女?は言葉に振り向きもせず、だが自然に足を踏みつけ不機嫌そうに赤鬼の元へと向かう


「も~気持ちは分かりますけど八つ当たりは良くないですよ~」

軽く足を振ってから肩を落とし、従者もその後を追う



長い長い王とのやりとり、、某大臣のお言葉と違い意味のある会合なのだが

台詞そのままに、掻い摘むとするのならこうなる


1.褒美を与える

レッドナイトには今まで通りの品を今後三倍の量で提供する

商人らは別で招き金銭の話をさせるとする

巫女らには魔宝具を授ける


2.巫女には不安や不信感を与えた、、が我慢してくれ

大臣を殺し魔族と敵対する気は毛頭無い、得体の知れない者を直ぐに敵へと回すのは愚か者のする事である

そんな馬鹿では無い、むしろ餌に出来るのならするし必要無いと思えば消す、だが民の不安をわざわざ煽る事もしない


3.ヤツ(大臣フォメット)から直接幾つか不可解な事を耳にした、一度ここまでの事をしたのだ信用するには足りないのだが

「別に私は、魔族側は『破滅』を好きで望んでいる訳では無い」、、との事だが巫女は何の事だか分かるか?


この問いに対してシエルはロゼの館で起こった事件の全貌を伝えた

ディーン王国で兵器が開発されている、目的は不明だが『破滅』と呼ぶに近い行為が行われた事

ソレは二十年前にも行われており、東の国を『死者の国』にしたのも恐らくディーン王国である事


ゼブラの死についても正しく伝わっていなかった様で王は派手に泣き崩れた

だがその悲しい、悔しいと流れ出る悔やむ言葉に巫女はどこか嫌悪感を覚えた

大袈裟ではあるが決して嘘くさい、態(わざ)とらしいという訳では無い

ただ単純に



常人では無いのだと感じた



魔族に対する考え、民への対処も決して悪くない賢い動き方だ

今も内部に怪しい動きをしている者がいるのも分かっているが特別に何か処置を取る気は無いらしい


『承知の上』なのだ


神父の死が近かった事も本人から聞いてはいたのだろう


、、フォメットが魔族であった事も、もしかしたら知っていたのかもしれない


よもや



元騎士団を率いていたコウの件に関しても



王たるもの、寧(むし)ろこれくらいで良いのだろう、と理解はしている

だがやはりそういう考え方は好きになれない、いや単純に


気に食わない


・・・


そんな根は優しい主の心境を察し、従者が宥(なだ)める様に話を戻した


問題視しないといけない事

それは今も現在進行形で流れ出している筈の瘴気についてだ

魔界に通じているのではないかとも呼ばれているその穴、魔族が此処から出て来ているなどとは思えないのだが放置する訳にもいかない

「賢人であるルク王の知識で何か助言を頂けないか」、、と


この問題に対し王は

「しばらく考えさせてくれ」



一時間程熟考(じゅっこう)した

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