249 節度

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



2/21 21:30


「たまげたのぉなんちゅう怪力じゃ」


「そうです、けど貴女が言うとなんかしっくり来ないですね?」


赤鬼と従者は目の前の光景に唖然としつつも脅威が去る事に対し胸を撫で下ろしている所だ

大広間では今も尚、大勢の前で怪物が殴りつけられている


延々と


それは正に公開処刑


呼吸はある、だが許しを請う事は出来無い

両腕の無い巨大な化物は既に意識を無くしされるがまま、何度も何度も頭部を揺らしている

次の一撃では頭が飛ぶのではないかと思う程の拳が右に左に忙しく降り注ぐ


「カカカカ魔族もたまったもんじゃないのぉ、しっかしアレが本当に此処の王なんか?」


「たまげた」とは言いながらも特別気にしている訳では無い

どこの誰であろうがそんな事どうでも良いのだろう

それは恐らく怪力だの何だのに関しても、、『超えた存在』でない限りは


赤鬼は確認の為だけに隣のシフに問いかけた


「、、えぇ、あれがルク王で間違いないです、まさかこうも、え~と?   武闘派?だとは思ってませんでしたけど」

従者としては隣の赤鬼と同じ様に本来『武闘派』と言う言葉で片付けられるものでは無い、、と感じつつも小声で告げてから片膝を着く

「ご無事で何よりで御座います」



「ん、、君は?」

馬乗りで振り上げた手ををピタリと止め、目を細めながらシフの顔を確認する

「あ~確か~、、そう、巫女の従者か何かだったか?」


「はい、間違いありません、巫女シエルの従者に御座います」


「何年か前に一度だけ見かけたな、確か五年以上は前か?すまない、手数をかけた様だ」

ルク王と呼ばれた男は素手に付いた血液を拭いながら深く腰を折る


「いえ、元凶の解明及び捕縛にご協力頂き有難き思いです、頭をお上げ下さい」


流石の丁寧な言葉を並べるシフなのだが


「あ~まぁ分かるが折角じゃから言わせて貰うと元々は王様が目利き出来とりゃ良かっただけの話じゃろ、何度シエルが死にかけたと思っとるんじゃ」


こっちも流石と言う様な答弁を繰り出す



・・・



辺りが一気に静まった



が、すぐにざわざわとその言葉に対し不平不満を並べる

徐々にソレは音量が増し、がやがやとがちゃがちゃと騒音の様な物言いが、音が

しばらく絶えない


まぁ、それはそうだ

場所も悪ければ相手も悪い

ついでに言えば破壊行動をしていたのは実際カセンのみな訳で、本来であれば立場も悪い



『うるさいのぉ』

そう怖いもの知らずが口に出す前に王が動いた


「本当に申し訳無い!全ては私の責任!! 管理不足、監督不行き届きと言うやつだ」


王は口を開いただけでなく


膝を着き



床に額を擦り付ける



「お~お~凄い王様じゃの」


何人かがまだ赤鬼を批難し

何人かが王の頭を上げようとする


だが頑(かたく)なにその顔は前に上がらず、時間が経つにつれ微妙な空気となった


「む~んなんじゃぁ、興(きょう)がそがれたのぉ、、あ!あ~あ~なるほど、だからシフが来たんか?」

カセン的には色々としっくり来ていないのだが『郷(ごう)に従え』と言うものだ、少し面白くない表情をしながらシフにタッチする


「ははは、はぁ、、期待に応えたいですけどちょっと散らかしてからじゃないですか~?」


大人数の貴族、王族を前に


従者の苦労は続く











「お、来た来た   暇しちゃってるって、なぁ?」

体躯の良い経営主が気を晴らすかの様に煙を燻(くゆ)らせている

「で?シエル、なんか炙り出す方法でも考えたかぃ?」


この場でこの行動

呑気(のんき)かの様にも見えるのだが長時間待たせている兵達への自然な配慮でもあるのだ

巫女としては自分に出来ない事でもあるので評価はしている



のだが



「おうふ、なんでグー!?」


逆に気に食わない所でもある


「全員魔力反応は無いし思ってたより暴れもしない、無駄に尋問すんのもめんどい  任せる」


「任せる!? え、何が!?援軍には来たけどそこまで踏む気は無いぞ?」


「ぁ?じゃあなんで来たんだコラ」


「助かったでしょうが?  あ~でもなんだ?色々聞きたい事とか言いたい事もあるんだけど」


「今じゃねぇな」


「だよな~、、ん~じゃあまぁ、今どうこう出来ないし解散させちゃうよ?」


「ん、任せる」



(えええええええええ)



折角の誘導、自分の仕事が無駄になり


こちら側でもいつも通り金髪の苦労人が心で叫びをあげる

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