331 妙諦

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



3/6 11:10


「じゃあ折角王都に来たんだし私は自分の用事済ませて来ちゃうね?」

深く帽子を被った女性が後方で勢い良く手を上げる


「お~? 用事って、そりゃあリッツを含めてなんか?」


「え~なんで分かったの~?そうだよ~幾つか別の所にも顔出すけどね  まぁ~あ?一応これでも商人ですからね!」

腕を組み、意味不明な所でドヤ顔している


そんな所を見るとやっぱりあの子の親なのだろうなぁと思った


「なら私も一応会っとくか」


「あ~そんならあっしもそっち行くかのぉ  ジン、合流は最悪聖堂でえぇじゃろ?」


自然と銀髪少女?は荷台へと乗り

赤鬼が運転席で準備を始める


「え、カセンは会った事あるんだし? 一緒に行けば良くない?」

ツインテールが麻袋を大事そうに抱え振り返る


「ん~、、あれじゃよ、あんまり大人数で行っても  気ぃ使うじゃろ?」

自称神様は少しだけ眉を下げ


「頼んだ」とでも言う様に俺を見た



此処は王都の西区


とある工房の前だ



今回は、キーロの事では無い

情報が確定していないから、、と言うのは逃げかもしれないのだが


お知らせに来た訳では無い


動画なんか、そんなのまだ見せられたモンじゃ無いだろう


正直な所  俺だって今は来たくなかった



けど


「うん、大丈夫 こっちは俺が付いてるから! 買物してどっかで会えなかったらとりあえず聖堂向かうよ」

苦笑いが見えない様に幼女の方へとしゃがんだ

「あ~、ロゼはさ ちょっと、少しだけ此処で待っててくれるか?  な?」


少し駄々をこねるかとも思ったのだが


「なんて顔してるのよ、全く しょうがないわね~」


頬をペシペシと撫でられた


「、、顔の事は言うなって  元々こんなんだっつ~の」


本当に 何と言うか


ロリコンロリコン言われてもニコニコしている従者の気持ちが最近分かって来た気がする



小さな頭を二度程撫で

頭の中を整理してから立ち上がり

ツインテールに告げる


「お父さんにあんま失礼な事言うんじゃないぞ?」


「!?  は!?  はぁあ?」


何ポジションなのか分からない発言になってしまった






扉を叩き、中へと入った俺達を快(こころよ)く迎えてくれたのは此処の主人だ


久しぶりにダンクさんを目にした感想としては一言しかない


(痩せたな)


いや、コレは自分の為

憐(あわ)れみを誤魔化す為の感情だろう


こんな短期間で これ程まで



老けたと思いたくなかったから、、



目を背けたくもなる


体躯の良かった肩幅は二回り近く萎(しぼ)んだ

視線をしっかりと移すまでに映った顔面

その血色の良かった頬は色濃くなり、一気にこけた

力強かった瞳も大分くぼんだし、髪も、、ごっそり抜けた様子


それでも


「アイr、、じゃない アルちゃん、だったか  それとジンさんお久しぶりだね」

巻かれた額、それと首周りのタオルを変え


愛想笑いを浮かべる



「どうも  お久しぶりです」


「あれ?おじさん、痩せた!?こんな細かったっけ?」



コレデスヨ



「お、おまっ!?」


「ちゃんと寝てる~? しっかり美味しい物いっぱい、、沢山食べないと駄目だよ? そんな そんなんじゃキーロも心配で帰って来なきゃいけなくなっちゃうじゃん!」



・・・



多分



わざとでありながら


素直な台詞なんだろう



少女の言葉は小難しく考えていた俺、、それと工房の主人に突き刺さった



小娘なんかに一本取られた様で悔しいけども


全く


たくましいったら無い



「コ、コラァ お前もう少しくらいは敬語使えたろ~が、ったく すいませんです、急に押しかけて来たのに失礼な事言いまして」

ツインテールの頭、その結び目辺りを後ろから優しく押し


同じ早さで腰を折った








その後

掻い摘んでだけ説明をした

一番は何より此処に来た理由についてだ


あまり良くない見た目と言う事もあったので少し雑談を混ぜ、アルをおちょくり回しダンクさんの緊張を解(ほぐ)した

営業職の基本ってなモノだ

十五分くらいか、驚かない様にと前もって説明してからゆっくりと


麻袋の中身を大事に取り出す


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