259 帰郷
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
2/24 20:00
「それでね~王都にお買い物行った時の話なんだけどさ~」
淡い色の女性が少し目元を湿らせながらニコニコと周りに話を振る
「この子ったら何も買わないのに雑貨屋さんの列に並んじゃってて~」
「ま˝っそれは!その話わわっ」
目を真っ赤に腫らしたエルフが両手を振り回しながら口を歪ませ、楽しそうに笑う
「そそそ、そんな事言ったらバァ様だって知らない人に手を挙げ返してたじゃないか」
少し前、夕方に戻ったエルフの姫様が両手で担いで来た塊、、血抜きを済ませた良く分からない生物の肉を調理し終えた所だ
皆で賑やかに遅い夕飯をとっている
戻って早々にラフィは家主に容赦無く抱き付いた
それはそれは嬉しそうだったのだが抱き付かれた側は感動とかそういうのは無く
「くちゃいくちゃい、先お風呂入っちゃいな~」とか言っていた
(まぁ獣臭とか血の匂いとか凄かったのでしょうがないとは思う)
そんな事など気にせずいつもより早口に、いつも輝いている瞳をいつもよりも潤(うるお)わせながら、あ~でもないこ~でもないと言葉を並べていた
頃が良いと踏んだくらいで一呼吸入れる様に割って入り、軽くジャブ程度に犬耳っこの説明をした
色んな表情を浮かべたが美女の最後の感情は悲しみと怒り、、と言った所だった
その後確認の為にベットの方へ向かうと生首を膝の上に乗せている友人を見つけ、嬉しさ半分に哀れみ
呼びかけても反応しないエバを抱き、泣きだした
ぐしゃぐしゃな顔で何度もアルを見て
暫くの間
ずっと
ずっと
「ラフィ、、そんな、に泣かなくても 大丈夫だから、ぁ˝後であたしが、あたしが絶対! 治すから 絶対に あ!あっぁあ、えっとさっきまでだってね、なんかね?太陽に当てればちょっとだけ、ちょっとだけだけろ、活動出来るらしいのよ」
と説明するツインテールも見事な鼻声で言葉を詰まらせ
エルフの頭を撫でていた
本当にものの数分で喜怒哀楽を全部見た感じだ
(直球と言うか本当に良い子、なんだよなぁ)
そう思ったのは改めなくても俺だけじゃない筈だ
「あ、ありがと~おつかれね~」
目に優しそうな色合いの保護者が声を掛ける
「あ、いえいえこれくらい、っつかただ切って焼いただけですし、ラフィの持って来る材料って新鮮だからなのかそれだけで美味いっスよね?」
調理を終えた三十路が空いてる席に座る、、が
「ぉぉう、なんで俺の前にコレがあんの」
一度は頭に乗った巨大な幼虫がテーブルの上でこちらを見ている
「あぁ!庭先で見つけたんだ、ソレは高蛋白なのに消化にも良い、働き者のジン殿にあげるべきだと思ってな」
腫れた目と額周辺を俺が使っていたスライムの様な何かで冷やしながら美女がこちらに微笑みかける
「おんごめん、ありがたいけどいらないかな~」
「ほら!だから言ったのよ?ジンは虫駄目だって」
何故か偉そうに幼女が皆に説明口調で喋り出す
「いやお前が言う?こっち来てからほとんどそっち系はお前のせいなんだが!?」
「え~なんで~?なんで~?」
「出たよ、妖怪なんでなんで」
悪気は無さそうなのだが小悪魔的にニヤけ、八重歯がチラ見しているので今はこれ以上構わない事にしてみる
「あ~、で?ラフィは説明したの?ロゼの事」
「あぁ、アルにも何処で拾って来たのかと聞かれたので拾った訳では無いと、館の仕事の時に~と一通りな」
「んえ!?アレで一通り?、、んと聞いたのはロゼちゃんの役目?だった毒素だかなんだかの洗浄しないと~みたいなのまでは伝わった」
アルの反応を見るに重要な事はすり合わせていない様にも見える
グングニルの事やらキーロの事はあえて伏せているのかそこは天然の強み
シエル達が王都の方にあたっている事も含めて
(色々大変そうだし帰って皆が集まってからまた聞こう)
と気を利かせているのかもしれない
とりあえず俺は目の前の虫をスルーしながら肉を摘まみ、議題へと入る事にした
「ラフィが言うにはシャーマンである貴女なら瘴気ってのも納められるんじゃないか、ってここに来たんですがぶっちゃけどんな感じです?」
俺自体ソレの正体を知らんのでちょっとズルい聞き方だ、直接委(ゆだ)ねる様な言い回しになってしまう
「なんとなく、なんとな~くはイメージ出来るんだけどやっぱり見に行かないとね~」
意外に反応は柔らかい
「瘴気の元にって事です?なんか危ないらしいですよ、ゾンビパウダーだっけ?そういうのが広がって~みたいな」
まとめようとしてたのに喋れば喋る程馬鹿みたいになってしまう、けどラフィに説明させるよりは良いだろう!?と進めてみる
「じゃあまずとりあえずラフィも住んでる訳ですし来ます?うちの店」
もう一人二人変わらん、、ってかぶっちゃけ増えれば増えるだけ利益は上がるんです、すいません
(そしてまともそうな大人陣は貴重なんです!)
少し間が空いたので「俺なんかやっちゃいましたか?」とか言いたかったが滑りそうだったのでちょっと待ってみた
「う~ん、行ってあげたいのも山々なんだけど」
良かった、変な事言った訳では無かったっぽい
「あの子の解毒がまだまだだったりするんだよね」
指差す方角
ベットのあった部屋からは今も苦しそうに
泣きながら唸る声がする
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます