344 覚悟
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
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「マ、マーヤさん?」
少年は手に持った棒っ切れを震わせ部屋を見渡す
「おはよ、じゃないか? でもだってさ?入口がちゃがちゃしてたから~」
場に似合わぬ声色「へへへ」とでも言う様に蹴り上げた右足を下げ手を振る
瞬間
「窓ぉ!」
姉から高い声が上がる
と同時に 反転し
「はーいよっとお!」
捻(ひね)った体から強烈な回し蹴りが決まった
「ギ、ギィ ェ 」
「全く~、こういう荒事はにゃんちゃんらの仕事でしょうに」
その状態のまま
前転する様に縦回転を加え
「弟君ちょっと失礼」
小さな背中を綺麗に転がり
重心を下へとズラし
バスンッ!
少年を追って来たもう一体の頭部に浴びせ蹴りを入れてから
「てあっ」
もう片方の踵(かかと)が蟷螂(かまきり)の顔面を直撃した
・・・
手慣れの連撃
思いもしなかった事で一瞬呆気にとられるが油断などしている暇は無い
「ぼさっとしない厨房通って裏から出るよ」
兎耳少女は先陣を切る様に入口から入って来るソレらと対峙し
「よっ! ほい!」
店内の椅子を一つ二つと放ってから
「やー!」
体重を乗せた飛び蹴りを胸元へとぶち込む
「ギャギャギャアアア」
文字通りの入店拒否
吹っ飛んだ先の連中も何人か巻き込んだ
「す、すっげえ」
「マーヤさん武術やってたんですか?」
「ほらっ、見物してないで急ぐ急ぐ!」
歓声を上げる姉弟を横目に
「んーっりゃあ!」
大型のテーブルを蹴り飛ばし
簡易バリケードを作るのも忘れない
三人は駆ける様に厨房への暖簾(のれん)を潜り
裏口扉横の窓を覗く
「出たらとにかくお城方面に走るよ? 結構いたから騎士さん連中見つけて匿(かくま)ってもらわないと」
「お、俺も 戦う」
少年は棒切れを作業台へと置き
包丁スタンドから長めの刺身包丁を手に取る
「駄目、駄目よ 止めときなさい 素人が立ち向かっても怪我するだけなんだから」
「でも!」
「でもじゃない!」
「俺だって特訓してんだ!」
「木剣振り回して強くなった気になってるだけ! させないからね」
「姉ちゃんを守るのにも必要だr」
「ちょーーっとたんま!」
困った表情を浮かべた軽めのチョップが両者に入る
続けて
「時間無いの分かるよね? 弟君の意気込み『だけ』は認めるけど覚悟が無いならそんなの持たない方が良い」
「覚悟なんか!」
「はいはい良いから、本気で守る為に使うんならリーチを考えてこっちのデッキブラシにしな? 此処のって軽くて丈夫だし」
保冷庫脇に宙吊りで引っかかっている清掃用具を掴み
刃物を取り上げてから
長い耳が動く
「あぁ~ほら~ こんな話してる間に」
ドガァン
と扉が破られた
「キャアアー」
入口近くに居た為、破片が姉の腕周りに刺さったが恐らく軽傷
だが問題はそっちでは無く
「わああ 姉ちゃん!!」
蟷螂では無い
そもそも頭部、上半身が人間の物では無い剛腕
「くっそぉおお」
それと清掃用具が振りかぶられる
そして
「ヴッ、ヴボォオオオォオオ」
二撃目が降り降ろされる
が
「蟷螂の次は牛かぁ」
スコン!
だか カン! と音がしてから
「だああああ」
デッキブラシがクリーンヒットした
「はい! すぐ退くっ」
少年の肩を後ろへと退き
牛の肘ごと壁に刺さった刺身包丁に片手を添え
顎へと飛び
「っでええい!」
上段前蹴り!!
勢い良く後ろへと倒れ込むと同時にゾリゾリと音を鳴らし
肘裏から刺さった刃物で神経を削る
だが所詮は調理用
バキンと折れたソレは太い手首の骨辺りで止まった
ので
透かさず倒れ行く牛男まで間合いを詰め
いつの間にかもう片手に握られていた短めの刃物で
片足の腱を絶つ
「覚悟ってのはこういう事が出来るかどうかだから、、ほら、行くよ」
(この牛も蟷螂と一緒で片足潰れてた、例え他のがいても大通りを行けば逃げ切れる筈)
真っ赤な飛沫で綺麗目な服が染まり
牛の悲鳴が響く中
兎耳少女は冷静に思考を巡らせる
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