343 危機

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



3/6 15:10


「大丈夫、大丈夫ですから皆さん落ち着いて下さい!」

中性的な顔立ちの青年は片手を挙げ、大聖堂の門を閉め終えてから

「あ、丁度良い所にキウエさんっ! こっちお願いして良いですか?すみません」

近場に居た体格の良い初老へ声を掛ける


「え、あーうん、良いけどシフ君さぁ?それならみんな家帰らせた方が良いんじゃないの? 狙いは巫女様なんだろう?此処に居たら尚更ヤバくない?」

悪い意味で問いている訳では無い

これはあくまで巫女の邪魔にならない様、自分達なりに考えてどう動けば良いのかを模索してからの発言だ


「皆さ~ん良いですか~?何も問題ありませんので此処でシエル様の帰りを待って下さい、余計に被害が広がり兼ねませんので無暗に動かない事!」

跳ねた髪の青年は大きく身振り手振りをしてから小さく続ける

「いえ、そもそもシエル様狙いなら一番に此処を狙う筈、恐らくこの襲撃には別の狙いがある」


「そうなの? うーんだけど、巫女様が帰宅中に襲われている可能性だってあるんじゃ、あ!ダメダメー 出ないでって言ってたでしょ」


「それは無いと思います  ので此処はお願いしますね!」


シフは詳しい説明まではせず

身軽に門、壁を蹴り上がると助走を付けて馬小屋方面へと目掛け飛ぶ


「もう、シエルちゃんったらこんな時に何処ふらついてるんだか」

「本当に自由奔放な子なんだから~」

「シフちゃんもなんで今日に限って別行動してるんだい、全く」


好き勝手言う者


「まぁまぁまぁ、みんな大変なんだから勝手な事言わない」


周囲の年配者を宥(なだ)める者


「巫女様助けに行かないとだろ!? 何やってんだ、門開けろって」


「馬鹿野郎が、シフ君が待ってろって言ってたべ?」


多少の小競り合い等々


だが

此処に居る殆(ほとん)どが知った仲であって日常茶飯事、悪気がある訳では無いのだ

それ程問題視せず

とにかく今は頭の中をまとめるとしよう



単純に人質のいる所を狙った方が逃げも隠れも出来ない、此処が一切手を付けられていないんだ 今回のケースはシエル様狙いでは無い

しかしソレを今までして来なかったのにも意味がある筈だ

例えばフォメットの様な魔族や別組織の関与、いや、国絡みにしない様にディーン側が配慮していたと見た方が無難か?


なのに今になって王都内でのトラブル?


やり口が違い過ぎる、こんなにも分かり易く国を敵に回す訳が、、そもそもタイミングが良過ぎる

と言う事は




賢者の石




ジンさんが狙いか


「騎士の方達が直ぐに到着する筈です! 的確な指示があるまで!シエル様の為にも怪我の無い様にお願いしますね」


青年は荷馬車へと駆け込み

酒類と共に置かれた砲台、の近くで雑に転がる一本の剣を手にする
















王都の北地区


「おい! おいいい!! なんだ、どうなって あっ ぐああああああ  」


「たっ、たすけ」

「なんで!?」

「火の手、魔族が攻めて来たのは南地区じゃないのかよ」


此処は


「逃げろ!! 騎士様達が来るまでっ逃げるし か」


王都の北地区


「あ あああああ˝あ˝ぁぁ˝」


巫女シエルが手土産を放り投げてから



約二時間後の世界



「ちょっと! 此処開けて、駄目お店から出ないと!」


「姉ちゃん!出て来ちゃ駄目だ!! 窓からにげ」


「キャーーーー」


「姉ちゃん?  姉ちゃぁぁあん!」


目の前の化物から目を離し



ガチャン



ガシャンガシャン





振りかぶる鎌から 破壊される音



閉め切った扉を開き





くちゃくちゃ




メキメキ  ぐちゃぐちゃ と





咀嚼する音





亭主が居ればこうはならなかった、人選をミスしたかの様に





「ね˝ぇちゃぁあぁあん!!」





選択を間違えたかの様に
























ならず


「今日から店任せたって言われたと思ったらコレ!? 嘘でしょ?」



兎耳少女



もう一人の従業員が蟷螂を蹴りつけている


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る