154 躍起

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



12/14 13:50




ゴガアァアアン!




大きな音が森の中まで轟く


「ちっ、今度はなんだ うっせぇな」

銀髪の少女?は舌打ちをすると同時に眉間へと皺(しわ)を寄せる


「お~なんじゃなんじゃ急に燃え~あ~ 灰になったんじゃが」


「こっちもですね」


今しがた地に転がした化物達

ジリジリ パチンと音がなり始めると黒く染まりだした

染まり終えたかと思った矢先、急激に風化し灰色へと姿を変える


その後、水分を無くしたのか重みが消え  木々の間から吹く風に舞う


「火の魔法、、ではねぇのか? 魔力の残りが一切無い」

粉々になったソレを指で触れ、ふっと吹く

(なんで蟷螂(かまきり)ヤローだけ? 私達、、いやそれ以前に、森への被害が無い)

巫女はアルの服で微かに残った汚れを拭う


「あんだけおったのに一匹も残っとらん なんじゃろ、今の音と関係あるんかの」


「正確には分かりませんが店の方角から鳴った様に思いませんか?」


「ジン、、しかし、ジンからの依頼じゃからのぉ」

赤鬼は少し困った顔をしながら手を叩(はた)き足元の瓶に手を伸ばす


「どうします?シエル様」



・・・



巫女は口元に手をあて考える


エルフ達が本当にやりあってるとしてなんで異形がいる?

タイミング良く、だが疎(まば)らで少量

まるで足止めの様な


、、いやそれは無い筈だ

黒幕がいるとして私達が今回動いているのはジンの思い付き、たまたまだ



だとすると




(私達用では無い?)




少女?は瞳を閉じ


詠唱を始める


「シエル様?」

従者は見守る様に小さく呟く



感知魔法


前方付近の魔力識別を行う


派手さは無くただぶつぶつと詠唱を行い、音程をとるかの様に片手を揺らす


ゆっくりと上下に、左右に



いつもよりも長く





「、、ふぅ  『進む』ぞあっちだ」

巫女は袖を折り直し小走りに足を進める











はぁ はぁ はぁ



はぁ はぁ はぁ



見知った顔



はぁ はぁ はぁ



はぁ はぁ はぁ



酷い顔色だ



「はぁ  巫女 殿?  はぁ  いや今はそれよりもあの狼、見なかったか!?」

目は血走るかの様で汗だくだ


「ぁ?狼?」


「旧都で見た狼だ!」

「お~お~待て待て、ラフィ~ど~した落ち着かんか」

激しい剣幕を見せるエルフに赤鬼が肩を抱く


「ぅ、あっ、、あぁ」

ラフィは力一杯に一度瞳を閉じ、二度程深呼吸をする


「あの狼の速さは分かっとる、見失ったのならもうとっくにおらんじゃろ」


「しかし! いや、義足の青年を連れていた 一人じゃないまだ追!」


ぴしゃりと顔に水がかかる


「そんな脳が動いてない状態で剣も持って無い、行っても食われるかもだろが、殺すぞ?」

残りの中身を傾け水筒を飲み干すと従者の分を奪いラフィに差し出す


「す、すまない」


「それにな、さっき識別をした、こっちじゃない より強い魔力持ちの方に来たらお前がいたってだけだ」


「方角は」

「諦めろ  もう追えない」

言葉を遮りながらラフィの身体にペタペタと触れ触診を始める


「、、大丈夫だ  私に 怪我は無い」

力無く膝を折るエルフは手に持たされた従者の水筒をゆっくりと震える口に入れる


「何があった」




ラフィは深く息を吸い込み、その怒りや焦燥を飲み込む




何度か胸を擦りながら




呼吸を整える










「仲間が 殺された」










「その狼に ですか?」

同じ目線に膝を畳み、優しい高さの声でゆっくりと 従者が聞き返す


「多分 いや、分からない 逃げたのが見えたので追っていたのだが」


「何人だ?死んで無いのもいるのか?」


「あ、あぁ、そうか  本当に何から何までご苦労をかける、お願いして良いだろうか」


決して上の空と言う訳では無い


「ちっグズグズしてんじゃねえ、さっさと案内しろボケ」


弱弱しく立ち上がるエルフに容赦無く強い言葉が飛ぶ





それは無理やりにでも





再起させるかの様な





不器用な優しさだ

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