153 発露

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



12/14 12:30


「え~、あの~ア、アルちゃん なんでそんなに怒ってるんですか~」


「べっつにぃ~」


別にでは無い、明らかに不機嫌

仏頂面のツインテールはテーブルに肘を立て軽く溜息を吐く

対面にいる茶髪の青年は目も合わせてもらえずおろおろしながらも苦笑いを浮かべている


「お昼ご飯は食べましたか? ここのサンドイッチも美味しいんですよ?室長サンドって言って」


「いらない」

ストローの先のカフェオレだけが見る見ると量を減らしていく


「じゃあおかわり飲みます?」


「いらない」


きっとどこかのロリ巫女であったなら真逆の答えが返って来ていただろう


(う~ん、あのお店の中では良心的な感じだと思ってたんだけど~反抗期なのかな~)

「さ、さっきはレイ様と何お話してたんですか?」

別に無理に対話をしなくても良いのだが商人の性分なのだろう、あの手この手と何かを聞き出そうと試みる


「レイ? あぁさっきの人~、確かそんな名前名乗ってたね」


「ニールさんも居ましたね、格好良いですよね~  アレですか?アルちゃん可愛いからまさかナンパとかされちゃってたりして!?」


「え~なにそれ~、騎士の人だよ? ありえないでしょ~」


(乗ってきたかな?)

「いやいや~騎士様達の目にも止まっちゃったのかな~なんて、全然ありえなくないですよそうだ!ここの友達にも聞いてみましょうか? お昼食べに来てないかな~」

商人は立ち上がりラボ内の休憩ブースをぐるりと見渡す


「へ~リッツってやっぱり顔広いんだね~」


(よしよし、居たら居たで彼なら悪い言い回しはしないでしょう)

「えぇ一応これでも商人ですから交流は欠かしません、結構優秀な好青年なんですよ~?  キーロ君って言うんですけどね?」



・・・



「はぁ~」

逆効果! アルは思い返した後に先程よりも大きく分かりやすい溜息を吐く


「え! あれ!?え~」



(折角、シエルに服まで借りたのになぁ)











アルは本日王国内で仕入れがあると聞いていたリッツに会う為使いに出された


「戦争を始めるんであれば嫌でも騎士が大量に森へ向かう、ヤツならそれくらいは把握してるだろ、武器関連の受注なんかが来てたら尚更だ  ついでに言えばあの機械オタクも住民なんだから少しくらい情報持ってんだろ」


シエルに言われた通りにリッツを探しながら、あくまで巫女に言われたから、ジンもストーブのお礼したいって言ってたし心配してるから、ついでに、あくまでついでにキーロのいるラボ付近を歩いていた


そしてつい先程、3人の男に呼び止められた

精一杯愛想良くしたつもりだったのだがどこかわざとらしく見えていただろう

疑いは晴れているのだが内心はビクビクである


眼帯をした身分の高そうな男は体調が悪かったのかすぐに馬車へと引っ込んだ

レイと名乗った金髪ロングの男とニールと名乗った青髪の男、彼らはこの国の騎士なのだとか

キョロキョロする彼女を見て何かを探しているのではと思い声をかけてくれたらしい


アルは機転を効かせた

(この人達騎士何だったらリッツとかに聞くより早くない?)

直接聞く事も出来ないと思ったのでギルドの名前を出しながら探りを入れた

するとニールと名乗った男は以前ギルドに依頼をした事があると教えてくれた

その内容を聞いた時はドキッとしたのだが「事情が事情だ、疑いが晴れて良かった」と言ってもらえたので胸を撫で下ろした


詳しく対立しているやらは勿論教えてくれなかったのだが「エルフは少し前からずっと戦を起こしているから今は近づいてはいけないよ?」と言う言葉が引っかかった

確かにそうだシフも言っていた、でもラフィは、、、



情報が少し吸えたので二人と別れてからはウキウキした足取りでラボに入った


「あ、あの~キ、キーロ さんは、いらっしゃいますか?」


「アポイントメントは、お済みですか?」

受付の女性はにっこりと微笑む


「え ア、アポ?」


「えぇ、アポイント 基本は面会や会合の約束、予約がいるのよ?」

変わらず感じ良く対応する


「そ、そうなんだ」


・・・


「妹さん では無いわよね?」


!?


「そそそそそ、そう で す」

分かりやすく目線も泳いでいる


「ふふ、そう 少々お待ち下さいね」


女性は机に置かれている資料をめくり、何かを調べている



・・・・・・



(あうぅ、嘘ついちゃった)

バレバレなのだが、この待ち時間と言い変な汗が出て来る


「あ!」


「ぴっ」


「ごめんね、キーロ君なんだけど、そういえば移動しちゃったんだったわ」


「えぇ」


「夏頃に」


「ええええええええええ」




シエルの事で頭が一杯になりジンは皆にこの事を伝え忘れていた


そんなアルが目立ったのだろう、聞き覚えのある声がする


「あれ~偶然ですね~ アルちゃんじゃないですか」

振り返ると茶髪の青年が手を振っている






確かに、探してはいたのだが





一度眼を閉じ大きく息を吸い込む














(お前じゃねええええええええええ)

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