155 歓迎

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



12/14 10:30


ギルド一行が森へと入る頃


バルとラフィはエルフの集落に到着した


「お~!姫様~」

「姫様だ~」

「わああ姫様~ど~ん!」

「今お戻りですか!?」


目視出来る程の位置に来ただけなのに


「お久しぶりで御座います!」

「えへへへ~こちょこちょこちょ~」

「わ~い姫様だああ コレあげる~」

「姫様、外は楽しかったかい?」


大人も子供も


「姫様だ! 姫様が帰って来たぞ~」

「姫~」

「姫様!」

「おさ~ 僕もこれ~」


男女さえも関係無く


「ご飯食べたかい?」

「私もする~」

「何その剣!どうしたの?」

「ね~お土産は~?」

「おう、姫さん 王子さんにはもう会ったかい?」


個が集となり



・・・



20分程が過ぎた



文字通り老若男女に囲まれ、もみくちゃにされている彼女は


「あぁ帰ったぞ?姫様だ  うむ、一度戻った方がふっ! うっ い、良いと助言を受けっぷ 受けたのでな」


「ちょ、ふふふふ あははやめっ  あっあぁ楽しかったぞ! うむ、むぐぅむ~ ん?なんむぁ? んぐあぁ くれるのか」


サンドバック


「うむ、ご飯は先程ジン殿に頂いた物をだな  ぶふぅ!いや、だからやめっぷふ!はははは、やめっやめっにゃろめぇ」


「ふぅ~ふぅ、、剣?あぁ これはデコッテ?もらったんだ可愛いだろう?  お土産!? そ、そうか、すまん今度は皆にも」


「お、おぉう  おじさん? 暖かい?」


いや


(一応歓迎、なんだよなぁ)


バルの目には玩具にされている様にしか見えない



しかし、そんな事よりも



(思っていた状況と違う)



色々と勘繰り、焦っていた自分が馬鹿みたいだ

正に安堵(あんど)

昨日から居ても立っても居られなかった思いがやっと解消された、、そんな気分だ


そして何よりも


変わらずの微笑みで迎えるのは


「モーズ、おかえり」


王子


(無事で良かった)


逆にその笑みに

自分の思い過ごしに


「ただいま 帰りました」



胸が痛い










「はい、どうぞ~姫様~」


「あぁ、ありがとう 別で水も一杯もらえるか?  しかし、どういう状況なのだ? モ!バ、ルぅ?」


別に酔っている訳では無い

未だに治らないエレベーターエスカレーター現象が悪化しているだけだ


「っく! ふふふ、相変わらずラフィは面白い姫様だね」

王子も馬鹿にしている訳では無い

目の前の不思議生物を久々に見たのが原因なのだろう

完全にツボが緩くなっている


「あ、ありがとう俺はお茶だけで大丈夫ですんで   いや、王子、楽しそうにしてますけどね~、はぁ、長い事こんな感じなんですよ?」

モーズは配られた物を手に取ると苦笑いを浮かべ

溜息を吐きつつも何処か嬉しそうにしている様に見える



現状三人は情報整理の為、ラフィ用の小屋へと通された所だ

やっと腰を下ろした所に暖かいお茶が配られた



「あっはっは自然体で良いじゃないか」


「まったく、自然体過ぎて最近ツッコんでくれる人すらいないんですよ? まぁそのおかげで怪しまれずにいるのかもですけど」


「そこは恐らくモーズのフォローあってこそなのだろう?」


「ん あっあぁ、そうなんだ モ、バ バルぅ?には本当に助けられてばかりどぇ」

酒では無い

水を飲むエルフはもう、、しょうがないのだろう


「う~ん、直接言われるとなんだかむず痒さがあるなぁ」


モーズもあえてツッコまずに受け流す事にするのだが


「む?背中か? 背中くらい私が掻(か)いてやるぞ?」



コレである



話が進まないのでモーズは王子に褒められた事だけを胸に仕舞い


早々に本題へと入る


「実直に聞きます、王子、とある情報からエルフがディーン王国と争っていると聞いて来たのですが」


「、、それは何処から?」

先程までの和(なご)やか雰囲気が明らかに変わる


「情報源は天狗山のライア隊です」


「ライア隊か、噂には聞いた事ある 流石だね」


「!? では本当に?」


「いや、こうして二人が帰って来たんだ 忠告と思うべきなのだろうな、、以前ラフィが捕まってしまった時にモーズが教えてくれただろう?キドナはディーン王国にいる  と」

王子は何処か虚空を眺めた


「ですが!事を起こすのでも、、まずはラフィに話が無いのはあまりにも」


「ふふ、まぁ待てモーズが思っている程段階は進んでいないよ」


「? と言いますと」



王子バルはモーズから情報を聞いてからというもの

個人的な恨み辛みよりも今後の事を考えていた


例の研究施設とは別に根城を拡大させているのではないか

ディーン王国の危機なのではないか

東の国の次は我が王国が『破滅』の対象になっているのではないのか と


しかし、いきなり襲撃などするつもりは毛頭無い

今はエルフ達を何人か王国内に住まわせ調査をさせているんだとか


そうしてここ数か月で分かった事の中で一番の衝撃があったらしい


それは、目の前で殺されたはずの大王


ディーンが確実に生きていると言う事


その、父親である王がキドナと何かしらのやり取りをしている所が目撃されているらしい



そして



「姫様~ 王子! 大変だ」


話の途中で勢いよく扉が開く


「む?急用か!どうした?」


「また はぁ  はぁ  異形が 出た!」

若いエルフは息を切らせながらも族長の問いに答える


「またか、最近は頻繁(ひんぱん)過ぎるな  数や種類 位置は?」

王子が淡々と指揮をとる


「50から100体程で蟷螂(かまきり)型  場所は東方面です」


「多いな、オルカやスティル達はどうしてる」


「まだ帰って来てません」


「そう、か 方角的にも連戦になっていなきゃ良いのだが  私も直接指示を出そう、ラフィお願い出来るか」


「あぁ話は夜でも良い、急ごう」



三人は急いで小屋を後にする

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