104 晩酌

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



8/28 2:00


コツ コツ コツ



カセンが一人で飲んでいるギルドに足音が近づく



ギギィ



「ん~?お~なんじゃあこんな時間に、従者が気になって眠れんのか?」


「あ?」

巫女シエルが可愛らしいネグリジェのまま靴を履き、店内へと入って来た


「明後日、それで良いんじゃないんかの?」


「、、ソレ ノム ワタシニモ ヨコセ」


「なんで急に知能指数低くなるんじゃ?言うてる事はいつもと変わっとらんし」


「人を強盗みたいに言うな」


「くくっ、しゃ~ないの~今日はあっしのを分けてやるとするか」

赤鬼は半分にやけながら立ち上り


新しい瓶を取りに保存庫へと向かう




「って、なんでもう飲んどるんじゃ」


未開封の酒とシエル用にグラスを持ち、戻って来た時には既にカセンが飲んでいた物に口をつけている

「分けてやるって言ったじゃね~か」


「席を立ったんじゃから新しいの持って来る事くらいは分かるじゃろ~?」



珍しい組み合わせ?の二人は乾杯の音頭など行わず


手酌でゆっくりと飲み始める




「どう思う?」


先に口を開いたのは巫女だ


「お~ん?どの事じゃ?」


「ちっ」


「いきなり舌打ちは性格悪過ぎにゃせんか?」


「、、幾つかある」


「従者の事じゃろ?」


「ちげぇ!  まずは、、誘拐事件の事だ」


「お~あれか~、、もしかしたら犯人は『魔族』なんじゃあないんかと考えておるんか?」


「クソガキの被った事件と繋がっていたら一番しっくりいくだろう」


「カカカ、だからアルはお留守番にしたんか」



早くも一瓶無くなり、新しく一升瓶が開けられた



「アルも人攫(ひとさら)いの施設から逃げて来たって可能性はあったりせんのかの~?」


「無くは無いだろうな、、ちっ、実験体 ってか」

巫女は険しい顔でグラスの中身、氷を行儀悪く手に取ると口の中に放りこみ


噛み砕く


「もしそうであったら一石二鳥なんじゃがな~?そんなもんがあるんならあっしがガッチャンコしてやるぞぃ」


「遺跡内での食い荒らされてた連中も、どちらとも取れるか、、一気に事が起こっている気がする」

苛立ったようにグラスを空け、小さな手で大きな瓶を傾ける


「そうじゃの、天狗山での件もタイミングが良過ぎる  まるで、どこか近くで見られているかの様に」

赤鬼も自分の分を空けると巫女が握る一升瓶の底をそっと支える




巫女の話は半分問答、半分自問自答、そのまた半分は、、




「お前じゃないんだよな」


「お~?」


「いや、違う そうじゃないな、、すまん、今更疑っているとかそういうのでは無いんだが   アイツとお前だけ此処にいる理由が薄い」

すぐに謝れる様になったのは此処にいて成長でもしたのか

何も無かったかの様に問答を続ける


「アイツってのはバルか?」


「そもそもただの冒険者だった筈だ エルフとそれ程絡む理由さえも無かった、、が今日はっきりした」

(破滅だか何だか知らんがキドナってのをとにかく始末したいんだろう、だとしたら少なくともあっち側では無い)


「あっしは、ほれここに酒が届くじゃろ」


「それだけじゃね~だろが」


「あ~、お~? そうじゃの~、、ジンに守ってくれって頼まれたから かのぉ」


「、、てめぇが火の国から出て来た理由、異変ってのはなんだ?」


「友人の為じゃよ 正直異変の方はまだ話せる程整理出来とらん、、があのワンコは気になるのぉ」


「アレが魔族とは別の種類なのかも分からね~しな」


「もしかしてじゃが」


「あ?」


「あっしの協力をしたいとかそっちか?」



・・・・・・



「   はぁん?」


巫女は「そう」とも「違う」とも取れる様な台詞とゲス顔をする


「カカカカ、まわりっくどいのぉ~」


赤鬼は独特の照れ隠しをする巫女の頭を撫でまわす





二人の晩酌はしばらく続いた













店を開けようと起きて来た店の主人が悲鳴を上げる所までがセットである

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