105 出発

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



8/29 6:00


「留守番も気を付けるんじゃよ?」

赤鬼が酒瓶を片手に運転席に座る


「アル! お土産は買って来゛ぅ!  買って来るからな お土産」

背中の大剣を天井につっかえながら金髪ショートのエルフが荷台へと乗り込みブンブンと手を振る


「飯は作り置きしといたから温めて適当に食べて、ルト用にも小分けにしてあるから忘れずにお願い、一週間くらいでも成果無かったら帰って来るけどポストは必ず毎日見て! 鍵はかける事、くれぐれもアルはバルの言う事ちゃんと聞くんだぞ?」

赤いリュックを背負ったマスターが喋りながらエルフの後に乗り込む


「はいはいはいさっきも聞いたよ~ 何、ジンはあたしのお母さんなの?  あとお土産とか良いから無事に帰って来てよね」

ツインテールの少女はジト目で子猫を抱き、黒猫の手を使い手を振る


「いってらっしゃい ラフィは、本っ当に!余計な事だけはしないように」

バルも言葉を強調しながらエルフを見る



ギルドから東へ3~4時間程で王都

王都から北へ5~6時間程でディーン王国

なのでギルドからエルフの森の浅い部分を横断し直接斜めに北東へと向かう

休憩を挟んでも昼過ぎには着くだろうと言う算段だ



「ふぁ~、のどかだな~」

早くに起床し本日分の朝食、昼の弁当までをこなしたジンは荷馬車に揺られ早速ウトウトしている


「うむ、本日は風もあり涼しいからな 過ごしやすそうだ」

通る風にエルフの髪が揺れ、木漏れ日が反射する


「おぉ~」


「む?どうかしたか マスター」


「あ、あぁあいや! そういえばさ、そのマスターっての止めない? 間違っては無いけどエバみたいでなんか、なんかね~」

(久々にドキッとしたわ~、この娘もそうだけどうちの連中喋らなければ、、いや、静止画なら!美女なんだよな~)

失礼な事を考えながら適当な話で誤魔化す


「お~、確かにそうじゃの~ 一応姫様なのにジンなんぞに従わないといけない感が出てなんか嫌じゃの~」

赤鬼が後ろに聞こえる様な声量で振り向かずに話題に入って来る


「なんぞ言うなし」


「そ、そうか? 私は構わないのだが」


「普通にジンで良いんじゃないかの? バルにも特に何もつけとらんじゃろ」


「あぁモーズはな最初ぉー↑」

「え?」

「なんて!?」


いつもの発作の様に変なイントネーションで身振り手振りが始まる


「あ、あののそのモーズワナ モズワ い、いやモ、モじゅ? も、もも もーもも、、むおぉんだいないぞ?  うん!そうだ 大丈夫だ 問題無い!」



・・・・・・



車内の言葉は消えたが考えてる事は同じだろうとばかりにとカセンがちらりと振り返る


ジンは目の前の身振り手振りを目で追いながらとりあえず開いた口をしめ、赤鬼と目を合わせる



(何がだろう)



エルフは誤魔化せたとばかりに腕を組み、何故か自慢げな表情をしている

「大丈夫! うんうん、そうだな~えぇっとアレだジン殿! ジン殿だな」


「え、あ、あぁそうだね、それでいいや」

押し切られた形になったがもはやどうでも良かった





「そういえば巫女殿は!? 巫女殿はどうしたのだ?」


「ん? あぁ、シエルは準備があるからって昨日王都に帰ったよ 今日あっちで合流する感じだね」


「そうなのか、一人で大丈夫だろうか?」


(この娘の場合だけギャグじゃなく本気で言ってるよなきっと)



何気ない会話も終わり、2時間もすると一度は吹き飛んだ睡魔が亭主を襲う


「ジン、馬を休ませる時に一度起こすから全然寝てて良いんじゃよ?」

後ろの新しい酒瓶に手を伸ばしながらの男前発言が刺さる


「運転してもらってんのに悪いな~、じゃあお言葉に甘えて」

一度伸びをしてからリュックを枕代わりにし仰向けになる


「なんじゃったらラフィの膝でも借りたらえぇ~じゃろ」


目を瞑っているが赤鬼がにししと笑う顔が浮かぶ


「アホか」


「あぁ、別に構わないぞ」


!?


(えっへえぇぇ!?)

咄嗟に目を見開く


「枕程では無いがそのリュックよりは柔らかいと思うぞ」

エルフは自分の太ももをぺしぺしと叩く


「お~えぇ~のぉ~! カカカカ言ってみるもんじゃの」



咄嗟の事だが逃す訳にも行かず

「あ、で、では すませんね へへ」

とか陰キャの様な言葉が出る


どうにも恥ずかしくすぐに目を閉じるが自然とばかりにラフィは髪を撫でる




(こんなんお前)










(寝られるかぁぁあああああ)










その後一行はディーン王国に到着と同時


目を疑う光景を目撃する事になる

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