151 拙劣
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
12/14 13:15
「お、おん 久しぶりだけども!それどころじゃなくて、ってか発電所無人で大丈夫なの? っていやいやいやそれどころでも無いんだけど」
久々の再会
何故ここにいるのか等聞きたい事があるのとかなり汚れが目立つドールを拭いてあげたいのも山々なのだが
「あああぎゃあああああああああ!!」
今の場がそうさせない
この異形、片足の膝から下が潰れている為動きは遅い
それと両の手、肩から先が肥大化した蟷螂(かまきり)の様になっているせいもあり入口で引っ掛かっている
「エバ、アイツ何とか出来る?」
ドールを扉ごと吹き飛ばしたのは間違いなくヤツだろう
感情で飛び掛かったものの内心少し過剰になっていたのかもしれない、一体くらいなら何とかなると思っていたのだが 右手に握っている木剣が馬鹿らしくなってくる
「何とか、何とかと言うのは不都合の無い状態にすると言う事、内容がはっきりしないのだけれど?そもそも今の状況での不都合と、、」
「ブレないな!?え~っと、、」
ジンは迷った
それはエバへの対応や指示、説明では無い
(どうするのが正解なんだ?)
バキン!!
閉めたハズの勝手口からも音がする
「な!? 一匹じゃないのか?」
振り返るそちら側の扉からは鎌の部分が貫通しているのが分かる
(二匹? いや、もっといるのか?)
ジンはパッと小窓の方を見る
ゴクッ!
字の如く生唾を飲んだ
後頭部から二の腕にかけて一気に鳥肌が立つ
急激に胃が絞られるのが分かる
・・・
悠長に頭を悩ませている時間は無さそうだ
「外にいるのも含めて、、全部やっつけれたりする?」
自分の足が震えているので強めに太ももを叩く
「やっつける? そう、『何とか』と言うのはやっつけて欲しいと言う事だったのね、、でもやっつけると言うのは排除と違うのかしら? あら?随分と生命反応が増えた様に見えるのだけれど?」
何かの機能が付いているのだろう、目の色がカシャカシャと切り替わり辺りを一通り見回している
ガン! バキバギン
勝手口の扉が切り開かれ一気に風通しが良くなった
「くっ、それともさ?逃げ切れる!?」
ジンは出来るだけ大きな声を出さない様にしながら棚の上や隙間を確認するが愛らしい生物が見当たらない
「きぎぃ、いぃああああああ」
その思いとは裏腹に目的とは正反対の生物がついに店内へと足を踏み入れ
「エバ!」
ドールの頭上へと振りかぶる
ギィイィイイン
まるで建築現場の高速カッターを鉄骨へでも当てたかの様な音が響く
「まだ話の途中なのだけれど、アナタも失礼な人なのね」
エバは避けるでも無ければ弾く事もせずにその鎌を受け止めた
いや
右手を上に翳(かざ)しただけなのか、中指と薬指の間に入っただけの様にも見える
「暴力は野蛮で愚かな行為なのよ? だから良くないのだけれど」
「い˝いぃぃい˝!あ˝ぁ」
喋るエバをお構い無しに汚い声と二撃目が斜めに振り下ろされ
ゴッギィ
鈍い音がした後に衝撃でエバはジンの方へと飛びゴロゴロと転がる
「ちょ、おい! エバぁ」
間の抜けたやられ方を目にして緊張もクソも無く、急いでドールを抱え起こす
「ぎゃぎゃぁ、、ぎゃあぎゃああ」
異形は後ろからも近づいて来る
どうやら勝手口が大きく綺麗に開いてしまったらしく2匹3匹、4、5、6、、と切り無く入って来る
それはもう必死に、我先にと言う様にうじゃうじゃと
(マズイ)
そう思った
の だが
「きぃーぎー キーキー キーキー」
そんな気味の悪い声がすると
ガジュ!
ソレがソレに噛み付いた
「え、な!?」
次に別のヤツが鎌を振り下ろした
火事場の様に急いでいるから「邪魔だ」と言う様な除け方では無い
明らかに異常な行動だ
そして、噛み付いたヤツはそのまま
咀嚼を始める
「うぇ」
まさかの
「共食いね」
抱き起こしたエバはまたも何も無かったかの様に平然と立ち上がる
「あ、れ 食ってる? のか」
くちゃくちゃと、時にはボキ! バリバリと音がする
「そうね、胃が空っぽの様だから恐らく本能で生きる為に捕食しているのだと思うのだけれど、、それはそうと?」
こんなカオスな状態でもマイペースに小首を傾げぶつぶつと独り言?を始める
「え、エバ?」
「え~と? いえ違うわね え~っと、、だったかしら? え~っと、、逃げる方が難しいと思うので排除、、いえこれも違うわね」
徐々にジン達の方へと向かって来る異形
何体かと目が合ってしまい
無表情なままなのだが口から滴る赤い液体のせいなのかホラーの見過ぎなのか
笑っている様にも見えて足が竦(すく)む
「き、ぎぎゃあ」
「ホントにっ、頼むよ!?」
振りかぶる異形を前にエバの両肩を強く握り目を瞑る
「えぇ」
「やっつけるわね?」
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