150 言訳

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



12/14 6:00


とある遺跡の内部


(マジかぁ)


「、、、なのだけれど? アナタに分かるものなのかしら? 恐らくはそういう物でアナタ達が考えている様な武器、振り回して使う物では無いのよ  そもそもアナタ達では持ち歩く事が出来ないと思うわ、だってソレに使われている材料と言うのが、、、」


(うんうん   このお弁当冷えてても美味しいです)


大柄の鴉天狗だけが生贄となり、ソレを気にもしないキジ柄が隣で食事を始める


他の者達はと言うと

着いて早々現れた人型ドールの存在にも触れず各個くつろいでいる

ある者は寄り添い仮眠に入り、ある者は毛繕(けづくろ)い、ある者は見えない何かを目で追っている

それはそれはしょうがない事だ


猫なのだから



隊はギルドでの情報を元に遺跡、地下発電所へと向かった

殺人人形のいない、以前ギルドメンバーが脱出した直通の道だ

そこで出会ったのが一体のドール

敵意は無い様なのでライアが情報収集に入ったのだが、まぁ相も変わらずと言う具合に延々と小難しい事を喋り続けている



「あ~!めんどくせ~な~ いいから! 違うんだよな~そういうのは  その武器の、、あぁ、アレだ!そういうのは喫茶店のマスターが聞くの好きだからさ、そっちでしなよ 俺らは仕事で来てるからさ」

ついつい厄介そうに、ぶっきらぼうな言い回しで逃げてしまう


「、、、そう、、そうね目的が違ったわ  えぇ、向かいたいと言うのなら開けてあげても良いのだけれど、、」

ドールの表情はとくに動きはしないのだがその背中は少し残念そうに見えた


「お! あぁ、助かるよさっさと済ませないといけないから」

(く~「可愛いのがいる」って、カセンの言う『可愛い』はやっぱり当てんなんね~な~)

相手が相手なのだがライアも気まずそうにバリバリと頭を掻く


「あ、もう休憩おしまいですか? 待って下さい、あとちょっとなんで」

急いで残りの厚揚げの照り焼きを卵とそぼろの二色丼と共に口へと掻っ込み

「むぐ、もっく んっくんっく ぷふぅ   姉さん達~行きますよ~」

ジンに持たされた水筒で流し込む



実の所この猫達

隊長の動きや大まかな情報等、一連の流れは眠っていようが他の事に興味を持って行かれていようが全員が耳をヒクつかせ見聞きしている



のだが




・・・・・・




反応は無い




「姉さん達~行きますよ~」

大事な事なので二度言った訳では無い、慣れているのか壊れた玩具の様に同じ言葉をニ度三度、四度と繰り返している

本人は嫌な顔等はせずに発言した後の数秒は伸びをしたり欠伸(あくび)をしたりとマイペースに時を過ごす


何故だろう、普通にしているだけでキビが良い子に見えてしまう


彼女達の動き出すタイミングを少し待ってから、、揃って目的地の方へと足を向ける


襲い掛かって来るからくり人形は片っ端から破壊した

警告音が煩い

『固いだけ』 ただそれだけ

世間様で言われる程危険な存在だとはそれ程思わなかった



そして



「着いた、けど  なんもねえじゃねえか!」



大きめの扉、鍵等は無く簡単に開いた

大きめの部屋、中央に何かを引き摺(ず)った痕跡がある


(ちっ、もう大分前の跡じゃね~か)


この部屋に出入口は一つ

その擦られた跡はライア隊が来た方向とは逆に残っている


ライアは痕跡を辿りながらある事に気付くとにゃあにゃあ煩い猫達を視野から外し思考する



さっきのドールも言ってたな、もしコレが例の物なんだとしたらどうやって運んだんだ?

持ち上げた?  いや、引き摺(ず)ってから何かに乗せた、、か?

しかし、不味いなこんなもんが本当にあるんなら言われてた様な


『破滅』ってのが来ちまう


(侵略どころじゃね~よ、全く)


彼らはその場を一気に引き上げ、急いで山へと戻った






それを無言で見届けた後に思う所があったのか






「喫茶店、そう 確かにそう言っていたわね」


ドールは一人また呟き、独特の思考を始める


「あの子から返してもらわないと、いえ、内容を聞かないといけないわ  だから、これは決して、、向かった方が良い、向かわないと 行けないわ?」


少しいつもとは違う自分の思念に分かりやすく目を回しながら何やら機械やその中身を弄り終える



・・・



「管理システムは良好、新しく制御回路も追加した」


しっかりと指差し確認を行い


「テストも必要三ヶ月はクリアしたもの、問題無い、問題無いわ」


うんうんと一人頷く



・・・・・・



「対話をするだけ  少し」








そして、ドールはふらふらと歩き出す








「喫茶店のマスターに会うだけなのだから」

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