381 使者

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



3/7 12:30


何処の世界だって


一長一短に強くなれる訳が無い


転生者がチート能力を持つだとか

大事な人が亡くなったから怒りで覚醒するとか


正直羨ましいまである!!



もう知ってんだ



こっちの世界にはそんなご都合主義なんてまかり通らない


ファンタジーとはよくいったもんだ

都合の良い話なんか無い

駄目なもんは駄目なんだ


転移や転生、例え幻想だろうがもう知らねぇよ



淡々と



ただひたすらに



アスリート、、みたいにはなれないかもだけど

疲れていようが

二日酔いだろうが


関係無い


やってる感に酔えるほど、この世界は待っちゃくれない

だから

絶対に欠かしてはいけないと決めた






んだけど


「ぷっ、くふっ ふふふふ  ピギャー!なんじゃそのグングニル撃った後みたいな小鹿スタイルは! ぷるっぷるになっとるけどソレあっとるんかぁ?」


早めにとった軽い昼飯の後

三十路の日課を見物していた美女が騒ぎ出した


「はぁ  はぁ ええ?うっせぇなぁ はぁ はぁ しゃあないじゃんよ、昨日あんなに走りまくってんだぜ?そりゃ~プルップルのプルだっつ~の」

(なんなら早起きからの仕込み作業だぞ?なんなら俺スーパー偉いだろ)


「カカカカカ、なっさけない! でものぉ、ジンは素振りとかしないでも良いからもうちょい普通の運動をすべきと  あっしはそう思うんじゃがな」

ヒラヒラとご機嫌に手を振り、最後の一滴を飲み終えたのだろう

立ち上がり厨房の方へと向かう


「あ!あれよ?酒は全部外に出してあるから!保存庫の肉系は今日調理するから食っちゃうなよ!?」

何処ぞの巫女じゃないし問題は無い筈だが豪快に笑う赤鬼が気になってしょうがない


そんな中でも


「ジン!頑張って! こう! 多分こうやってこうだからっ!」

足元で幼女が手足を動かし

あ~だこ~だと助言をしている


「おぉそうな、おっけ、じゃあやってみるわ あ~でもさ?ロゼは洗い物とかしておいてくれない?」


「え~?」


「でもそれよりも!さっきお願いしたやつあるじゃん? そっちを先にやっといてくれると凄い助かるし~なんなら洗い物は早めに帰れたらでも大丈夫だし、ロゼが頑張ってくれたら大分助かっちゃうんだよな~」

露骨な機嫌取りの様な

全部自分の為だけ、汚い大人のおべんちゃらだ


「出来るか?」

「出来る!!」


「おっし、それじゃ~頼むぜ~?」

(洗い物は配給分の寸胴二つだけだし、メインも正直ソコまでじゃない)


だからこそ


「対応早ぇしすっごい良い子過ぎて泣けるっつの」






そんな


表向きは平和な情景


どうしたもんか考えないとだ


あくまでギルド全体で決めた現在の目的は『殺生石』の回収

シエルらを店に戻しちまった以上俺らだけで取りに行くべき? はたまた 一度全員撤退?

、、でも、今の状態でカセンを王都から離して大丈夫なのか?


いや、狙いは『俺』って可能性さえある訳だし


・・・


「あ~止めだ止め、カセンの判断に任せよ」

(こういう系も考えて二人は動いてるんだろうし  やっぱり甘えでなくても俺なんかが考えるのは野暮ってもんなんだよなぁ)

とか思考を巡らせ

幼女には頼み事をしたくせに休憩を取る事にする


水瓶からギンギンに冷えた物を掬い

もはや温(ぬる)くなった食後のコーヒーと割り、アメリカンなアイスコーヒーへと変えた


一息ついてから


口に運んだタイミングで



「鬼ぃ~のパンツは良いパンツ! 強ぉいぞー 強ぉーいぞー」

悪気の無い間抜けな歌

「あ~?あっしのパンツがなんじゃて?」

それと自然な入り込みだ


そりゃあ


「ぶっふぉぁ!?」

盛大に噴き出した


「っう げ げっほ!喉 乾いてたのに ごっほごほ、いや、違うソコじゃなくて、違くは無いけど お前もその容姿で気軽にパンツどうのって言うなよな」

(あれ?この言い回しも違うか!?)


「?? 普通のモンな筈じゃがのぉ」


「うん、まぁ何故か強そうな気はするけどさ  ってか鬼じゃないんでしょ!?」






そんな軽いセクハラ発言とリアクション

いざ知らず


「さぁて、ジンの為に頑張るのだわ」


薄い板を手にした幼女のお使いが始まる


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