203 識欲

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



2/9 20:30


「じゃあ、行って来るから あんまり夜更かししない様にね、おやすみフェリス」


「オォ オヤスミ キーロ ガンバレナ」


軽く頭、大きな耳を撫でてから扉を出ると青年は夜勤へと向かう

先程までとは違う、、真剣な面持ちで


(考えろ、どうすれば良いのか   どうするのが、正解なのかを)


キーロは此処に来て約二ヵ月様々なモノを見た

ラボでの体験もあったがソレとは別の種類、見知らぬパソコンやらデータ等とは違う分類のモノ

もっと生々しい、それこそ、、恨み辛みで苦しくなる程の



理解し難い生物達



合成獣(キメラ)



フェリスやルイの様な姿形をしているモノ等いない


思っていたのと違う?

そういう期待やら甘えとかでは無い


そういう、、人間らしい事では無い





「おはようございます」

目の前の扉が左右へと自動で開き、自分よりも小さな上司に頭を下げる


「あぁおはよう?キーロ  偉いね、ちゃんと今日も来たんだ?」

いつも通り、いつも通りの皮肉めいた言葉が飛んで来る


「えぇ、痛いですが、アナタと問答するのは良い経験だと思ってますので」


「ははは!そぉ! すっごいね、馬鹿みたい」

少女がケラケラと意地悪そうに笑う


「今日は何からしましょう」


「ふふ あはは!あはははそうだな~じゃあ良いよ?今日はキーロ、君が知りたい事からやっていこう、僕がここのガイドをする、どうかな?」


「、、それになんの意味が?」


日々の勤務、仕事としてはいささか可笑しな内容である


「だって君さ?毎日死にそうな顔で業務をしているじゃない 意味は分かっているだろうに、、だから全部知ってスッキリした方が良いでしょう?」

くせ毛の少女は無邪気に笑う

「それにね、折角作ったんだから自慢くらいしたいじゃない?」



・・・



「全部、、全てを聞いて良いんですか?」


「構わないよ?僕が困る事なんて無いからね」


「アナタの狙いは!? どう! こんな、、何がしたい ん、ですか?」

青年は思わず声を張り上げ、噴火しそうな思いを残しながらも下唇を噛む


「ふふふふ、良いね!僕は知識欲を満たしてるだけだよ、君も似ているから理解出来ると思うんだけどな~?」


一気に、血が沸騰した様な感覚と動悸が込み上げる


「ぁ、あの子は! 本が好きだった、甘い物が、、」


「あぁそういうのは良いや! ほら、行こうか気分が変わっちゃうよ?」

早々に話を遮る少女は軽くスキップをする


青年はその姿を目にし、歯を食いしばる


(耐えろ、耐えろ、、感情を殺すんだ  コレは、チャンスなんだ)


少女の後ろをゆっくりと追いながら胸ポケットに仕掛けた板のボタンを押す




「って言いながら何から聞けば良いのかが分からないか?そうだね~まずはフェリスやルイみたいな合成獣(キメラ)と僕が時短で作っているキマイラの違いから教えようか?」

ウキウキとした子供の様に少し早口に、一番最初の牢の様な格子を手持ちの棒でカンカンと叩く

「簡単な話だよ、あの子らキメラは細胞からだよね? それとは別でキマイラはくっつけるんだよ、最初は良いかな~って思ったんだけどこいつ等はやっぱり知能持ちが出なくてね~、魔力があろうがなかろうがやはり虫は頭が良くないからね」

裂くものと書かれ、表札の様に張られたプレートと隣の這うものと書かれたプレートを指しながら話を続ける

「クモの方は足をクロム鋼にしてるから頑丈、だったのにな~ あの鬼!見た事は無いけど、ムカつくよな~」


「この人達は、、なんで作られているんですか?」


「知能が無いからこそ使い勝手の良さがあるんだよ、ただのパンデミックだから理解も出来ない、尋問なんかも意味無いしね」


「戦争や世界征服でもすると言うんですか!?」

感情を殺していた筈なのだが、目の前で蠢(うごめく)く蟷螂(かまきり)型の人間を見るとどうにも抑えられなくなる


「違う違う、彼らもまずは天使を作りたいんだって言ってたよ?まぁ予算の都合上戦争は良いとも思うんだけどその辺は僕的に興味無いかな~」

少女は瞳を閉じ、こめかみを軽く擦る


「天使?」


「そうそうそれでね、天使なんだけどバードマンは貴重だからさ、試作品はもういるんだけどまだまだ求めてる魔力じゃないんだよ、弱いんだ、、最終的な基礎はエルフとバードマンで良いとは思うんだけどな~、あぁそれにさ征服なんてするんならこっちの方が楽でしょう?」

左右に揺れながら身近な机の上にある資料をキーロに放る


「、、え」

青年は受け取った物に目を通すと慄(おのの)く身体を押さえつける



少女は目の前の、その絵面を眺め


不敵に、不気味に



笑みを浮かべる

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